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その38の1「ストーカーとヨンゾウの邪眼」



「新婚旅行の写真だよ。


 海外旅行だから、


 あの写真で今の住所がバレることは無いと思うよ」



「ししし新婚旅行……!?」



 学校を去ったレリアは、既婚者となっているらしい。



 その話を聞いたティボーが、今まで以上の動揺を見せた。



 そんな彼に冷ややかな視線を向けながら、ミラベルは話を続けた。



「うん。里帰りをした時に


 ぐうぜんに幼馴染みの男の子と再会してね。


 そこで熱烈にプロポーズされて、


 すぐに結婚したみたい。


 もうお腹に赤ちゃんも居るらしいよ」



「嘘だッ!!!!」



 ティボーの中で何かが爆発した。



「おい、ソワイエ……?」



 カイムがティボーに声をかけた。



 ティボーはカイムのことは無視し、声を震わせてこう言った。



「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ……!


 レリアが俺以外の男と……


 セ……子供なんて作るはずが無い……!


 レリアは俺と愛し合ってるんだから……!」



「こいつ……」



 ついに事件のあらましを悟り、カイムは眉をひそめた。



 ティボーはオリハルコンリングを輝かせた。



 そして一枚のタオルを取り出すと、それに鼻を押し付けた。



 彼はタオルの臭いを、思い切り吸い込んだ。



「すぅーっはぁーっ。


 ああ……レリア……いつも良い匂いだね……」



「いや……。何ヶ月前のやつだよそれ」



「頭がスッキリしてきた……。


 わかる……今なら全てがわかるぞ……。


 これは陰謀だな……?


 俺とレリアを引き離そうとする薄汚い陰謀。


 そしてもちろん黒幕は……」



 ティボーは再びリングを輝かせた。



 彼の手中にナイフが出現した。



「レオハルトさんッ! キサマだあああァァァッ!!!」



 ティボーはルイーズに向かった。



 カイムはルイーズを守って立った。



 そのとき。



「いいかげんにするでござるよ」



 ヨンゾウがティボーの肩を掴んでいた。



 ぎりぎりと力をこめられて、ティボーは一歩も動けなくなってしまった。



 ティボーは暴れて逃れようとしたが、ヨンゾウを引き剥がすことはできなかった。



「はなせ! はなせよ!


 おまえには関係ないだろ!?」



 力でどうにもならないと悟ったティボーは、ついに言葉に頼ることにした。



 そんな自分勝手な言葉を、ヨンゾウが聞き入れる道理も無い。



「白昼堂々と凶行に及んでおいて、


 関係が無いわけが無いでござろう。


 これは少し、お灸をすえねばならんようでござるな」



 ヨンゾウは、あいている方の手でメガネを外した。



 そしてティボーと目を合わせた。



 ヨンゾウの目が赤く輝いた。



「っ……!? これは……!?


 焼ける……! 俺の体が焼ける……!


 誰か……! 水魔術を……!


 火が……! 火がああぁぁぁっ!」



 ティボーは身を焼かれるような仕草をみせた。



 だが。



(火? 火なんてどこにも……)



 ティボーの様子を傍観していたカイムには、炎など見えなかった。



 だがなぜか、ティボーは苦しみ続けた。



 少し待って、ヨンゾウはメガネを装着した。



「あ……あぁ……」



 ティボーは熱がるのを止めて、ぐったりと体から力を抜いた。



「さすがに……警察を呼んだ方が良さそうだな」



 カイムは遠話箱を手に取り、警察の遠話番号を押した。




 ……。




 やがてかけつけてきた警官に、ティボーは連行されていった。



 部室前の廊下で、ルイーズは彼の背中を見送った。



 そしてこう言った。



「結局こうなってしまいましたね」



「こうなるって分かってたのか?」



 カイムがそう尋ねた。



「私たちは、


 ストーカーがソワイエさんであるということは


 ずっと前から知っていました。


 レリアちゃんが退学する前の時点で……。


 彼女に頼まれて、


 私が犯人を調査していたのです。


 ですが、どうせ学校を去るのだから、


 おおごとにすることは無い。


 そんなレリアちゃんの温情で、


 ソワイエさんは見逃されることになりました。


 結果としては、


 あまり良い結末にたどり着けたとは


 言えなくなってしまいましたが」



「ルイーズが調査を?


 ひょっとして、レオハルトさん男子寮潜入事件って……」



「しっ」



 ルイーズは自身の唇に人差し指を当てた。



 そして仄かな笑みをカイムへと向けた。



「いけませんよ。乙女の秘密に踏み込んでは」



「はぁ」



 カイムはルイーズのことを追求するのは止めて、ヨンゾウの方へと歩いて行った。



「先輩」



「にん? なんでござるか?」


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