88話 手土産
続き
数日が経ち遂にクラン会合の日がやってきた。
ただ1つ言っておかないといけない近況報告がここ数日間であった。
それは運営から『1週間ほどの冒険禁止処分』を受けてしまったことだ……。
原因としては案の定、前回のタイムアタックダンジョンでのグレーゾーンギリギリの行為が該当したらしい。
どうやらそれに見事引っかかってしまったらしく、その期間中は冒険禁止処分、つまりマイホームと神域星間のみしか行き来できなかった。
つまりレベルステータス経験値共に数日間一切の進展がなかったのだ。
ただ処置としては1番最下級のもので殆ど痛手はない。
最悪、banもあり得るのでポジティブに考えてまだ随分とマシな方だった。
のだが、数日間何もすることができず病んでいる娘が今現在目の前にいる……。
「神様……仏様……なんで私にこんな辛い目遭わせる…………」
「まあ、アカウント凍結にされなかっただけ良かったな。次からはもっと慎重に行動しないとな」
数日前からずっとこんな具合でベットにうつ伏せ無気力になっている。
髪が乱れシーツがグチャグチャになって荒れたい放題になっていた。
と、いうのもペナルティーのせいでルシアーネはここ数日間ずっと部屋の中にいる。
外界に出てのレベル上げは彼女にとっての生き甲斐といっても過言ではない。
それを取り上げられた今、この世の終わりかというほどの気力のない目をしているのだ。
頭上には以前買った黒竜のぬいぐるみとダンジョンで手に入れた卵が横たわっている。
初めの頃はTVを見たり、それらを弄ったりして時間を潰していたらしい。
が、もうそれも十分で飽きたらしく今は無造作に散乱された状況となっている。
「まあ、今日はクラン会合なんだしちょっとは憂鬱な気分も切り替えられるだろ? 元気出そうぜ」
「うん……そういえばそうだった……」
それを聞いて若干の生気を取り戻したルシアーネを起き上がらせ髪を整える。
集合時間は確か23時丁度だった筈。
場所は神域星ということでほぼタイムラグなく行けるから特に遅れることもなく着けるだろう。
あとは…………。
「俺以外のクランメンバーとの初対面だ。海外の人らにどんな風習があるのかは分からないが、手土産でも買って行った方が良いかもな」
「お土産何買う? 銃買う?」
「それはルシアーネが欲しいものだろ……。手土産には茶菓子とか一般的なんだが、果たしてセカンドワールドにあるのか……? いや、でも街の通りにカフェもあったし大丈夫……な筈だよな」
「お菓子!? この前TVのCMで見た! 神域星の第八都市:エイスシープの大製菓! 巨大プリン有名! 一度行きたいと思ってた!」
途端のルシアーネの食いつきようが凄い……。
VRの世界の中に食べ物という概念があるのかと思ったが、よくよく考えてみると以前から気にすることなく回復薬を飲んでいた。
飲料があるなら食べ物も当然あるに決まっている。
あとは値段も気になるところだったが、緊急依頼討伐の報奨金がまだ残っていた筈だ。
別に大人数に買って行くわけでもないから多分大丈夫だろう。
「生憎、今はペナルティーで街に出れないし他の店もよく知らないからそこでいいか」
「うん! レッツゴー!!」
俺たちは装備を整え第八都市:エイトシープへ出発した。
第八都市:エイトシープへと到着した。
俺達は人々で賑わう広場の一端へと召喚された。
目の前には上空を覆う程、幹を四方に伸ばした巨大樹が存在している。
光が差し込まなく辺りは薄暗く年中無休の夜状態だが、空中に浮かぶ謎の球体型の光源のお陰で意外にも調和が取れている。
以前行った第七都市:セブンスホースの近未来的な街並みとは大分かけ離れていて、こちらはどちらかと言えばファンタジー世界のノスタルジックさを感じる片田舎というイメージだ。
「主見てー! 凄いのいっぱいあるー!! あっちにも……こっちにも!!」
「同じ神域星でも都市ごとによって趣が違うんだな……」
開口一番、ルシアーネが興奮した面持ちで目を輝かす。
建造物は巨大樹の根に沿うようにあり、この大自然の中に上手く溶け込んでいる。
世界中の老若男女オンラインプレイヤーらが行き交い、見たことのない壮大な世界が広がっていた。
「じゃあ時間も差し迫っていることだし向かおうか。プリンの有名な店? で、良いんだよな?」
「あってる!」
俺はルシアーネに再度確認し問いかける。
あとは自動ナビゲートでアナウンスして貰えるかどうかだが……。
ーー条件に該当する店舗を検索しています…………ーー
ーー徒歩圏内10分……『第八都市エイトシープ本店:CandyHouse』ーー
ーー目的地へのナビゲートを開始しますか?ーー
プリンで有名というかなり曖昧な情報だったが見つけ出してくれたようだ。
やはり神域星のアナウンスはかなり精度の良いものとなっている。
アクセスに関しても徒歩で10分ということで悪くない。
「お店あったー?」
「ああ、大丈夫そうだ。じゃあナビゲートを開始してくれ」
俺達はナビの指示に従い巨大樹中央へと向かって歩き始めた。
とんでもなく遅れました……。
スイマセン……。




