死んだら、そこは一面真っ白な世界だった。
トンネルを抜けるとそこは一面の雪景色だった。
そんなどこかで耳にした事のあるフレーズをつい口にしたくなるような景観が
目を覚ました際、真っ白な虚無空間が目の前に広がっていた。
地に足を着けてるようで、ふわふわと漂っているのかもわからない不思議な感覚だ。
ここはどこなんだろう?
なんでここにいるんだろう?
などをぼんやりと考えてみるも、あまりにも白く一面の虚無空間に意識を奪われていく、
いや、飲み込まれていく感覚になる為、掻き消されてしまう。
「…そうか。自分は死んでしまったんだな。」
開口一番のセリフは自分の死を認識したセリフだった。
一面の花畑もなければ、渡し賃が必要そうな川もない。
針の山も血の池らしき、地獄を連想される景色もない。
だけど、目の前の非日常的な光景は死を認識させるのに十分な情報だった。
夢という可能性もあるが、夢ならもう少し何か色づいていてもいいだろう。
死を認識した瞬間、目の前に小さな光が現れた。
光の球体は徐々に大きくなっていく。
ピンポン玉からテニスボール大のサイズになり、サッカーボールからバスケットボールサイズへ、
どんどんと球状のまま大きくなっていき、やがて両手を広げたサイズまで広がっていった。
この球体はどこまで大きくなっていくのだろう?
膨れ上がって、最後は水風船のように破裂音と共に爆発するのだろうか?
この位置だと爆発に巻き込まれるのではないだろうか?
爆発に巻き込まれた場合、死んでしまうのかな?
あ、もう死んでるのか。
え?死んでる場合、この場合どうなるんだろう?
オーバーキル状態となるのか、なんか追加でペナルティが加算されるのだろうか?
などを考えていると
「しないしない。死んだ上にペナルティなんか加算されたら、とても悲しいじゃないか。」
と声が聞こえてきた。
声は球体から聞こえてるようで、意識に直接語りかけてるような感覚だった。
「やぁ!心也 おかえり!」
「おかえり?」
”おかえり”・・・えっと、外出から帰宅した際の迎えの言葉だよな?
え?ここ自分の家だった?
ここに来てはじめての混乱だった。
「あ〜そりゃそうなるよねぇ。ごめんごめん言い方を変えよう。 ようこそ!!裁定の間へ!」