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52/104

その26の2



「そういえば、


 前にお金が無いって言ってたけど、


 良かったら私が出すよ」



「嫌だよ」



「えっ」



「クラスメイトに借りを作りたくない」



「そう。けど、そんなに大げさに考えなくても良いと思うよ。


 ちゃんとダンジョンで仕事をしてくれれば


 ここに有る防具の代金くらいは


 すぐに稼げるからね」



「それでもな」



(デートで女子にカネを出させるなと


 参考にした本にも書いてあった)



「そんなこと言って、


 あんまり防具代をケチるようだと


 パーティリーダーとして


 キミの行動に口出しさせてもらうことになるけど」



「だいじょうぶだ。


 パパに仕送りをしてもらったからな」



「……パパ?」



「ん? どうした?」



「ううん。何でもないよ。


 そう。ふふっ。パパにね」



「うん。だからだいじょうぶなんだ。


 40万くらいなら出せるぞ」



「40か。ちょっと物足りない気がするけど、


 まあギリギリ及第点かな」



「えっ……」



 40万メルクというのは大金では無かったのか。



 そう思っていたカイムが、思わず声を漏らした。



 間の抜けた表情を浮かべたカイムに対し、ナスターシャがきりっとした顔でこう言った。



「ジュリエットさまたちは


 学生の身ではありますが、


 レベルの上では上級冒険者ですからね。


 防具の値段は100万単位があたりまえです」



「そうか。防具って高いんだな……」



(やっぱりダンジョンってのは


 カネが動く所なんだな)



 国家事業になるだけのことは有る。



 やはり大型ダンジョンというものには、莫大な価値が有るらしい。



 つまり、事件の原因になる可能性も高いということだ。



 カイムはそのことを再確認した。



「ふふっ。ダンジョン攻略がんばろうね」



 庶民的な態度を見せたカイムを微笑ましく思ったのか。



 ジュリエットは笑顔でカイムを激励し、次にこう続けた。



「そのためにも


 今買える装備をきっちりと選ぼうか。


 とはいえ、ここはちゃんとした店だからね。


 値段を見て選べば


 大きく失敗をすることは無いと思うよ。


 だから、予算の範囲内で


 見た目を重視してみるのも良いかもね」



「そんなので良いのか?」



「うん。私も防具は


 けっこう見た目重視で選んでるよ」



「なるほど」



 確かに、凛々しいジュリエットの戦闘服は、彼女の雰囲気に良く似合っていた。



 そういう決め方で良いのなら……。



「これにしようかな……」



 カイムは軽い気持ちで黒い戦闘服に手を伸ばした。



 だが。



「えっ……」



 ジュリエットがぎょっとした声を漏らしたので、カイムは思わず手を止めてしまった。



「何だよ?」



「ううん……。


 そこに試着室が有るから、


 一回試着してみたらどうかな?」



「わかった」



 カイムは黒い戦闘服を手に、試着室へと向かった。



 試着を終えたカイムはカーテンを開いた。



 ジュリエットの瞳に、戦闘服姿のカイムが映し出された。



「どうだ?」



 悪くないのではないか。



 鏡で自身の姿を見たカイムは、そんなふうに考えていた。



 だがカイムの期待に反して、ジュリエットの反応は好ましくは無かった。



「うーん……」



「どうなんだよ?」



「あのね、気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど……。


 カイムに黒はちょっと似合ってない気がするんだよね」



「え……。黒が好きなんだが」



(夜のミッションで目立たないしな)



「うん……。そういう男の子って居るよね。


 ただ……安易に黒に走る前に


 もう少しカラーリングを考えてみた方が良いんじゃないかな……?」



(安易な黒って何だ? 黒は安易なのか? 黒とは)



 予想外のジュリエットのダメ出しは、カイムの思考を混乱させた。



 それで考えるのもめんどうになり、疑問の言葉を口にした。



「それじゃあどうしたら良いんだよ?」





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