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その29の1「噂と墓荒らし」


 カイムはカゲトラを連れて寮の外にでた。



 それから猫車のりばの方へと向かおうとした。



 すると。



「にゃ」



 乗りなよ。



 カゲトラがそう言ってきた。



「え? 乗れとか言われても、鞍も手綱も無いけど」



「みゃー」



 任せてよ。



 カゲトラが自信ありげに言ったので、カイムは彼女に従うことにした。



「わかったよ。落とさないでくれよ」



 カイムはカゲトラに跨った。



 そして校庭内の公園へと向かった。



「そう言えば、待ち合わせの詳しい場所を決めて無かったな」



 そのことに気付いたカイムは、とりあえずガゼボに移動した。



「ここに居たら多分だいじょうぶだと思うんだけどな……。


 ほら、初めて会った場所だからさ」



「んみゃ」



 カイムたちはガゼボでルイーズを待った。



 やがて人影が近付いてくるのが見えた。



 カイムの予想に反し、現れた人物は一人だけでは無かった。



「カイムさん」



 ルイーズがカイムの名を呼んだ。



 カイムはルイーズに答えながら、ルイーズの後ろを見た。



「ルイーズ。それに……ジュリエットとグラスさん?」



「やあ。カイム。それにカゲトラさんも」



 ジュリエットが気品に満ちた所作でカイムに挨拶をしてきた。



 ジュリエットの斜め後ろにはナスターシャの姿も見えた。



「みゃあ」



 カゲトラがジュリエットたちに挨拶を返した。



 それからカイムがジュリエットにこう尋ねた。



「ルイーズと仲良くなったのか?」



「べつにそんなことは無いけどね。


 レオハルトさんがキミと何かをするみたいだから、


 気になって様子を見させてもらいに来たよ。


 あまり妙な事をする気なら


 クラスの一員、パーティの仲間として


 止めないといけないしね」



「さて、具体的にどうなるかは


 成り行き次第ってとこだな」



「つまり……アドリブデートということかな?」



 ジュリエットの言葉にルイーズが驚きを見せた。



「えっ。デートなのですか?」



「違うけど」



「そっか。デートじゃないんだね。


 それじゃあいったい二人きりで何をするつもりだったのかな?」



「ルイーズの噂について、


 本人からちょくせつ聞いておきたくてな」



「ええと……?」



「先輩とかから話を聞いて、


 噂について、


 特に悪評と言えるようなものをピックアップしてみた。


 その噂が、ほんとうに事実無根なのかどうか、


 まずはルイーズの話を聞きたい」



「わかりました。


 どどんと来てください」



「良し。それじゃあ、まずは怪の一……」



「怪?」



 カイムの妙な言葉選びにジュリエットがツッコミを入れた。



 小説か何かの影響なのだろうか?



 カイムはツッコミを気にせず言葉を続けた。



「怪の一。レオハルトさん墓暴き事件。


 近くにある伝説の英雄の墓が暴かれ、


 遺骨と埋蔵品が盗み出された。


 この犯人がルイーズだという噂が有る。


 ……心当たりは?」



「無いです」



「だよな」



「そもそも、昔の古い骨なんか盗んで


 私に何の得が有るっていうんですか……」



 そう言って、ルイーズは呆れ顔を見せた。



「闇の儀式に使う?」



「何の儀式ですか」



 そのときジュリエットがこう言った。



「けどさ、墓荒らし事件自体は


 本当に有ったらしいよ」



「そうなのか?」



「うん。当時の新聞にものったし、


 遺骨が盗み出されたのは本当のことみたい」



「どうして犯人は骨なんか盗んだんだろうな?」



「私が聞いた話だと、


 犯人は邪教の信者かもしれないって言われてたね」



「邪教?」



「うん。暴かれたお墓は


 太陽の英雄アンジェリク=クールベのものだ。


 アンジェリクは


 月の英雄クロエ=カルパンティエとの二人組で、


 月日の英雄とも言われていた。


 アンジェリク最大の偉業は、


 当時大陸の脅威となっていた


 魔女ソフィアを討伐したことだ。


 ……その命と引き換えにね。


 この偉業のおかげで彼女は


 最も偉大な英雄と呼ばれることも有る。


 逆に言えば、ソフィアの信奉者である邪教団にとっては、


 最も憎い相手ということになる」



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