表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/104

その26の1「ジュリエットと防具選び」



「デート?」



「そうだよ。


 昨日の昼食は、


 1%くらいの確率で私の初デートだったけど、


 それにしては


 あんまり冴えたデートだとは言えなかったからね。


 なんだか最後は


 レオハルトさんが主役になってたような気もするし……」



「99%くらいの確率でデートじゃ無かったんだから


 そんなに気にせんでも」



「気にするよ。


 初デートだよ? 初デート。


 特別なんだからね?


 ストレンジくんにも


 特別な相手としての自覚を


 しっかりと持って欲しいな」



(しっかし、特別なデートに


 保護者を同伴せにゃならんのは難儀だな。


 王女さまってのは)



 カイムはそう思い、ナスターシャの方を見た。



「何か?」



 ナスターシャは、相変わらずの鋭い視線を返してきた。



 普通の男子なら尻込みしてもおかしくない圧迫感だ。



 だがカイムはそれを軽く流した。



「いいや。ジュリエット。わかったよ。


 それで、特別なボーイフレンドとしては


 どうすりゃ良いんだ?」



「ええと……」



 ジュリエットはカイムの格好を観察した。



「休みの日までマフラーなんだね」



「ダメか?」



「ギリギリ合格点ということにしておいてあげるよ」



「そいつはどうも」



「行こうか。ストレンジくん」



「ああ。それだけどさ」



「うん?」



「デート相手にストレンジくんだなんて、


 他人行儀だろ。


 カイムで良いぜ」



「……うん。…………カイム」



 ジュリエットは表情を緩めてカイムの名前を呼んだ。



「良し。行くか」



 カイムがそう言うと、ジュリエットはてれてれとした表情をおさめた。



 そしていつもの凛々しい顔でカイムに頷いた。



「そうだね。


 予定通り、まずは防具を見に行こうか」



「せっかくのデートの場所が


 そんなに色気が無くて良いのか?」



 カイムはテキストによって、最低限の予習は済ませてある。



 本に記された華やかな恋物語には、防具などという無骨な文字は出てこなかった。



 いくら冒険者学校の生徒とはいえ、デートスポットに防具屋というのはどうなのか。



 そう思いカイムが尋ねると、ジュリエットは余裕の有る笑みを返してきた。



「最初はね。


 他にもプランは考えて有るから安心してよ」



「そうか。


 そっちがデートのつもりだって知ってたなら


 こっちだって下準備くらいはしてきたんだがな」



(デートのプランは


 普通は男の方が立てるもんだって


 参考にした本にも書いてあった)



「ニブチンだね。カイムは」



「面目ない」



 三人で、冒険者街の大通りを歩いた。



 人通りが多い。



 だが、ジュリエットのオーラによるものなのか、人がぶつかってくることは無かった。



 ジュリエットは、大きな店舗の前で足を止めた。



 ここが目当ての防具屋のようだ。



 カイムも足を止め、店のファサードを見た。



「立派な店だな」



「うん。この冒険者街でも


 一、二を争うくらいの店なんじゃないかな」



「俺みたいな平民が入って良い店なのか?」



 ひょっとしたら、王侯貴族ごようたしの、凄い店なのではないか。



 カイムがそう思って尋ねると、ジュリエットはおかしそうに笑った。



「ふふっ。おもしろい事を言うね。


 王族の冒険者なんて


 滅多に居ないんだからさ、


 身分でお客さんを相手にしていたら


 お店が潰れてしまうよ」



「そうか」



「それにね、


 本当の高級店というのは


 案外ちいさいものだよ。


 数少ないお客さんを相手にするわけだから、


 そんなに大げさな店舗は必要が無いのさ。


 こういう大きな店は、むしろ庶民向けだよ。


 まあ、冒険者を普通の庶民と言って良いのかは


 わからないけどね」



「なるほど」



「ハーストにはこういう店は無かったのかな?」



「有ったのかもしれんが、


 俺はそういう店には縁が無かったからな」



「冒険者なのに?」



 実際のカイムは冒険者ではない。



 装備は情報部から支給された物しか使ってはこなかった。



 防具に関しては、ダンジョンマテリアル製のスーツを着用するのが常だった。



 冒険者が好むゴテゴテとした防具など、カイムには縁が無かった。



 ……などということを、素直に口にするわけにもいかない。



 それでカイムは話をごまかしてこう言った。



「親にもらった装備で戦ってたからな」



「へぇ。そういうことも有るんだね。


 それで……どんな防具が良いかな? カイムは」



(本当はジャージでも良いんだが)



「動きやすいやつが良いな。


 なるべく普通の服と感覚が変わらないやつ」



 動きが鈍くなる鎧などをわざわざ着たくは無い。



 カイムは要望を口にした。



 それを聞いたジュリエットは、視線を動かしてこう言った。



「それならあの辺りかな?」



 ジュリエットと一緒に、カイムは店内を移動した。



 そして軽量装備が並べられている一画で足を止めた。



 カイムは防具が並べられている棚へと視線を向けた。



「どう? 気に入ったのは有るかな」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ