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56/104

その28の2



「邪眼?」



「知らないかな?


 瞳に強い力が宿るスキルで、


 モノによっては


 人の精神に影響を及ぼすことができる。


 このレンズはね、


 そういう邪眼の力を弱めてくれるんだ」



「存在くらいは知ってるが。


 ジュリエットが邪眼持ちなのか?」



「ううん。


 昔ににね、邪眼持ちの悪いヤツに


 誘拐されたことが有るんだ。


 それからは、念のために


 こうやって自衛をしているんだよ。


 ターシャのメガネも同じ性質のレンズを使ってるんだ」



「へぇ。やっぱり王族ともなると狙われやすいのかな」



「かもね」



 話に区切りがつくと、ジュリエットは日が沈む方角を見た。



 日没30分前の優しい輝きが、ジュリエットたちを照らしているのが見えた。



「もうこんな時間。


 寮の門限が有るから、そろそろ帰らないといけないね。


 ……なんだか、あっという間だったね」



「そうだな」



「デートって楽しいんだね。知らなかったよ。


 素敵な一日をありがとう。カイム」



「まあ、俺はふらふらついてきただけで、


 楽しいデートになったのは


 ジュリエットのおかげだと思うけどな」



「そう? どういたしまして。ふふっ。


 それじゃあ……名残惜しいけど、行こうか」



 三人は元の服に着替えると、猫車のりばへと移動した。



 そして猫車で学校へ戻り、さらに車を乗り換えて寮へと向かった。



 寮の前で車を下りたカイムに、ジュリエットが別れの挨拶を告げた。



「カイム。おやすみ」



「おやすみ。ジュリエット。


 ……ああそうだ。


 一つ頼んで良いか?」



「何かな?」



「寮でルイーズに会ったら、


 このメモを渡しといてくれるか」



 カイムはそう言って、ジュリエットにメモを差し出した。



「え……」



 カイムはジュリエットが絶句するのを見た。



 だが、女子の繊細(???)な気持ちまでは、カイムにはわからない。



 ただ目的を果たすために、短くこう尋ねた。



「ダメか?」



 ジュリエットはすぐに表層的な余裕を取り戻し、カイムにこう答えた。



「分かったよ。それじゃあね」



 ジュリエットはメモを受け取り、座席の方へと戻って行った。



 猫車の扉が閉じられた。



 車が走り去っていった。



「どうして最後に外すかなぁ……」



 猫車の中で、ジュリエットはぐったりとした様子で、ナスターシャに抱きついていた。



「ダメですね。あの男は」



「ダメだけど、ダメダメだけどさぁ……」



「そのメモ、どうされるのですか?」



「え? どうって、レオハルトさんに渡すんだよね?」



「そうですね。ちなみになんと書いてあるのでしょうか?」



「ダメだよ。人宛てのメモを勝手に読むなんてさ」



「ですがそのメモは、


 特に封などはされていませんよね。


 見られて困るようなら


 せめて折りたたむくらいはするものなのでは?」



「……そうかな?」



「そう思いますが」



「…………」



 邪心に負けたジュリエットは、ついメモを見てしまった。



「何と?」



「明日の9時に、


 学校の公園で会いたいだって。


 ふっ……あはは……。


 まさか次の日にレオハルトさんともデートだとはね。


 この私を、他の女の前菜にするなんて……


 やってくれるね? カイム」



「これだけではデートの誘いだとは言い切れないのでは?」



「そう? うん……。そうだね。


 逆にデートの誘いで無いとも言い切れないけどね。


 ……ターシャはどっちだと思う?」




 ……。




 翌朝。



 朝食を終えたカイムは、自室で身支度を整えていた。



 学校の制服に身を包むと、カイムはカゲトラに声をかけた。



「それじゃあ俺は出かけるけど、おまえはどうする?」



「みゃ?」



「ルイーズと会う予定なんだけど。


 まあ、ちょっと強引に誘ったから、


 来ない可能性も有るけどな」



「みゃー」



 行ってみようかな。



 カゲトラはそう答えた。



「ん。行くか」




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