ひとつの終わりとふたりのはじまり
いつも、お読み頂き本当にありがとうございます
今回で第一部終了です これからもアリス達にお付き合いいただければ嬉しく思います
私が、目が覚めたのはあの戦いの後10日経ってからだった
目が覚めると手を握りしめて私の顔を覗き込むウィリアムがそこにいた
「アリス!」というウィリアムの声と共に皆んなが寝室に入ってきた
おじ様達は勿論、おじい様もおばあ様もそこにいた
おばあ様の胸元にはあの赤いネックレスが光っていた
ああ、ウィリアム…… おばあ様に渡したんだ……良かった
おじい様とおばあ様が泣きながら
「ありがとう」と私の手を握る
何か声をかけてあげたいのだが、声がでない
急いでかけつけた王宮医師団の医師でありキャロの婚約者でもあるステイン医師がくまなく体に異常がないか診てくれた
「体には異常はないです、声がでないのは10日間も意識が無かったことか精神的なものでしょう あれほどの事があったのだから仕方がない」
数日するとクレア達がお見舞いに来てくれた
「アリス〜、心配したんだからね」
3人と泣きながら抱きしめあってその後声が出ないわたしは、3人の話を頷きながら聞いていた
あの次の日、国中が大騒ぎだったこと
ウィリアム殿下が国王になること
フェリクス様が宰相補佐になったことなど 3人の話から、この国の後片付けでウィリアム達が大変そう …… と思ってしまった
ウィリアム殿下とフェリクス様のふたりは、既に単位をとっていたため早期卒業することになったそうだ
「アリス…… 辛かったでしょ…… 私達だと頼りないかも知れないけど 一緒に考えたり、泣いたりする事は出来ると思うから…… これからも、もっと話しをしよう」
「クレア……」
クレア、カレン、キャロ…… ありがとう 私の方こそ……
声に出して伝えたいけど出来ないのがもどかしい
元気になったらアカデミーに戻ることを3人に約束した
夜、訪れる人が、帰っていき部屋が静かになり、意識が無かったときの事の自分の中の記憶がひとつひとつ浮かんできた
そうだ、あの時私、精霊王様の所にいてお茶しながら話をしていた
何の話だったかしら……今は、 思い出せない……
精霊王様とお話していると どこからか私を呼ぶ声がしていた…… 低いけど優しくて透き通る声……
「アリス、アリス 帰っておいで もう逃げる事も隠れることもないんだ ……お願いだ 帰ってきておくれ」
切なそうに私の名前を呼ぶ声…… 目覚めてから彼の姿をみていない
声も聞いていない……
そうずっと 私の名前を呼んでくれていたのに……
「セラ……」涙がポロポロ流れながら彼の名前を呼んではじめて声がでた……
その次の日から声がでるようになり、数日後 私はアカデミーに戻った
休学中の課題を終えて無事2年になり専攻を医療を選んだ
2年生の間私は早期卒業を目指して勉強に励んだ、大変だったけど一緒にクレアたちもそれぞれの専攻で勉強に励んでいたので、頑張る事ができた
翌年、テリウス様と共に4人は無事アカデミーを卒業した
卒業式の日、キャラウェイ公爵家、ヴィユンティ侯爵家の皆んながお祝いに来てくれたけどそこに、セラの姿はなかった……
ただ、帰宅すると私の机の上にガーベラの花束がカードと共に置いてあった
「おめでとう」と一言だけ書かれていた
卒業してから1年経った現在の私達はというと
植物専攻のクレアは入学当初の希望どおり領地に戻り乾燥した土でも育つ品種改良に励んでいる
婚約者のリチャードは、魔塔の魔導具研究室にいたが退職しクレアと共に領地へ行き領民の暮らしやすいように魔導具を役に立てたいと張り切っている
カレンは、商才をいかし領地で商業ギルドを立ち上げるそうだ
婚約者のジョンはカレンの父の下で領地経営修行中勿論、彼女の領地の騎士団長としても頑張っている
そしてキャロはというとアカデミーで私と同じく医療を専攻し卒業後、ステイン先生が王宮医師団を辞め小さな医療院を開設したため助手として働きながら医師資格取得の為勉強中なのである
そして、私はというと1年間王宮医師団でキャロとともにステイン医師にしごかれたあと退職を決めた今日、王宮を出て行く
1年勤めて仕事覚えた頃にでていくなんて本当に申し訳ないが私にはやりたい事があるのだ
荷物を纏め医療棟をでるとウィリアム陛下とフェリクス宰相補佐に廊下で、出会った
「陛下、宰相補佐様大変お世話になりました」と挨拶すると
ウィリアム陛下が
「アリス、最後にもう一度聞くけど 本当に王妃にならないのかい」
「陛下、申し訳ございません」
フェリクス宰相補佐が笑いながら
「陛下、執着はいけません」と笑いながら言った
「宰相補佐様、お姉様との結婚式には戻ってまいります」
「ああ、待ってるよ」
ふたりと笑顔で別れた後、キャラウェイ公爵家へ戻り
おじ様とおば様達に挨拶をし、公爵家を出た
「アリス、いつでも帰ってきなさい」そういいながら抱きしめてくれたおじ様……
抱きしめられながら
「ありがとうございました」
そういうとおじ様の肩が震えていた
あの3つの鍵をまたポケットに入れロイ達と共に広い草原へとむかった
空にむかって叫んだ
「ねえ、デュー!聞こえる?聞こえたらここにきて」
暫くすると大きな影が空から近寄ってきた
あの、北の地で出会ったドラゴンだ
彼は、あの後、セラと契約し「デュー」と名付けられた
デューは時々私に会いに来てくれているのだが、最初あの大きさのままで来たので周りがパニックになってしまい、それからは小さい姿で来てくれるようにもなった
「アリス、どうかしたか? 今日は大きいままでいいのか?」
「うん、ありがとう大丈夫よ ねえ、デュー あなたの主の所に連れて行って今、どこにいるか知ってるでしょ」
「ああ、もちろんだ、アリスいよいよ主と共にいくのか」
「ええ、やっと……2年よ……」
セラは、魔塔で魔法騎士として勤め、国中を回り魔物と瘴気を抑えるため、忙しい日々をおくっていた しかしようやく、魔物も、瘴気も落ち着き、王都に帰ってくることになったのだが、王妃事件の功労者として爵位を与えられた 元バルスーン公爵領地をテリウスと共にわけ与えられたのだがあの事件後混乱した領地内をまた新たな領地として復興していかないといけないのだ
ずっと、セラは爵位も領地も、辞退して逃げ回ってたんだけどウィリアムとフェリックスの説得に負けたのだ」
私は、そんな彼を追いかけていく
彼とは2年間会ってない…… どうしよう追い返されたら…… でも、絶対離れない
不安とやっと彼に会える嬉しさでドキドキする
デューの背中に乗り南へ降りて行くと見慣れた馬車が見えた
デューの気配を感じたのか馬車が止まった御者席からその人が、降りてきた
デューが広い場所で降りてくると 走って駆け寄ってきた
彼は、魔法使いの黒装束ではなく
白いシャツにベージュのパンツ サスペンダーをしている
髪は少し高い位置でひとつに纏めているせいか
走ってくると長い髪が揺れている
「アリス! どうして、いきなり? 」
「あなたを追いかけてきたの、ほら少しでも薬が分かる者がいた方がみんな助かるし私、魔法も少しは使えるの、知ってるでしょ」
「知ってるもなにも…… それで俺を追いかけて……」
「そう、もう離れているのは嫌なの……あなたは? 」
「ずっと会いたかった…… 連絡も中々取れない状態だったじゃないか」
「だってあなたずっとこの2年間国中駆け巡って忙しかったじゃない……」
「ああ、 連絡も本当に数える程しか出来なかった 」
「大丈夫よ 時々、送ってきてくれたカードと花束であなたの気持ちは十分に伝わってたわ
でも、私はこれからは貴方について行きたい」
「これから先、大変なことばかりかもしれないぞ」
「ふたりなら乗り越えれる 今までもそうだったじゃない」
「…… やっぱり引き返した方がいい……」
「どうして…… 」
「なぜ、わざわざ大変な道を選ぶんだ 」
「あなたと離れていたこの2年間に比べたら大変な事なんてない! 」
「アリス、本当にいいのか? 」
「これからはずっとそばにいて…… 」
セラは、何かを決めたようにアリスに跪き
剣を捧げ
「私は捧げる、絶対の愛を。 一生を持って仕え、命をかけて君を守る。 我が誓いを受け取らんことを願う」
私は、涙があふれながら
「お受けいたします」
と精一杯こたえた
セラが思い切り抱きしめた
応えるかのようにまわした手で彼の背中をにぎりしめた
一度間違った道を選んで戻ってきた私だけど今度は間違えない
お父さん、お母さんそして、精霊王様
私、前世で亡くなった18歳も超えてしまったよ
今度は、愛する人に出逢えたの
精霊王様…… ありがとう
彼が「これからは、ずっといっしょに生きていこう」そう耳元で囁いた
一緒に…… ふたりで新たなはじまりだ
このお話で第一部終了です お読み下さりありがとうございます
第二部は 想いが伝わったふたり(特にアリスは泣いている事が多かったので笑顔いっぱいにしてあげたい)と 復讐を終えた人達の新たな恋愛模様などそして、新しい出会いなどもたのしんでいただければ幸いです




