春の終わり
精霊王様にあったあの日から数ヶ月がたった
もうすっかり春になった
私はというと病気療養という名目でアカデミーを休学していた
そして別荘で薬学の勉強と光の魔力を使えこなせるように精霊達に指導を受けていた
クレア達とキャラウェイ公爵のおじ様や前ヴィユンティ侯爵のおじい様達には近況報告も合わせて手紙のやりとりをしていたが ノアとお兄様とはお互いに連絡をしていなかった
別荘に住み出して、自分の事は自分でするようになりまたボナール夫妻と一緒に掃除や料理までするようになり
両親が亡くなる前、過ごしていた生活を思い出していた
ディアス・ミラー辺境伯と現在辺境伯の右腕として辺境伯家に仕えている私の師匠のリック師匠は、精霊王様にあった翌日別荘を訪ねてきてくれた
「水くさい」と凄く怒りながらも私の成長に驚き喜んでくれたふたりは、暇さえあれば様子を見に来てくれお茶をして帰っていく
そんな生活をしていたある日、ミラー辺境伯家にディナーの招待をうけた
ミラー辺境伯家に行くといきなり部屋に通され侍女達に取り囲まれ入浴からドレスアップまで一通り支度をされてしまった
「こんなに美しい髪触ったことがない」
「透き通るような肌本当に美しい」
と口々に小声ほめてくださるのは有難いのですが本当に恥ずかしい
「お嬢様本当にお美しい」
と最後にやりきった感だしながらのお褒めの言葉
いえ、あなた方の日頃の鍛錬と技術のおかげです
食堂に通されるとそこにはミラー辺境伯 とリック師匠 そしてノアとフェリクス王子そしてアイリーンがいた
「いらっしゃい、アリス
本当は、キャラウェイ公爵夫妻も来られたかったのだがどうしても王都を離れられなくてね」
「お招きいただきありがとうございます」
と挨拶をし、エスコートされた席に座った
たわいない話をしながら食事を終えお茶が出されたあと辺境伯が人払いをした
「アリスにこれまでの話をしたい」
そう言うと、辺境伯は精霊王が私に話してくれた話と同じような内容の話をしてくれた
さすがに精霊王から聞いています
とは言えないからそのまま辺境伯の話を真剣に聞いていた
私の様子に違和感を感じたのか隣に座るノアが
「アリス、知っていたのか…… セラから聞いたのか?」
と私に小声で聞いてきた
「いえ、セラ様ではありません セラ様もこのことは私と一緒に知ったことです
ノア様あなたも幼い頃会われた事のある方です」
「ああ、あの方か……」
「それで今日私達が来たのは、あなたの力が必要でお借りしたいとお願いに来た」
とフェリクス王子が切り出した
「1ヶ月後、王妃の誕生日のパーティーで「事」を起こす 最終的に王妃の闇の魔力の浄化にはどうしても君の力が必要なのだ」
「勿論です、貸すのではなく私にとっても両親の仇となりますもの私が出来ることがあるのであれば全力で致します」
フェリクス王子とアイリーンは顔を見合わせ安堵の表情を見せた
「お姉様は、いつからご存知だったのですか?」
「フェリクス様の婚約が決まってしばらくしてからしら
フェリクス様が真実を知られた時にお話して下さったの」
「あの時、君が一緒に居てくれなければ私はここまで来られなかっただろう」
フェリクスがアイリーンの手を握りしめた
「マリアとのやりとりを見ていて……
途中、フェリクス様も術中に堕ちたのかとも思いましたが 交流会のダンスの時、改めて信じられるお方だと思ったのですよ」
「あの時は、僕が君に捨てられるかと心配で仕方がなかった」
と、ふたりのイチャイチャが徐々に止まらなくなってきた
ふたりのやりとりを見せられながら他の4人は一体いつまでこの様子を見せられるのだろうと言葉を失ってしまった
「アリス、君は僕達と一緒にキャラウェイ公爵家の「君の家」に帰って来てくれないか
公爵家にはセラが結界を張ってくれているから安全だ
いつでも帰られる状態だからできれば明日にでも帰ってきてほしい」
「わかりました、ノア
では私は一度別荘に帰り荷物をまとめてまいります」
「では送っていこう」
とノアが、席を立った
「いえ、ロイがおりますので」
と私がそういうとロイがスっと私の後ろから姿を現した
「ロイなのか、随分様子が変わったな」
「ウィルお前もな しかし、中身は以前とそう変わってはおらぬのかもな」
とロイはフンと鼻をならして先に部屋をでた
「それでは、皆様失礼します」
ロイを追いかけるように 私も部屋をでた
「なんなのだ、あの連中は……
あれではアリスは今までずっと蚊帳の外ではないか
今頃になってお願いだと、アリスをなんだと思ってる」
ロイがぶつぶつ言いながら私を乗せて帰っていく
「私の事を心配しての事なのよ…… 」
ロイに言い聞かせながら、自分に言い聞かせていた
もう春も終わりになるというのに頬をなでる風が冷たい夜だった




