62話 ショッピング
続き
ルシアーネの値段交渉の後、俺は金貨500枚を支払った。
俺は一新した装備一色に着替えて、脱・初期装備を果たす。
これで側から見ても一端のプレイヤーに見えるはずだ。
そしてルシアーネも新装備を着た。
彼女は武器判定だから装備の能力は引き継がない。
だが、雪から貰ったお下がりの白ローブも苛烈な戦闘のせいかボロボロだった。
そろそろ買い替え時かと思っていたが、なんてタイミングが良かったものだ。
「主ー! 見て見てー!」
「おぉ……似合っているな!」
ルシアーネがピョンピョンと飛び跳ねている。
膝上まで伸びている裾から機械化した右脚と白肌の左脚が見えるもの。
萌え袖に、兎耳の白パーカーを深く被り、にっこりと笑顔を浮かべていた。
満足しているようでなによりだ……。
対照的に隣に控えている黒スーツの店員の冷や汗が止まっていない。
随分と予想していたより値切られたようだった。
まあ、ちゃんとこの店で回復薬も買うから気を許して欲しいな……。
「お嬢様の方はお子様サイズになりますので、雪兎を模したパーカーとなっております。素材、装備自体は変わりませんが…………いかがでしょう?」
「主とお揃い、良い!」
それからしばらくして俺たちは次の買い物へと向かった。
ガラス張りのウィンドウケースに様々な色をした薬品が並べられている。
結局、あの黒スーツのセールスマンは『専門の店員がいますのでそちらの方にお声掛け下さい』と離反していった。
ルシアーネの睨みが効いている中、回復薬まで値段交渉されたらたまったものでなかったんだろう。
「…………なんか、あのオッサンに悪いことしちゃったな。クラン所属って本当に何処でも使えるんだな」
「殆どのお店はクランに宣伝、スポンサーになって貰ってる。それを無下に扱ったのはあっち」
どうやらクラン活動はこういった面にも影響を及ぼすようだ。
でもまさか、全身初期装備の男をそうだと思わなかったんだろう……。
「そういうことなら俺もルシアーネを見習わないとな。ルシアーネは博識で助かるな」
「フフン! 能力『学習』で日々勉強している。……もっと褒めてもいい」
ルシアーネが胸を張って教えてくれた。
まあ、マイホームにあるTVからも色々な情報が得られる。
いつも何かと頼りにしていたがそんなことがあったのか。
俺が一人前のプレイヤーと呼ばれる日はまだまだ遠そうだ……。
そうこうしていると、お目当ての魔力回復薬の整列している棚にたどり着いた。
体力回復薬の緑色。
魔力回復薬の青色。
知力回復薬の黄色。
武力回復薬の桃色。
と、種類毎に彩色されているようだった。
見ているだけでも随分と幻想的な光景に浸れる。
「流石に凄い量だな…………」
「いっぱい輝いてる……」
俺たちは圧巻されそんなことをボヤきながらもお手頃な価格のものを探す。
上位のものは1本、金貨数千枚から一番下で金貨数十枚とまで多岐にわたる。
回復薬は基本的ににどれも高いようだった。
液体の色の濃さによって区別されていて、他の回復薬もこれと同様のよう。
ちなみに緊急依頼中、ダダンから貰った同じ色の濃さの魔力回復薬。
それがなんと金貨200枚近くした……。
あの時は何も知らずに湯水の如く飲んでいられたが……。
それを知った今はまるで血の気が引いている。
ダダンの手作りだと言うし、それを考えるととんでもないことになりそうだ。
「残りの手持ちの金貨は500枚か……。流石に100枚は手元に残すとして400枚でなんとかやりくりしたいな……」
「主、お金ない?」
「多分、大丈夫だろう。それに忘れていたけど冒険者ギルド? で依頼を受ければまた手に入るんだし、装備を整えることの方が優先だ」
俺はそう決めて手頃な値段のものを選択していく。
金額の関係上、今回は知力回復薬と武力回復薬を買うことは諦めることにした。
結局、今までの戦闘で一番枯渇したのが体力と魔力だからだ。
今後はレベルを上げて強引に全回復する方法も取れなくなると思う。
必要経験値は今までの100倍以上は必要だ。
その分、ステータスもすでにそこらのモンスターには負けない筈だが念のため。
強敵と遭遇した時、いかに安全に対処できるかの鍵になってくる筈だ。
「こんなところかな……。ルシアーネもこれでいいかな?」
「うん! ばっちり!」
ルシアーネの賛同も得られたところ早速、支払いを済ませる。
この店にはレジの概念がないようで、ネットショッピングみたくワンクリックで済ませられる。
結局、魔力回復薬×15本と体力回復薬×5本の計20本を購入した。
あとはあの店員が豪語していた販売されている銃を眺めに行くだけだが……。
無責任にも、もう居なくなってしまっている。
仕方なく自分たちで探しに行こうか。
と、思っているとルシアーネが腕を引っ張ってきた。
「主、主!! あの画面見てー!!」
「……っと! ルシアーネ、いきなりどうしんたんだ?」
「いいから、早く早く!!」
俺はルシアーネが指差す店内のモニターを見る。
セカンドワールド内の攻略ニュースが流れているようで緊急速報が流れている。
『ーー2週間後に開催される【ハーレイ帝国】のレイド戦の対戦カードが決まりました……』
いつも読んでくださってありがとうございます!




