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その23の2



 言われるまでもなく、カイムは臨戦態勢に入っていた。



 強い気負いなどは無い。



 リラックスした自然体で、カイムは銃を構えた。



 その右側ではルイーズが魔法陣を展開していた。



 右はルイーズに譲るか。



 カイムはそう考えて、向かって左の狼を射撃した。



 同時にルイーズが、右の狼に氷の矢をはなった。



 それぞれの攻撃が、魔獣に直撃した。



 急所を抉られ、魔獣は一撃で絶命した。



 白い魔石が地面に落ちた。



 戦闘が終わると、ジュリエットが口を開いた。



「ストレンジくんは普通に戦えるみたいだね


 ……レオハルトさんは言うまでもないね。


 とはいえ、まだ一戦しただけだし、


 もう何戦か様子を見てみようか」



 同様に20層で探索を続け、魔獣と数回戦闘した。



 特に負傷者などを出すこともなく、カイムたちは無難に勝利を果たした。



 カイムもルイーズも、じゅうぶんな戦闘能力を持っている。



 それを確認すると、ジュリエットがこう言った。



「うん……。


 二人とも後衛としての仕事は


 十二分にこなせるみたいだね。


 このパーティには前衛が三人居るし、


 ターシャも接近戦はこなせる。


 中層の魔獣を相手に


 そう簡単に崩されることは無いだろうね。


 階層を進めていく方針で行こうか。


 それじゃあ基本の陣形を決めよう。


 防御力が高いハインスくんが前衛。


 両脇から私とブロスナンくんが攻める。


 後衛の二人はハインスくんの斜め後ろ。


 ターシャは二人の後ろに立つ。


 二人のポジションが一番安全だから、


 安心して戦ってね」



 するとロジャーがカイムを見てこう言った。



「この辺りのザコなんか、


 ぼくだけで片付けてやる。


 黙って見てて良いぞ」



「もう……。ダメだよブロスナンくん。


 ここでの戦いは


 連携の訓練も兼ねてるんだから、


 後衛の二人も、しっかり動いてよね。


 それと、前衛が増えて盤面が難しくなったけど、


 フレンドリーファイアだけは絶対にしないこと。


 良いね?」



「了解だ」



「わかりました」



「よし。それじゃあ陣形を崩さずに出発。


 21層に向かうよ」



 一行は前進を始めた。



 先頭を行くドスは、ルートを暗記しているらしい。



 地図を見ることも無かった。



 たびたび戦闘が起こったが、全て快勝に終わった。



 最短ルートで21層に到着すると、さらに下へとくだっていった。



 それから2時間後。



 ダンジョンの26層に、カイムたちの姿が有った。



 全員に余力が感じられた。



 戦闘服にも傷一つ無い。



 まだまだ行ける。



 まだ序の口ですら無い。



 誰しもがそう思っていただろうが……。



 ジュリエットの方から、ピッと音が聞こえてきた。



 聞きなれない音だ。



 そう思い、カイムはジュリエットを見た。



「ジュリエット?」



「これは予鈴だね」



 ジュリエットはそう言って、ポケットから小型魔導器を取り出した。



「時間になると、この通信機が音を鳴らすんだ。


 そろそろ帰って来いって合図だよ。


 帰還のルートには、


 25層の転移陣を使用するよ」



「ああ。帰ったら、一緒に昼飯だな」



 カイムがそう言うと、ジュリエットは困ったような顔で頬を赤く染めた。



「あっうん。約束は守るよ」



 照れた様子のジュリエットを見て、ロジャーが歯噛みした。



「ぐ……!


 ヴィルフさん! ぼくも混じって良いかな!?」



「それはダメ」



「うぐっ」



 一行は来た道を引き返し、25層へと向かった。



 そこから転移陣が設置された部屋へと移動した。



 陣を起動させ、地上へ。



 ドームの更衣室で元の制服に着替えた。



 そしてドームから出て、猫車のりばへと向かった。



 A組の猫車の前には、コンラートの姿が見えた。



 カイムたちの姿を確認すると、コンラートは名簿にチェックを入れて行った。



 カイムたちは猫車へと乗り込んだ。



 行きと同じように、カイムはルイーズの隣に座った。



 全員が無事に帰還すると、猫車が発進した。




 ……。




 やがて猫車は、冒険者学校の校舎前へと帰還した。



「っ……それじゃあ行こうか……! 学食へ……!」



 猫車から下りたジュリエットは、気迫のこもった声でそう言った。



「何の気合だ?」



 カイムが困惑を見せた。



「だって……。


 私にはこれが初めてのデートなんだよ?


 ちょっと気合が入るくらい


 仕方が無いと思わない?」




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