間違い探しの話
「今からでもモテたいかー!!」
「おー!!」
「クリスマスまでに彼女がほしいかー!!」
「おー!!」
「それじゃ、面白いゲームをやってみるとしましょう」
今日も後から現れた奥宮が急に声を上げるから、つい乗ってしまった。
ゲーム?……それが、モテることにどう繋がるのだろうか。
「名付けて、リアル間違い探し!」
「リアル……間違い探し……ルールは?」
「ルールは簡単です。
私が、髪を結んだりとかどこか一つ変化させるのでそれを当ててみてください」
なるほど、モテるに対する繋がりも分かった。
要は、私のどこが変わったか分かる?というやつだ。
何か、俺にマイナス無さそうだしやってみよう。
「その勝負、乗った」
「そう来ると思ってました!
では、まずニュートラルの私を覚えてください!」
堂々と胸を張る奥宮をとりあえず記憶する。
後ろで纏めた髪、制服の上にベージュのコート。
後ろには黒いリュックが背負われている。
……うん、特に変わらないいつもの奥宮だ。
「おっけー、大丈夫」
「あの、一応髪切ったんですけど……」
「え、気づかなかったわ」
「……とりあえず、先輩はもうモテませんね。
じゃあ、一問目行きましょうか」
どうやら、前提は崩壊したようだ。
まあ実際、この質問を見る度に俺には無理だろうなーとは思っていた。
「それじゃ、後ろ向いてください」
後ろを振り向くと、ガサゴソ何か準備しているような音が聞こえてくる。
これは、ヒントとなるのかそれともフェイクでやっているのか。
「出来ました、それでは当ててみてください!」
振り返ってみれば、いつも通りの奥宮だ。
やっぱり、一目で分かるような違いは特に無さそう。
「うーん…………何か、コートとか。
いや、違いそうだな。
………………あ、右目だけずっと半開きにしてるだろ!」
「右目半開き…………正解!」
それなりに難易度があった気がするが、何とか当てた。
これを当てたところで多分モテないけど、もう楽しさが上回ってきていて、どうでも良くなってくる。
その後もどんどんと問題は続いていく。
髪を結んでいない、足の角度が違う、コートのボタンを一つだけ外している、そんな答えたちを正解に導く。
一番当てるべきだった最初以外は全問正解で迎えた最後の問題。
「それじゃ、最後の問題行きますよ〜」
振り向いてみれば、やっぱりいつもの奥宮だ。
くそ、何の違いも分かりはしない。
今回はやはり難問のようだ。
色々考えては見るものの……
「……ぐ、降参だ」
ついつい降参の声を上げてしまった。
当てずっぽうで何かをいうこともできたが、数問このクイズを解いてきた中で、俺にプライドが芽生えていたのも事実だ。
「……あの」
「うん、答えお願いします」
「……正解は、ポニーテールの位置が低くなったでした」
「あー、分かんなかったなぁ」
「…………あれ、ポニーテールって位置によって印象変わるはずなんですけどね。低い位置だと大人っぽいとか。
私もファッションによって変えたりするんですけど」
……………………やっぱり俺はモテないようだ。
間違えちゃいけない問題だけ綺麗に外している。
「あの……やっぱ俺もファッションの勉強とかしないとダメだなー。うん、本当……」
「はぁ、先輩。
今日から色々教えるので、次はちゃんと気づいて欲しいです」
「うん、勿論勿論!」
何とか許してもらい、そのあとはファッション雑誌を見て二人で話す。
全ページよく分からなくて、俺のファッション道もまだまだ先が長いことを思い知らされる。