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その48の1「レオハルトさん」



「カゲトラのめんどうを見てくれた人を死なせてしまったか……」



 少しの悔いを見せつつ、エミリオはルイーズに向き直った。



「……レオハルトさん。


 話し合いといこうか」



「…………話し合い?」



「ぼくとしては、


 これ以上きみと争いたいとは思わない。


 そっちが見逃してくれるのなら、


 ぼくたちはこのまま引き下がろう。


 いくらレオハルトさんでも、


 本調子では無い状態で


 ブラックキマイラと戦いたくは無いだろう?」



「クッ……」



 ルイーズは俯いて声を漏らした。



 友の死に泣いているのだろうか。



 最初エミリオはそう思ったはずだ。



 だが。



「クククッ……ハハハハハハッ!」



 涙は無かった。



 嘲笑と共に、ルイーズは顔を上げた。



「レオハルトさん……? っ……!」



 メガネの奥で、ルイーズの邪眼がギラギラと輝いていた。



 邪眼封じが、ルイーズの力を抑えている。



 そのはずだ。



 だというのに、青く輝くルイーズの瞳は、エミリオを戦慄させた。



 ルイーズは見下したような笑みを浮かべたまま、エミリオに言葉を投げかけた。



「キサマごとき下郎が、


 この私と話し合いだと?


 対等なつもりか?


 ブラックキマイラ?


 その虫けらが何だと言うのだ?


 まさかキサマも、


 竜が手負いであれば蟻にも勝算が有るなどと、


 世迷言をほざくつもりでは無いだろうな?


 愚かすぎて、思わず笑ってしまうぞ。


 さて……。


 私の恩人を、よくも手にかけてくれたな。


 私も鬼では無い。


 害されたのが彼で無ければ、


 情けをかけて見逃してやることもできた。


 だが……彼はダメだ。


 彼は私の宝物だ。


 キサマはそれを踏み砕いた。


 私の逆鱗に触れてしまったということだ。


 たしかソフィアの使徒と言ったな。


 キサマらは全員、今日から私の怨敵だ。


 ひとり残らず根絶やしにしてやろう。


 楽しみに待っているが良い」



 確かな予言か、それとも錯覚か。



 エミリオは、ソフィアの使徒の滅びを見たような気がした。



 さらなる寒気を感じ、エミリオは視線を下げた。



 彼が両足を預ける地面。



 そこに異常が起こっていた。



(地面が凍って……?)



 いつの間にか、空き地全体の地面に、氷が張られていた。



 それだけでは無かった。



 地面の氷は体積を増し、上へ上へと盛り上がっていった。



「っ……!?」



 氷が盛り上がり続けるのを、エミリオは何もできずに見ていた。



 エミリオの体は、高所へと持ち上げられていった。



 いつの間にか空き地には、高さ6キロメートルほどの氷の塔ができていた。



 あらゆる高層建築物を遥かに超える威容。



 これを超えられるのは、大自然の山々くらいだろう。



 そんな馬鹿げた塔の屋上で、エミリオは立ち尽くしていた。



 急激な気圧の変化に息苦しさを感じながら、エミリオは声を漏らした。



「こんな……バカな……


 これが……これがレオハルトさんの力……


 絶対に……手を出すべきでは無かった……」



「もう遅い」



「グウウウウゥッ!」



 キマイラが吠えてルイーズへと向かった。



 対するルイーズは構えることすらなく、足元に魔法陣を出現させた。



 すると塔から氷の鎖が生え出してきた。



「ギャウッ!?」



 鎖はあっという間に、ブラックキマイラを締め上げた。



 キマイラの上に居たエミリオも縛られ、身動きが取れなくなってしまった。



 さらに塔から新しい鎖が出現し、エミリオの部下たちを拘束した。



 晒し者にするかのように。



 あるいは捧げ物にするかのように。



 鎖はエミリオたちを天へと持ち上げていった。



 エミリオたちがある程度の高さまで持ち上がると、ルイーズは手のひらを天へと向けた。



 すると刃渡り2キロメートルはある大鎌が、空に出現した。



「さて、何か言い残すことは有るか?


 糞尿を垂れ流しながら


 命乞いをしても良いぞ?


 聞き入れてはやらんが。


 何かおもしろい事を言ってみせれば、


 キサマの仲間と出会った時に、笑い話として聞かせてやろう」



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