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その42の1「ルイーズとクソダサメガネ」



 生まれ持ったものなのか。



 それとも、人生の途上で覚醒した力なのか。



 ルイーズが持つ力は、絶望的なもののようにも思えた。



 ……だが、手立てが無いわけではない。



 そのはずだ。



 カイムはそう考えながら、ロビーから受け取った包みをほどいていった。



 やがて包みの中からは、メガネケースが現れた。



 目利きのできる人間が見れば、ダンジョンマテリアル製のケースだと分かっただろう。



 カイムの関心は、ケースには無かった。



 大切なのは中身だ。



 カイムがケースを開けると、中からは野暮ったいフレームのメガネが姿を見せた。



 クソダサメガネと言っても良いだろう。



 カイムはメガネをかけると、ルイーズに声をかけた。



「ルイーズ。きみは邪眼持ちだ」



「はい? 何とおっしゃいましたか?」



(……まあダメか)



 一応の試みは、やはり意味を成さなかった。



 カイムはメガネを外し、本題に入ることにした。



「ルイーズ。頼みが有る」



「頼み……ですか?」



 カイムは真剣な顔つきでこう言った。



「このメガネをかけてほしい」



(邪眼封じのメガネをかけてる時、


 エンマ先輩には


 邪眼の効きが悪いみたいだった。


 ジュリエットがあまりルイーズを怖がらないのも、


 邪眼封じのおかげだと思う。


 ルイーズ自身が邪眼封じを


 身につけるようにすれば、


 周囲のルイーズへの恐怖は


 格段に軽減されるはずだ)



 ルイーズの邪眼は、直接に瞳を合わせた時、その真価を発揮するのだろう。



 間に邪眼封じが入れば、その効力は大幅に軽減される。



 カイムは今までの情報から、そう判断していた。



 自身の邪眼に認識阻害を受けているルイーズには、カイムの目論見はわからない。



 どうしてカイムにこんな頼みごとをされたのか。



 それも理解できていないはずだ。



 しかしメガネをかけるだけなら、べつに構わないだろう。



 そう考えているのか、ルイーズはカイムの頼みを引き受けた。



「はぁ。わかりました」



 ルイーズはメガネを受け取り装着した。



 そしてレンズ越しにカイムを見た。



 最初からルイーズの邪眼は、カイムに対しては効果が無い。



 ……ひょっとしたら、多少の効果は発揮しているのかもしれない。



 だが、たとえ有ったとしても、自覚が無いレベルの効果だ。



 カイムでは、邪眼封じの効果を確認することはできない。



 それを確認するためにも、メガネの装着を続けてもらう必要が有るだろう。



 カイムはそう考えていたのだが……。



「はい、どうぞ」



 ルイーズは、すぐにひょいっとメガネを外した。



 そしてそれをカイムに返そうとしてきた。



「いや……。ずっとはめてて欲しいんだけど?」



「えっ嫌ですけど」



「俺がドゲザして頼んでもダメか?」



「そこまでされると断りづらくはなってしまいますが……」



「どうして嫌なんだ?


 さてはてめーアンチメガネ同盟の一員だな?」



「何の同盟ですか。


 どうしてと言われましても、


 単純に、可愛くないじゃないですか」



「可愛くない? それだけか?」



「それだけって……。女の子にとっては大切な問題だと思いますけど」



「そうか。わかった。ドゲザしよう」



「しないでくださいよ!?


 いったいどうして私にメガネをかけさせたがるんですか?」



(邪眼の力を弱めるためだよ……と言いたいが、


 スキルの認識阻害のせいで、


 言っても伝わらんのだよな……。


 事実を伝えられない以上、


 理屈で彼女を説得するのは難しい。


 情に訴えるしかないか。


 けど……どうする……?)



「なあ、ルイーズ……」



「はい」



「俺じつは、メガネっこ萌えなんだ」



「はい?」



「俺はメガネをかけてる子が


 可愛く思えて仕方が無いんだ。


 素顔の100倍かわいく見える。


 裸眼の美人とメガネのブスだったら


 迷わずメガネのブスと付き合う。


 そういう男なんだ。


 だからルイーズにも……メガネをかけていてほしい」



「それはつまり……


 カイムさんは、私に愛の告白をしているということなのでしょうか?」



「えっ?」



「えっ?」




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