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その22の1「ねこパンチと着替え」



「そうだ。おまえ、名前は?」



 決闘する相手のフルネームくらい知っておくべきではないか。



 そう思ったカイムは、一応ロジャーにそう尋ねた。



「ロジャー。


 ロジャー=ブロスナンだ。


 行くぞ!」



 ロジャーは素直に名乗ると、手中に剣を出現させた。



(さて、どうするかな。


 本当の実力は隠しておくのが


 スパイってもんだと思うが、


 今回は勝っておいた方が


 話が丸くおさまるような気もするな……)



 カイムは懐から魔弾銃を取り出そうとした。



 そのとき。



「みゃ」



 カゲトラが地面を蹴り、ロジャーに迫った。



「えっ」



 意表を突かれたせいか、ロジャーは動けなかった。



 無防備とも言える状態のロジャーを、ねこパンチが張り飛ばした。



「ふべっ!?」



 ロジャーは倒れた。



 決闘の指輪が割れ、結界も消滅した。



「サンキュー。助かったぜ。カゲトラ」



「みゃ」



(カゲトラのねこレベルはそこそこ高そうだな。


 おっとそうだ。


 スパイとして褒めの心を


 忘れないようにしないとな)



「ナイスファイトだ。ブロスナン」



 カイムがそう言うと、既に立ち上がっていたロジャーが声を荒らげた。



「イヤミか!? 汚いぞ! 猫に頼るなんて……!」



「そう言われてもな。


 猫も実力のうちっていう名ゼリフが有るだろ?」



「無いよ!?」



 無いらしかった。



「ジュリエット。どう思う?」



 カイムは場の判断を、ジュリエットに委ねることにした。



 二人で言い争うよりも、リーダーシップを持った人物に任せた方が良い。



 そう考えたからだ。



「ストレンジくんの勝ちで良いんじゃないかな?」



 ジュリエットがそう言うと、ロジャーがなさけのない声を漏らした。



「えっ……」



「カゲトラさんはストレンジくんの猫だからね。


 何よりも、カゲトラさんがフィールド内に残ったことに


 きみは何も文句を言わなかったわけだし。


 事前の取り決めが無い以上、


 不当な横槍だとは言えないと思うな」



「だとさ」



 ほのかに勝ち誇った笑みを浮かべ、カイムがそう言った。



「そんなぁ……」



 ジュリエットの言葉であれば、ロジャーも受け入れるしかないのだろう。



 彼はがっくりと気落ちした様子を見せた。



「気を落とすなよ。


 また相手してやるから。カゲトラが」



「自分で戦う気は無いのか!?」



「無い」



「ぐぅぅ……。


 さすがはレオハルトさんの仲間だな……」



「えっ?」



 急に側面から刺され、ルイーズが声を漏らした。



 つぎにジュリエットがこう言った。



「ねえ、そろそろ行こうよ」



「了解」



 6人とカゲトラで、ドーム内に入った。



 飲食店やアイテムショップなど、ドーム内には様々な区画が有った。



 その一画を指差して、ジュリエットが口を開いた。



「ストレンジくん。


 あそこが男子更衣室だよ。


 私たちは隣の女子更衣室に行くから、


 着替え終わったらここに集合ね」



「了解」



 カイムは更衣室に向かった。



 わだかまりが有るせいか、ロジャーはカイムから距離を取って歩いた。



 ドスはロジャーに同行した。



 更衣室に入ると、たくさんのロッカーが並べられているのが見えた。



 一人でロッカーの前に立ち、カイムは着替えを済ませた。



 そしてロッカーに鍵をかけると、ジュリエットたちとの集合場所に向かった。



 カイムが集合場所にたどり着いた時、そこにはルイーズが一人で立っていた。



「ルイーズ? 着替えないのか?」



 カイムが疑問をはなった。



 ルイーズの格好が、学生服のままのように見えたからだ。



「私は後衛ですからね。


 それほど動き回ったりもしないと思いますから」



「そういうもんか」



 そのとき、他のパーティのひそひそ声がカイムの耳に届いた。



「さすがレオハルトさんだ。防具など必要がないらしい」



「先輩がさ、レオハルトさんが小指で剣を止めるのを見たって」



「レオハルトさんくらいになると、


 むしろ何も身につけていない方が


 アーマークラスが高いんだろうな」



(アーマークラスって何だ……?)



「……やっぱり着替えてきます」



 ルイーズは恥ずかしげにそう言うと、更衣室へ足を向けた。



 それと入れ違いで、ロジャーとドスが集合場所にやって来た。



 ロジャーはむっとした表情で、カイムから少し離れた場所で足を止めた。



 それから少し待つと、ジュリエットが更衣室から出てくるのが見えた。



 ジュリエットの戦闘服は、王子様が着る礼服のように煌びやかだった。



 さすが王族は着るものが違う。



 カイムは内心でそう感心した。



 対するジュリエットは、カイムを見るなり表情を歪ませた。



 そしてカイムのすぐ前まで来ると、苦い声で彼の名を呼んだ。



「ストレンジくん……」



「うん?」



「それ、ジャージ?」



「そうだが?」



 言葉通り、カイムは学校指定のジャージを着用していた。



 その上に銃とナイフのホルスターを装備するというおかしな格好をしていた。



 さらに、首にはいつものマフラーが見えた。



 なおさらおかしかった。



「そうだがじゃないよ!?


 ダンジョンでジャージを着る冒険者なんて


 聞いたこと無いけど!?」




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