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65話 ファングッズ

続き


 モニターに映る速報を見終わった後、俺たちはしばらく立ち尽くしている。

 あの後も有益な情報の幾つかを手に入れることができた。


 そして、それに看過されたのか早速ルシアーネが口を開く。


「主ー! あの銃見にいく! 早く早く!」

「分かってる。分かってる。……確か最上階だっけ?」


 俺はルシアーネに手を引かれフロアを上がる。


 彼女の言う『あの銃』とは、今回のレイド戦で使われる銃器のことだ。

 各々のチームが開発した銃は、イベントの宣伝の為にこうした大型店に展示されているよう。

 

 かく言うAll–WEPONNにもあるらしく、ルシアーネも興奮が収まっていない。


 そして今まさに偶然にも近くにあるらしく、その展示室へと向かっているのだ。

 最上位プレイヤーがレイド戦の為に本気で(こしら)えたという武器。

 それが5チーム分、計5種類一同に揃っているという。

 俺とて、多少なりとも興味を惹かれるものだ。




 最上階に着いた。

 今まで以上に豪華なつくりをしたフロアに数人のプレイヤーがいるのが見える。

 目の前には、お目当ての銃が特製の厳重な透明ケースに展示され並んでいた。

 背景には、それぞれのクランタグが5種類掲げられて分かりやすくなっている。


「主ー! 見て見てー! フワフワしてる!」


 フワフワ?

 ルシアーネを見やるとサイドに構えていた売店にいる。

 手に黒いぬいぐるみみたいなものを持っているようで突ついて遊んでいた。

 銃より先にそっちに行くとは意外だな……。


「黒いドラゴンのぬいぐるみ。へぇ……【King Lord】のファングッズなのか」


 俺は付いていたタグのマークを見て言う。


 どうやら、銃以外にもこんなものがあるようだ。

 他にも、今回のレイド戦参加チームのグッズが色々と売られている。

 ポスター、コスチューム、応援フラグ諸々があるらしい。

 ゲームの中での経済効果も高そうだ。

 やはり一流クランとなると、アイドル商業すらもできてしまう。

 それこそ、ゲームの中で現実のお金が稼げるというのも納得せざるを得ない。


「主ー! この黒助買ってー!」

「黒助って……もう名前までつけたのか? 値段は金貨10枚で高いな! これで回復薬(ポーション)もう一本買えるぞ……」

「ダメ? ちゃんと育てる」

「育てるも何も生きてないし。それに買ったってどこに置くんだよ?」


 金貨10枚は買えなくもない。

 しかも、ルシアーネは日頃頑張ってくれている。

 むしろそれくらいならいいと思うが、その言葉が出る前に率直に疑問を抱いた。



「お客様。当売店で購入されました商品に関しましては、ご自身のマイホームで飾ることが可能です。娘さんもおっしゃていることですし、是非にどうぞご検討下さい」



 急に畏まった口調で声がかかる。

 視線をルシアーネから売店の方に向ける。

 すると、ここの店員らしきNPCの女性が立っていた。


「うおっ……ビックリした。いつからそこにいたんですか……。ってそれよりも、ここで購入したグッズって俺のマイホームに置いておけるんですか?」


「ええ、勿論です。基本的に購入された品物全てはマイホームに持ち帰り収納することが可能です。ところでお客様。その反応を伺いますにあまりルームデザインに固執しないお方で?」


「ルームデザイン? えっと、まあそんなこと初めて知ったので……」


「そうですか! そうですか! プレイヤー様の中にもご自身の外見だけは良くされて、安寧の地であるマイホームが不恰好であるお方が多くいらっしゃるんですよ! 一見、なんでも良さそうなところに見えて、そこが成されているか成されていないかで、プレイヤー様の格が違ってくるんですよね。お客様も良いお召し物をしているのに勿体ない! あと、一歩ですよ! 一歩! ……ということで当店の系列店『All–FURNITURE 』を是非、紹介させて頂きたく……」



 長いわ!

 ツッコミどころがたくさんありすぎて困る。


 まず、俺たちのことを親子だと思っている時点で間違っている。

 そんなに俺の顔が老けて見えるのか……。

 それに、沼すぎる営業トークの話展開に意味が分からない。

 俺はただマイホームに置けるのかどうなのかと聞いただけなのに、最終的に系列店を紹介するなど言い出した。

 

 ちょっと失礼なライン際を持ち合わせたユーモアととってつけたような礼儀さで誤魔化してくる辺り。

 さっきまでいたちょび髭店員みをどことなく感じてしまう。


 NPCの店員ってこんな調子なのか?

 と、疑問に思うが冒険者ギルドの受付嬢のような親切この上ないタイプもいる。

 この店の一種の芸風だと信じたい……。


「あっ……大丈夫ですので……」


 俺は結局、ぬいぐるみの支払いを勝手に済ませその場を離れることにした。

 こんなことは言いたくないが……。

 この店の店員と関わると面倒なことになりそうだ。



「じゃあ、嵩張(かさば)るし縫いぐるみはしまって…………」

「主、待つ! 黒衛門は私が世話する!」


 そう言うと、ルシアーネはぬいぐるみを両腕で抱えて満足気な笑みを浮かべる。

 早速改名したようなのだが……まあ、愛着が湧いていているようで良かった。


「じゃあ、最後に銃見て帰るとするか!」

「うん! とっておきは一番最後まで取っておくの!」

 

 時間は丁度、日を跨ごうとしているところ。

 明日は学校だし、もうこれ以上どこかに行くこともないだろう。


 俺は残り今日一日、ルシアーネの銃研究にとことん付き合ってやることにしたのだった。



次話は今日の正午過ぎ投稿予定です。

いつもながら日曜日の更新はできそうにありません。

すいません……。

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