その37の1「魔導義肢研究部とミラベル」
「できるのか?」
カイムがルイーズに尋ねた。
するとルイーズは、自信ありげな口調でこう返してきた。
「はい。私はレリアちゃんに関しては真実を知っていますからね」
それを聞くと、ティボーは興奮した様子を見せた。
「何だと……!? レリアはどこに居るんだ!?」
ティボーは目を血走らせていた。
それほどまでにレリアという少女を気にかけているのだろうか。
気が高ぶっているティボーに対し、ルイーズは淡々とこう答えた。
「とある外国の町で、幸せに暮らしていますよ」
「幸せ……?
いや待て。口先だけなら何とでも言える。
レリアが無事だって証明にはなりゃしない」
「私以外の証人を用意できれば
信用していただけますか?」
「それは……相手と話の内容によるが……」
「ミラベル=マニャール。
彼女の証言なら、信用していただけますか?」
「ミラベルっていうと確か……」
カイムはメモ帳を開き、事件に関係する人物の確認を行った。
「ルイーズの元パーティメンバー。
当時は1年A組。
途中で魔導器科への転科を申し出て、今は2年E組……と。
それじゃ、E組に行ってみるか」
「ソワイエさん。あなたもご同行ねがえますか?」
「それで本当にレリアの居場所がわかるんだろうな……!?」
「それは確約できません」
「何だと……!?」
「ですが、彼女の無事が確認できるということは
保証させていただきますよ」
「……行くよ。行けば良いんだろ」
カイムたちは2年E組へと向かった。
ティボーは苦々しげな態度で、カイムたちに続いた。
E組の教室に入ると、カイムは近くに居た女子に声をかけた。
「ちょっと良いか?」
「…………」
女子はぽーっとした顔でカイムの美貌を見た。
「聞いてる?」
「あっごめんなさい。何かな?」
「マニャールさんって子、居る?」
「ううん。部活に行ったと思うけど」
「何部?」
「魔導義肢研究部だね」
「ありがとう」
カイムは教室から出ると、ナスターシャに声をかけた。
「部室の場所、わかる?」
「はい」
「頼むよ」
ナスターシャの後について、カイムは移動を始めた。
(魔導義肢研究部……どこかで聞いた名前だな?)
やがてカイムたちは、魔導義肢研究部の部室前へとたどり着いた。
カイムがドアをノックすると、『どうぞ』という声が返ってきた。
カイムはドアを開けた。
すると教室くらいの広さの部屋に、機材がごちゃごちゃ転がっているのが見えた。
部室というものは、どこも散らかっているものなのだろうか。
カイムはそんなふうに考えた。
中に居る部員たちは、それぞれが何らかの作業をしているように見えた。
誰に声をかけるべきか。
少し悩んだカイムは、部室内全体に声をかけてみることにした。
「あのー」
はっきりとした声が部室内に響いた。
すると余裕の有る部員たちが、カイムに視線を向けた。
その視線は、すぐにルイーズの方へと吸い込まれた。
「…………? レオハルトさん?」
「どうしてレオハルトさんがウチの部室に……!?」
「まさか俺たちの部室を、悪の秘密基地にするつもりじゃ……?」
「しませんけど」
それからカイムは、誰に向けるともなく、次の疑問を口にした。
「マニャールさんって居ますかね? 2年E組の」
すると部員の一人がこう答えた。
「まだ来てないけど、何の用?」
「ちょっとお話をうかがいたいのですが」
「話?」
そのとき。
「おや。ストレンジどの」
部室の入り口の方から、少年の声が聞こえてきた。
カイムが振り返ると、そこにヨンゾウの姿が見えた。