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その49の2



 それからジュリエットが、拗ねた表情で口を開いた。



「カイムは……使い魔のこと、


 私たちに教えてくれてなかったんだね」



 彼女は仲間であるカイムが手札を隠していたことを、心外に思っているようだった。



「それはさ、大魔獣をテイムしてるなんて知れたら、


 ちょっとした騒ぎになっちゃうだろ?


 ミミィの能力は


 怖がられるタイプのものだと思うしな」



「うん……。それでも話して欲しかったな。


 同じパーティの仲間なんだから……。だけど……」



 ジュリエットはそう言うと、ちらりとルイーズを見た。



 そしてこう続けた。



「私と一緒に居てくれたのは、本物のカイムなんだよね?


 レオハルトさんを助けに行ったのは、片手間のニセモノ。


 そういうことだよね?」



「む……!


 カイムさんは危機に陥った私を


 格好良く助けてくださいました。


 本物か偽物かなんて、関係がありません」



(……言うほど格好良く助けたか?)



 一歩譲って、トマたちを倒したところまでは良かったかもしれない。



 だがエミリオとの戦いでは、キマイラに首を折られて終わりだった。



 そしてルイーズが見せたあの手並。



 結局のところ、自分は不要だったのではないか。



 ルイーズは自分の力で危機を脱することができたのではないか。



 そもそもあの状況は、危機と呼べるようなものではなかったのでは?



 カイムがそんなふうに考えていると、ジュリエットが口を開いた。



「それでレオハルトさん」



「はい?」



 ジュリエットは責めるようにルイーズを睨み、こう続けた。



「あの氷の塔はキミの仕業かな?


 困るんだけどね。


 エスターラの領地に


 クリューズの軍事拠点を


 違法建築されてしまっては。


 こんなに大きいと、溶けるのに時間がかかりそうだね?」



「溶けませんけど」



「うん?」



「私の氷は、太陽熱くらいで溶けたりはしません」



「それははたして氷なんだろうか……?」



 ルイーズの妙な言い分に、カイムはそんな疑問を抱いた。



「消そうと思えばいつでも消せますよ」



 ルイーズはそう言うと、氷の塔に手を向けた。



「待てよ」



 そのときカイムがルイーズを止めた。



 どうして止める必要があるのか。



 ジュリエットは疑問のこもった目でカイムを見た。



「カイム?」



「この塔、このまま残しとくってのはどうだ?


 こんなに立派なんだ。


 良い観光資源になるんじゃないか?」



「それは……一理有るかもしれない」



 理由を説明されるとジュリエットはカイムに賛同した。



「えっ?」



「あのレオハルトさんが建てた塔ともなれば、


 国外からレオハルトさんの信者たちが


 参拝に訪れるかもしれないしね。


 クリューズにレオハルトさんが作った


 ウンディーネの湖みたいに」



「……信者?」



「けど、万人向けの観光スポットにするには


 この辺りはちょっとガラが悪いんだよね。


 都市計画そのものを見直す必要が有るかもしれないね」



「勝手に人の魔術を


 都市計画の中心にしないでいただけますか?」



 ルイーズは抗議をしたが、そんなものは誰も聞かない。



「決まりだね」



 多くの人材によって綿密に練られていたはずの都市計画の変更が、ここに決定された。



 話に区切りがつくと、ジュリエットがカイムに声をかけた。



「それじゃあカイム。


 私たちはデートの続きと行こうか。


 さようなら。レオハルトさん」



 ジュリエットがカイムを連れ去ろうとすると、ルイーズがそれを制止した。



「カイムさん。


 せっかくの休日デートが


 卑劣な暗殺計画だったと知って


 深く心傷ついている女性を


 このまま置き去りにするような方では無いですよね?


 あなたは」



「悪いけど、カイムは私と先約が有るからね。


 傷を舐め合う相手は他に見つけてくれるかな?


 ああそうだ、ミミィさんなんてどうかな?


 キミは彼……彼女?


 とにかく、一緒に居ても偽物だって気付かなかったんだろう?


 だったらわざわざ


 本物のカイムと居る必要は無いよね?」



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