その41「ルイーズと鑑定結果」
「次の仕事が有るんだ。
用事が済んだのなら、もう行っても良いか?」
「はい。ありがとうございました。伯父さん」
「またね。おにいちゃん」
ロビーとウルスラは、カイムたちから離れていった。
十分に距離を取ると、ウルスラが口を開いた。
「いったいエピックセブンは何が目的だったの?」
「さあな」
「裏切ったんじゃないの?
私たちをあの場に誘いこむのが目的で、
この公園はもう敵に囲まれてたりして……」
「可能性としては否定せんが」
「向こうが仕掛けてくる前に、
こっちからやりに行っても良い?」
「エピックセブンは怪しい。
だが、怪しいだけだ。
決定的な証拠が無いかぎりは
敵とみなすことは許されん。
交戦などもってのほかだ」
「ええー? まどろっこしいなぁ」
「そもそもスパイの存在意義とは何だ?
うまく情報を集め、
致命的な破滅を回避するのが
スパイの最大の目的だろう。
武力の行使とは、
スパイにとっては最終手段でしかない。
おまえがただの血に飢えた獣だと言うのなら、
エピックの名を捨てて軍隊にでも行け。
紛争中の小国にでも行けば、
安く買い叩いてもらえるだろうさ」
「安く?」
「兵士に大金を出せるようなでかい国が、
怪しい外人に国の行く末を任せると思うか?」
「ダメじゃん」
「転職に乗り気で無いのなら、
今は私に従っておけ」
「結局どうするの?」
「周囲に警戒しつつ、この場から退避する」
「りょーかい」
二人は公園を出た。
そして素早く学校の敷地から脱出した。
敵が二人を襲うということは無かった。
「仕掛けて……来ないね?」
学校の塀の外までくると、ウルスラが口を開いた。
「そうだな」
「……敵じゃないのかな? 教官は」
「それを判断するのは、
今のところは私じゃあない。
ハーストに帰還する。行くぞ」
「うーん……すっきりしないなぁ……」
言葉にはしなかったが、ロビーもウルスラに同感のようだった。
二人は釈然としない表情で、学校から遠ざかっていった。
一方で、カイムたちは公園に残っていた。
カイムの手中には、ロビーが残した紙が有った。
「これは……」
紙に記された文字を読み、カイムが呟き声を漏らした。
興味を持ったルイーズが、その紙を覗き込んだ。
「どうしたんですか? 何も書かれてない紙なんか見て」
「ちょっとな」
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ルイーズ=レオハルトさん
ユニークスキル 畏怖の氷眼
効果1 魔力が上昇する
効果2 スキル所有者より天職レベルが低い者を畏怖させる
備考1 レベル差に応じて効果増大
備考2 スキル所有者の敵意に応じて効果増大
制約1 氷属性を除く魔術への適正が著しく低下する
制約2 スキル所有者はこのスキルの存在を認識できない
制約3 スキル所有者より天職レベルが低い者はこのスキルを認識できない
制約4 スキル活性化中、スキル所有者は傲慢になり判断力が低下する
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ロビーが残した紙には、ルイーズのスキルが確かに記されていた。
だというのに、ルイーズ本人ですら、その内容を読み解くことはできないようだった。
どうしてなのかカイムだけが、ルイーズのスキルを認識することができた。
(やっぱりルイーズはユニークスキルを持ってた。
けど……この制約は、エグいな。
ルイーズよりレベルが低い者は
全員が彼女を怖がる?
しかもスキルの存在を認識できないだって?
戦闘特化のはずのエピックナインだってルイーズを怖がってた。
ルイーズは相当なハイレベルだってことだ。
このスキルが有る限り、
ルイーズは世界中のほとんど全ての人から
怖がられることになる。けど……)