2人の関係性についての話
「先輩、私たちの関係ってどんなもんだと思います?」
「関係?……もうちょい説明ちょうだい」
「ほら、私たちには当たり前に友達とか家族とかいるじゃないですか。
そういうのに当てはめた時、先輩とはどういう関係になるのかな〜なんて」
ああ、そういう話か。
あまりに唐突すぎて、一瞬動揺した。
「いやまあ……友達じゃないのか?」
「でも私、最近学校で先輩見つけたんですよ」
「そんな……都市伝説みたいに」
「まあ、実際都市伝説くらいの存在だとは思ってたんですけど。その時は何となく声かけなくてもいいかなって」
あー、なんかわかる。
俺も逆の立場だったら、声をかけることはないと思う。
あえて周りの友達にもバス停での会話の事とか出すことないし。
「そうか、友達はちょっと不自然な気がしてきたな……」
「そうなんですよ、だから知り合いかな?とか思ったりもするんですけど……。
私のイメージ的に知り合いって、バス停で出会ったら
『あ、おーす…………ちょっと音楽でも聴こうかな………』
ってなっちゃうくらいの関係値なんですよね」
「知り合いと言うには気まずすぎないか?」
まあ、とはいっても知り合いもなんか違う気がするところには同意だ。
奥宮と知り合ったのも最近なのに、よくここまで気楽に話せる関係になったものだと思う。
「知り合い以上、友達未満くらい?」
「いや、それより別方向に関係が伸びていってるって感じの方がイメージに近いですね。
それこそ、こういうくだらない話は先輩に振りたいですし、これから友達?みたいな関係になることが想像できません」
「えー?今日はやけに難しい議題を持ってきたな……」
っていうかそもそも関係値を表す言葉ってそんなになくないか?
だいたいとかそれなり、みたいに絶妙なラインをついてくれる言葉ってのはあるのに、関係値は融通が利かない。
「ちょっと一回、事細かに表現してから要約してみるという手法はどうだろう?」
「えと、同じバス停に毎回いるから気づけば放課後毎日話すようになった先輩後輩?」
「えーと、毎日話す先輩後輩の関係……先輩後輩が一番ドンピシャか?」
「……ここまでやってそれはちょっと微妙じゃないですか?
先輩後輩なんて、学校がある以上生まれる関係なんで」
まあ、それもそうなのか。
幼馴染が友達とは限らないみたいな……。
「じゃあ結局、何も出てこなそうだけどな。
そうだ、もし友達とかに聞かれたらなんで答える?」
「あー、近所の兄ちゃんとかじゃないですか?
同じバスで帰ってるくらいだし他の人よりは近い方でしょ?」
「いや、近所というには降りるとこ違うじゃん……」
「とにかく!それ以外思いつかないんです!」
……色々言いたいことはあるが、とりあえずこの話にも結論が出そうで良かった。
ある意味じゃしっくり来る気もする。
「じゃあ、俺たちはご近所さんってことで」
「それも先輩後輩とあんまり変わんない気もします。
……まあ、ちょっとは温かい言い方なんですかね?」
ということで決定、これからは奥宮との関係を比較的近所に住んでいる人と紹介することにする。
「……やっぱ納得いかないです!
先輩も私にお兄ちゃんって呼ばれるのが嬉しかったのが決め手だったんでしょ!」
「違うわ、お兄ちゃんと近所の兄ちゃんを同じ位置に置いてるわけないだろ……」
「何か、とにかくもっと納得のいく結論を出したいです」
「えー、めんどくさい」
「ほら、やっぱり妥協案だったんじゃないですか!」
そういって、必死に案を出そうとする奥宮。
……まあ、めんどくさかったというのも確かにあるが。
俺は関係性に名前もついていないくらい緩い今の関係もそんなに悪くないと思ってしまう。
ちなみに、俺はマジでお兄ちゃんって呼んでくれる可愛い妹が欲しいと思ったことは一度もない。
……多分。