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90話 断罪人①

続き


 俺達は買い物を済ませて店を後にしようとしていた。

 買ったプリンは一度マイホームに通ずる鞄に仕舞い準備は万端だ。

 

 クランリーダーのスカーレットからは集合時間丁度に現地転送の招待状を送ると、この前連絡の追伸にあった。

 このまま第十都市への都市間移動も先んじて出来なくはないが、この都市で残りの時間を適当に潰すことにする。


「それではまた。微力ですが、この店のことも親友にも紹介しときますね」

「是非に頼むよ」


 俺達は最後に声をかけて店を去ろうとしていた。

 扉のドアノブをとり外に出ようとした、その時ーーーー



“バゴォォォーーーーン!!!“



 轟音と共に空間に衝撃が走る。


「うおっ!? 何が起きたんだ……!?」


 途端に俺はそのまま地面に倒れ込み周囲の状況を確認した。

 

 ルシアーネも同様、俺の上に仰向けになって塞ぎ込んでいる。

 お菓子の家も又“ミシッ……ミシッ……”と若干の軋みを上げ、クッキーの粉末破片が天井から落ちてきていた。

 

 爆発したのか……? 

 それとも地震でも起きたのか……?

 俺は初めてのセカンドワールドでの現象に訳も分からず、動揺しながら上半身を起こす。


「なんか凄い……揺れだった。主、大丈夫……?」

「ああ。ただ心配してくれるのはいいが……そろそろ、みぞおちに置いている肘を退けてくれないか……」


 俺がそう伝えるとルシアーネは元気よくピョンと立ち上がった。

 それよりも今はともかくあの衝撃、果たしてあの婆さん無事だったか?

 と、急いで視線をそちら側の方へと向けた。


「これはまた酷い貰い事故だったね……。全くあの連中ら、もう少し手加減はできないんかね……」


 杖を突き刺しなんとか耐えたようでブツブツと小言を吐いている姿が見えた。

 この様子ならひとまず大丈夫だったんだろう。

 それよりも『貰い事故』『あの連中ら』と今起きたことについて何か知っている様子だ。


「今の衝撃……あの連中って一体誰なんですか?」


 俺は崩れ落ちる菓子の破片を避けながら再び店内へと戻り質問する。


断罪人(コンビクター)が召喚されたのさ。恐らくプレイヤーの誰かがとんでもないことやらかしたんだろうね……。落ち着くまで中にいな。外よりかは幾らか安全さ」


 婆さんは少し呆れるように深いため息を吐きそれに答えた。

 …………断罪人?

 確か……咲と翔の2人といた時そんな話を聞いた気がする。

 犯罪を犯したプレイヤーを処罰する為のNPC組織だったか……?


断罪人(コンビクター)……って、あの断罪人……ですよね?」


「ああそうさ。このセカンドワールドの最高権力の三柱である管理者(アドミニストレータ)創造使(クリエイター)に連なる断罪人(コンビクター)さね。しかも、かなり大規模だ。奴らが見逃す筈がない……って嬢ちゃんどこ行こうとしているんだい!?」


「主、主! 世界最高だって! 目に焼き付けなきゃ損! 見に行こ! 見に行こ!」


「……っておい! 約束までの時間ももう近いんだし、騒ぎが収まるまではここにいたらじゃないか」


 世界最高と言われて好奇心を抑えられなかったのかこんなことを言ってきた。

 断罪人が来るのはプレイヤーキルが起きるレベルの事件が起きた時の筈。

 俺たちは混沌の加護もあってなのか何かと運が悪い。

 できれば自ら余計なことに巻き込まれに行くことなどしたくないのだがーーーー


「世界最高見る。見る。見る。見に行くーーーー!」


 と、俺の引き留めの言葉から逃げるようにルシアーネは目を輝かせ、外へと駆け出して行ってしまった。


「……ったくもう、仕方がないな。色々とありがとうございました! またいつか来ます!」

「あはは、アンタもまた苦労人だね。恐らく騒ぎはここより下層で起こってる筈さ。嬢ちゃんもそこにいる筈。そら行った!」


 婆さんの助言を貰い俺はルシアーネを追いかけるように店から出た。




 俺は地下へ地下へとどんどん降りて行く。

 この第八都市、見た目以上に中が深く複雑化していている。

 ものの数秒後に出た筈なのだが未だルシアーネの姿が見つからない。

 

 又、さっきから爆発音は何度か鳴り響き続けている。

 空気を伝わるその振動は徐々に強まっていき、しばらくすると目的の場所へと辿り着いた。


「……とんだ大騒ぎじゃないか。……ったくルシアーネも見当たらないし一体どこ行ったんだよ」


 思わず声を漏らす。

 目の前には半壊した街があり逃げ惑うプレイヤー、俺のようにその光景を野次馬する者がいる。

 想像以上に混沌としたその雰囲気の中でも眩い光を放つ異様な存在が目についた。

 俺は屈み込むようにその光景の一部始終を眺める。



「こちら神域星第八都市エイトシープ担当、【Oscar(オスカー)】。現在【Victor(ビクター)】【 X-ray(エックスレイ)】【 Zulu(ズール)】の計4機と遂行中。目標、内8割の断罪は完了。周辺被害レベルハンドレッド級。原住NPCへの加害も確認。中位以下の管理者(アドミニストレータ)も求む」



 長髪の男の一人が誰かに連絡をしているようだ。

 断罪人と呼ばれる彼らNPCの格好は白衣装に白肌、黒髪の2単色と印象的だ。

 そして彼らの顔の作りも美男美女と美形。

 周囲で激しく動き回り、戦闘している断罪人と思わしき者達がまさにそうだ。

 

 その白い閃光に相対するのはーーーー


「ぜぇはぁ……ぜぇはぁ……。俺様がかの断罪人を下した人類初の男だ! 【Yankee(ヤンキー)】だったか? なんだか知らないが所詮大したことなかったなっ! おいお前ら、ちゃんと映像に収めたよな? 俺様の輝かしい勇姿をこの都市の無差別破壊というテロリズム共に歴史に刻みつけるんだっ!」


「ハハ……俺たちマジやばいっすよ兄貴! 最強っすよ! 俺たち!」


「でも兄貴そろそろタイムリミットだぜ。流石にもうトンズラしねぇと! 仲間内も殆どやられちまって……流石にもう」


「チッ……仕方ねえかっ! 俺様の最強伝説の序章はこんなもんにしておいてやるぜ。おい逃げるぞ!」


 まさに巨漢に相応しい男がそこにいた。

 側から見たら悪事に酔いしれている狂気的なグループだが、その実力は類い稀ないものだった。

 その証拠のように周囲の傍観しているプレイヤーから度々『バケモノ』だの『断罪者殺し』などの不穏な言葉が飛び交っている。

 何にせよ、両者ともに今の俺とはかけ離れた次元の強さだということがひしひしと伝わってきた。


 すると、三人衆が街の外へと駆け出して行く。

 どうやら逃げ延びようとしているようで、彼らは一つの野次馬の人混みへと飛び込んでいった。

 高みの見物をしていたプレイヤーらは、急に来た火の粉を払うように一気に騒然とし始める。

 それを追うように断罪人達もプレイヤー間の隙を縫い、尋常ではないスピードで追跡し始めた。


「それにしてもアイツらちょこまかとウザってえなぁ! これならどうだっ! オラァッ!」


 巨漢の男が周囲のプレイヤーを力任せに薙ぎ倒し、その場を更に混乱させる。

 それから近くにいたプレイヤーをすれ違い様に掴み、道を切り開く盾にした。

 

「兄貴兄貴! もうそこまで奴ら来てますぜ! 混乱しているうちに飛びましょうぜ!」

「じゃあ、兄貴いつものアジトで落ち合うってことで!」


 そう言い残し転移を発動させようとしていた。

 コイツらの方に状況が転じていると思ったがその時ーーーー



「裁判の時よ! 【絶対法廷(ジャッジメント)ノ時】!」



 断罪人の一人がスキルを唱えた。

 すると身を乗り出し、半ば光の泡となって消えかけていた3人らが態勢を崩して地に転がった。

 おそらくこの様子だと行動を制限する束縛のスキルか何かなのだろう。


 ここへと引き戻された彼らは一瞬動揺するも、すぐ表情を戻し次の手に出た。


「あのOscarって野郎、一時的に法令(・・)なんか使い出しましたぜ……。自力で逃げ出すしかなさそうだ」

「安牌は別都市に移動することっすか? あの一番厄介な奴の権限下から出れば俺たちが有利っす。兄貴どうします?」


 流石にもうコレで終わりかと思ったらまだ勝機を見出しているようだった。

 問いかけられた巨漢の男は数秒考えた後、悪びた笑みを浮かべる。

 

「もう1匹奴らを落とそうじゃないか! なぁ? これ以上被害が出ればコイツらでも流石に一時的には収集がつかなくなる。少し癪だが最悪、アイツらの手を借りることもできる。あともう少しなんだ……もう少し踏ん張るぞ! ごらぁぁぁあああ!」


 そう言うと巨漢の男が果敢にも断罪人らに襲いかかった。

 それに続き両端に控えていた男ら2人も加勢に入る。



 あっという間に3vs4の総力戦が始まり、熾烈な戦いが繰り広げられていったのだった。





ブックマーク500突破ありがとうございます!

更新頻度いつもながら遅くなり申し訳ないです……

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