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その29の2



「魔女ソフィアって、何百年も前のヤツだろ?


 その信者だか何だか知らねえが、


 何だっていまさら……」



「キミもレオハルトさんには


 いろんな異名が有るのは知ってるだろ?


 その異名の一つが……氷の魔女。


 魔女って言葉はソフィアを連想させる。


 そしてレオハルトさんが持つ悪のカリスマは


 多くの信徒を生んだソフィアの存在を


 ほうふつとさせる」



「私はぼっちですし、カリスマとか無いですけど」



 ルイーズの反論を、ジュリエットは斬って捨てた。



「有るんだよ。


 レオハルトさんは、魔女ソフィアが転生した姿。


 そんなふうに噂する人も居るんだ。


 ソフィアの使徒たちは


 レオハルトさんの存在に触発されたのかもしれないよ」



 そんなジュリエットの仮説に、カイムが疑問を挟んだ。



「……ただの噂だろ?


 そもそも転生なんて有り得るのかって話だし。


 そんな噂のせいで、


 隠れてたソフィアの信者が動き出したっていうのかよ?」



「あるいは、ソフィア本人の仕業か……」



 ジュリエットはそう言って、ルイーズに冷淡な視線を向けた。



「本気でルイーズを疑ってんのか?」



 あまりにもバカバカしい。



 カイムはそう考えていた。



 だが。



「さあ? どうかな?」



 ジュリエットの顔に笑みは無かった。



 その表情は、デートの時の彼女とはまるで別人だった。



 本気でルイーズのことを、墓荒らしをするような人間だと思っているのか。



 ……今はジュリエットの心情を追及している場合ではない。



 大切なのは、ルイーズの疑惑を晴らすことだ。



 そう思ったカイムは、別の疑問をジュリエットに向けた。



「警察は何も掴んでないのか?」



「さあね。


 少なくとも、


 犯人を指名手配できるレベルでないことは確かだね」



 次にルイーズが口を開いた。



「私たちで犯人を捜してみるというのはどうでしょうか?」



「そう簡単に見つかれば苦労はしないと思うけど?」



 ジュリエットは冷ややかにそう言った。



「やってみなくてはわからないと思いますが」



 カイムは心情的にはルイーズの味方をしたい立場にあった。



 だが、理屈の上ではジュリエットに寄っていた。



 それでルイーズをなだめるようにこう言った。



「ん……。見つかるかもしれないけど、


 たいへんだろ?


 とりあえずは別の話を進めて良いか?」



 カイムがそう尋ねると、少しの間を置いてルイーズは頷いた。



「……はい」



(エピックのみんなに頼んだらどうにかなるかもしれんが、


 ルイーズの汚名を晴らすことが


 秘密情報部のミッションに沿ってるかっていうと


 だいぶ怪しいんだよな)



 カイムに与えられた任務は、予言された大事件の火種を見つけることだ。



 ルイーズの汚名が事件につながってるのであれば、秘密情報部に一報を入れれば良い。



 優秀なエージェントたちが、必ずや真犯人を見つけてくれるだろう。



 だが、カイムは私情でルイーズの汚名を晴らそうとしている。



 さすがに仲間には頼れなかった。



「それじゃあ次。怪のニは……」



 収集した噂について、ルイーズに質問を重ねていった。



 質疑応答はテンポ良く進み、話に区切りがついた。



「とりあえずはこんな所か……。


 やっぱりほとんどの噂は


 本人には心当たりのない


 根も葉もないモノってことか」



 カイムが予想していた通り、ルイーズは悪事に手を染めてはいないようだ。



 ルイーズが嘘をついていなければ……という条件付きではあるが。



「はい……。


 みなさん本当に


 これらの噂を信じていらっしゃるのでしょうか……?」



「どうかな?


 おもしろがってるってのも有るんじゃねえの?」



「おもしろい……ですか?」



「自分たちの学校に


 伝説の魔女みたいな存在が居るだなんてさ、


 なんだか物語みたいだろ?」



「私は生きた人間なんですけどね」



「そうだな。


 実際に被害者が居ることを


 おもしろいで済ませちゃダメなんだろうな」



「もし……」



「ルイーズ?」



「カイムさんが私と公園で出会わなかったら、


 もしカイムさんが、


 私と同じクラスでは無かったら、


 あなたはどうしていたのでしょうか?


 私の噂を耳に挟んで、


 『ああ、おもしろいな』と、


 そう思うだけで、おしまいにしてしまったのでしょうか?」




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