6話 モンスター狩り
続き
しばらく歩いていると人気のない森に着いた。
空を見上げると木々の隙間から木漏れ日がさしてくる。
耳を済ませると風の音と水のせせらぎが聞こえてもきた。
ゲームの世界なのにまるで現実の大自然の中にいるようだ。
“ガサッ……ゴソゴソゴソッ!”
奥の木の陰から物音が聞こえてきた。
「何かが来るぞ!?」
俺は視線を向け、腰にあるナイフを抜き身構える。
小枝を踏みしめる音がだんだんと大きくなってくる。
「主、後ろに下がって。私の初陣戦」
「俺はひとまず様子見だ。頼んだ!」
ルシアーネが俺に前に出てきて右腕を構えた。
先程のように腕の形がグニャりと変形し、銃器へと変貌を遂げる。
「軽機関銃、サブコンパクトウェポンを使用する。下がって」
「うおっ!? いつ見ても恐ろしいな……絶対にこっちに向けるなよ」
すると、ソレは突然視界に現れた。
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ゴブリン オス Lv.3【体力】350/350
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ゴブリンを見つめていると視界に簡素なステータスが表示された。
緑色の体表に黄色い濁った目玉。
背丈は1メートルもない。
その人間離れしたリアリティのある容姿に若干の畏怖を覚える。
『グガッガガガッ!!』
獲物を見つけたといったばかりかこちら側に突っ込んできた。
俺は先制に砂埃をゴブリンに与えた。
「うわ!? いきなり格上からかよ……」
「主、もう少し後ろに下がっていて」
「ああ……」
俺は彼女の指示に有無を言わず従う。
どうやら、ゲームNPCということもあり戦闘には慣れているようだ。
「装填完了。3……2……1」
“ババババババババババ!!”
森中に銃撃音が鳴り響く。
射撃されたゴブリンはなす術なくその餌食にされ光の泡となり消えていった。
ーー経験値100取得しましたーー
ーーレベルが1上昇しましたーー
突如としてアナウンスが流れる。
今起きた光景に俺は放心状態だったがそれを聞いて意識を取り戻した。
「俺は倒していないのにレベルは上がるのか……。早速ステータスの方を確認と」
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バンドウカイセイ 男性 Lv.2
【種族】人間
【ジョブ】双対の戦士
【加護】『双対の加護』『戦士の加護』
【体力】650/650
【魔力】300/300
【知力】500/500
【武力】600/600
【経験値】0/200
【スキル】『autoレベリング』『獅子奮迅』
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「結構ステータスが上がっているな。体力と武力の成長速度が速くて、魔力と知力が50ずつレベル1から上昇しているのか」
俺はまじまじと眺めてそれを確認した。
「ルシアーネ、思っていた以上の強さだ」
「私の銃の弾丸数は主の魔力が糧になっている。次からは3連バーストの省エネでいく」
なるほどな……。
どこから実弾を取り出しているのか分からなかった。
が、まさか俺の魔力を媒介にしているとはな……。
ちなみに、今魔力量が満タンなのはレベルが上昇して回復したからだろう。
「なんとなく要領は分かった。次のモンスターは俺のナイフでやらせてくれ」
「了解した」
それからしばらく探索しているとゴブリンのトリオに遭遇した。
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ゴブリン オス Lv.3【体力】350/350
ゴブリン メス Lv.4【体力】400/400
ゴブリン オス Lv.4【体力】400/400
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「ちょっと3匹同時には手が負えないな……。レベル3と4の方を一匹ずつ先に倒して、一匹残せるか?」
「問題ない」
すると、あっという間にルシアーネは銃弾を放ち倒してしまった。
ーー経験値200取得しましたーー
ーーレベルが1上昇しましたーー
「だったら俺も! 覚悟しろ野良ゴブリン!」
俺はナイフを構え走り出す。
レベル上昇によるステータスのアップによって現実よりも素早く走ることができる。
地面を踏みしめ体で風をきって、2匹を倒され逃げ惑うゴブリンを追従する。
「オラァァ! 喰らいやがれぇぇぇぇ」
首元にめがけてナイフを振り落とす。
スパッという気の抜けた音と共にゴブリンは光の泡になり始めた。
すると、アナウンスが再び鳴る。
ーー経験値100取得しましたーー
「よっしゃぁぁぁぁ! やってやったぞ!!」
「主、見事!」
初めてのこの達成感に思わず歓喜の遠吠えをあげる。
隣のルシアーネもしてやったり顔で腕を組み、満足気に褒めてくれた。
「ルシアーネ、もしかしたら俺とお前2人で狩り続けたら普通のプレイヤーより2倍の速度で成長できるんじゃないか……?」
俺とルシアーネ、合わせて一人。
今初めてステータスにあった『双対』の意味を理解した。
すると、色々な可能性を見出すことができるようになる。
俺は興奮した口調でそう告げた。
「2人で頑張ればもっと強くなる」
「そうか。だったらドンドンモンスターを狩りまくるぞ!」
「オー!」
俺とルシアーネは二人にして一つ。
人気のない森の中、俺達は高らかにそう宣言して拳を空に掲げた。
是非よろしくお願いします!