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その36の1「ルイーズと失踪事件」



 冒険者学校から遠く離れた、とある島。



 そこに一軒だけ有る、屋敷の応接室。



 秘密情報部長官、ジョン=ゴールドダガーが、ソファに腰かけていた。



 やがて応接室の扉が開いた。



 一人の人物が、応接室に入室してきた。



 その人物の格好は、まともとは言い難かった。



 青いフード付きローブに、顔全体を覆う仮面。



 不審者のごとき格好が、その人物の人相を覆い隠していた。



 ローブ姿の人物は、ジョンの向かいのソファに座った。



「こんにちは。ジョン」



 その人物が口を開いた。



 仮面のせいでくぐもってはいるが、女性の声のように聞こえた。



「ああ。こんにちは。占い師」



 ジョンはそう答えた。



 占い師。



 人々の、そして国家の運命を見通すと言われる、正体不明の存在。



 どうやらジョンは、ハースト共和国の最重要人物と面会をしているらしい。



 ジョンは持参した鞄を開くと、中から書類を取り出した。



 そしてそれを、ソファの間のローテーブルに置いた。



「エピックセブンに関する報告書だ。


 もっともきみのことだ。


 そんなものは無くとも、


 事態を把握できているのだろうがな」



「いえ。ありがたく拝見させていただきます」



 占い師は書類を手に取り、そこに記された文章に、目を通していった。



 やがて占い師は、読み終わった書類をテーブルに戻した。



 そして穏やかな声音でこう言った。



「二人の関係は、上手くいっているようですね。


 たいへん喜ばしいことです。


 世界が滅びから逃れるには


 スーパーヒロインの力が必要不可欠なのですから」




 ……。




 昼休み時。



 冒険者学校の廊下に、カイムたちの姿が有った。



 カイムはメモ帳にチェックを入れているところだった。



「これでレオハルトさん百合乱暴事件その4も無事に解決だな」



「多すぎません? 百合乱暴事件とかいうやつ」



「ああ。思ったよりアブナイ学校みたいだな。ここは」



「…………」



「そろそろホームルームだな。教室に戻るか」



「そうだね」



 ジュリエットが頷いた。



 同時刻、カイムたちの教室。



 四人の男子が、気の合う者同士で集まっていた。



 その内の一人が、一枚の紙に目を向けていた。。



 それを見て、別の男子がこう言った。



「それ何?」



「校内新聞」



「おまえ、新聞なんて読んでんの?」



「さいきん妙に配ってるからさ。ついな」



「おもしろいん?」



「そこそこ」



「何が書いてあんの?」



「レオハルトさんのあの噂が、ウソだったってさ」



「あのってどのだよ。


 多すぎてわかんねー」



「ねこ珍走団のやつとか」



「ああ。アレな。


 なんか最近、レオハルトさんのハナシ多いよな」



「アレだろ? ストレンジが動いてるから」



「良くやるよな。アイツ。


 前に俺の所にも聞き込みに来たわ。


 100人居るんじゃないかってくらい


 そこらじゅうで見かけるし」



「まあ、惚れてんだろ。レオハルトさんに」



「だよな。好きじゃなかったら


 あそこまでかいがいしく出来んわな」



「しかしよりにもよって、レオハルトさんとは……。


 猛者だな」



「まあなぁ。顔は写真で見たら可愛いような気もするけど」



「けどなぁ」



「ああ……」



「でもさ、その記事が本当なら、


 レオハルトさんはひょっとしたら良い人かもしれないだろ?」



「そうかもしれんが」



 そのとき、カイムたちが教室に入ってくるのが見えた。



 一行の中には、ルイーズの姿も有った。



「お、噂をしたら。


 俺ちょっと声かけてくるわ」



「まあがんばれ」



 男子はルイーズの方へと向かった。



 そして普通の女子に声をかけるように、ルイーズに声をかけた。



「レオハルトさん」



「はい」



「ええと……」



「何でしょうか?」



 男子はUターンして、友人たちの所へと戻っていった。



「…………」



 無言でいる男子に対して、他の男子が声をかけた。



「どうした」



「オレは……。


 くそ、なんだよ。全然出てこねーな。


 ……俺な。


 レオハルトさんのこと、


 ひょっとしたら怖くないかもって思ってたんだよ。


 けど、なんかああして、レオハルトさんの顔見たらさ……。


 悪い。やっぱ怖えわ」



「そりゃ怖えでしょ」



「聞けて良かった」



「みんな、どうもな。


 オレ……おまえらのこと好きだわ」



 四人はガッシリと肩を組んだ。



「何だアレ?」



 四人を遠目で見ていたカイムが、疑問の声を漏らした。



「知りません」



(ルイーズは怖がられたままか。


 噂が多すぎるから、


 冤罪をちょっと晴らしたくらいじゃ意味が無いのか?


 コルシカ帝の血筋だからダメなのか?


 ……本当に?


 なんかもやっとするな……)



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