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その31の2


 カイムたちはカゲトラに乗って学校へと戻ってきた。



 カイムはルイーズを、女子寮の前へと送り届けた。



 そして別れの言葉を口にした。



「それじゃ、また明日な」



「はい。また明日。


 ……カイムさん」



「ん?」



「嫌われ者の私が、


 男の子と食事に出かける日が来るなんて、


 思ってもみませんでした。


 本当にありがとうございます」



「まだまだこれからだぜ。


 悪い噂を無くして、


 毎日でも誘われるようにしてやる」



「そんなには要らないですけどね」



 ルイーズは楽しげに眉をひそめた。



 そのとき、女子寮3階の窓が開いた。



 そこから黒髪の女生徒が姿を見せた。



 彼女は姿を見せるなり、カイムを叱りつけてきた。



「こら! そこの男子!


 寮の前で何をしているの!?


 まさか不純異性交遊じゃないでしょうね!?」



「おぉ……?」



 いきなりの剣幕に、カイムは戸惑いを見せた。



 それを見て、ルイーズがこう説明した。



「あの方は生徒会長さんですね。


 厳しい方なので、


 今日のところは退散された方がよろしいかと」



「ふーん?


 会長さーん。俺たちは純な関係ですよー」



「その言い方にふしだらさを感じるのだけど!?


 ちょっと待ってなさい!」



 そう言うと、生徒会長は窓から姿を消した。



 カイムのもとへ向かったのだろう。



「行ってください。


 捕まるとたいへんですよ」



「ああ」



 会長と会って話をしてみたい。



 なぜかカイムの中にはそういう気持ちが有った。



 彼女の声が好きなのかもしれない。



 そんな気もした。



 だがルイーズから忠告を受けたので、素直に退散することに決めた。



 妙に後ろ髪を引かれる想いで、カイムはカゲトラに飛び乗った。



 カゲトラが走り始めた。



 寮の玄関が、勢い良く開かれた。



「うおっ、意外と早いな。カゲトラ!」



 会長の容姿を目の当たりにする前に、カイムは女子寮前から去っていった。



「こらー! 待ちなさーい!」



 会長はカイムを追いかけたが、カゲトラの足には追いつけないようだった。



 女子寮前に残されたルイーズは、小さくこう呟いた。



「……また誘ってくださいね。カイムさん」




 ……。




 冒険者学校の北。



 アミルカ共和国領の山中に、一軒の山荘が有った。



 二人の少年が、その山荘を訪れた。



 少年たちは玄関を通り、居間へと入っていった。



 居間のソファには、新聞を読んでいる男の姿が有った。



 少年たちの片方が、男に声をかけた。



「バドリオさん。例の転校生の写真を持ってきました」



 男の名は、エミリオ=バドリオ。



 かつてカイムたちと追走劇を繰り広げた相手。



 そしてカゲトラの前の飼い主だ。



「うん」



 エミリオは短く少年に答えた。



 少年は鞄から写真を取り出すと、ローテーブルの上に置いた。



「どうですか?」



 エミリオは写真を見た。



 そしてこう言った。



「間違いないね。カイム=ストレンジは


 ハーストでぼくが出会ったエージェントだ」



「……味方なんですよね? ストレンジは。


 だったら俺たちの素性を明かせば


 協力者になってくれるんじゃないですか?」



「止めておいた方が良い。


 彼が味方だという確証が有るわけじゃない」



「けど、バドリオさんを逃がしたんでしょう?


 内通者ってことですよね?


 バドリオさんの猫を連れているのも、


 きっと俺たちに見つけて欲しいっていうサインだ」



 カイムがカゲトラを連れているのは、同僚に押し付けられたからだ。



 そんなバカバカしい事情も知らず、少年はカイムの言動を深読みしていた。



 それに対し、エミリオはこう答えた。



「そうとは言い切れない。


 彼のことはソフィアさまも御存知ないようだ」



 ソフィア。



 カイムも耳にしたことのある名前を、エミリオは口にした。



 そしてこう続けた。



「仮に二心が有ったとしても、


 ぼくたちに完全に従うとは限らない。


 第三勢力という可能性だって有る。


 あるいは、彼自身はダブルなのだとしても、


 彼のバックの連中が、


 彼を釣り餌として使っている可能性も有る。


 うかつにこちらの正体を明かすことは避けるべきだ」



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