57話 家族会議
続き
セカンドワールドをやり始めて初の週末がきた。
正午過ぎまで咲の道場でバイトをして、家に帰ってきた。
叔母の一件で、咲の親父さんに頼みバイトの時間を増やして貰おうと思った。
だが、今のところ無理にする必要も無くなったのだ。
そう、記憶にも新しいあのジャイアントメテオタートルの一件だ。
緊急依頼を達成してクランポイントを10000Pを得ることができた。
セカンドワールドでは、1P=10円の変換ができる。
つまり、あの一件でいきなり俺の懐に10万円近くの大金が舞い込んできたのだ。
まず目を疑ったが、二度見して確認したところ確かにそう。
俺はどうやら重要イベントである緊急依頼に参加して、達成したからクランポイントが入ってきたらしい。
どこからそんなお金が出てきたのか?
と、いうとニューエッジ社からだった。
実際に今日、銀行に寄って本当に引き出せるかどうか確認したらできた。
詳細としては、希少性の高い緊急依頼での戦闘映像のメディアへの提供。
及びゲーム活性化の貢献などと書いてあった。
確かに、King Lordと白老のクランはよくメディアで目にするようになった。
曰く、クラン所属者にはこういった報道の映像を飾られることがあるらしい。
つまり、一応所属している俺にも情報料のおこぼれがあったという訳だ。
スカーレットやイザベラには言われなかった。
が、こんな一面もあるということを今になって認識させられた。
もう少し踏み止まって話を聞かせて貰えればよかったかもしれない……。
とにかく、問題の金銭事情はあの日のうちになんとか持ち直すことができた。
好きな時にポイントを還元して、銀行に現金が送金されるというシステム。
このお陰で、今後は叔母に横から金をもぎ取られることも無くなるだろう。
念には念をと思い、セカンドワールドのアカウントを乗っ取られることを懸念したがそれもない。
何せ、世界最高のシステムAIが管理している。
他人に自身のプレイヤーを操られることがなんてないからだ。
そして、通帳類に関しても基本的に俺が手元で管理しておけば、ますます問題はないだろう。
「元の貯金していた金額との差額を考えれば、まだまだだが…………こんな感じだな」
そんな事情を雪に話した。
あれからどこか暗い表情だったが、話し終えると笑顔になり涙を浮かべた。
それから胸元に飛び込んで抱きついてきた。
「お兄ぢゃん…………っ!」
「……そんなユキが思い詰める必要なかったんだぞ?」
俺は背中をさすり宥める。
自分ではこんなこと言っていても、はっきり言ってはそれは無理だろうと思う。
こんなまだ小学生に芳しくない家庭の経財を突きつけられたんだ。
さっきまで若干浮かれていたが、俺が不甲斐ないせいでこんな大事にまで発展したんだ。
もし、この一件がなかったらと考えると息が詰まりそうになる……。
「違うよ……一番はお兄ちゃんの今までが全部消えちゃったんだよっ? だって、だってお兄ちゃんが一生懸命、毎日働いて貯めたお金なんだよっ? ユキは何もできなくて……悔しくて悔しくて…………」
すると、雪が辿々しく言葉を紡いで伝える。
そう思えばこの数年間周囲が遊び呆ける中、働き続けた。
毎日毎日が憂鬱の日々で、楽しいことなんて1つもなかった。
以前の俺ならもう、自暴自棄になって雪さえおいてどこかに消えたくなっていたかもしれない。
だが、あの日偶然にセカンドワールドに出会って変わったような気がする。
一日一日が待ち遠しくなったし、知らず知らずのうちにたくさんの人と出会った。
今まで外から見ていることしかできなかった。
だが、今は自ら踏み込んで歩み出せている。
そんなことらも今の俺に影響を与えてくれたのかもしれない。
俺は強く抱き寄せて、雪が思っていたことを洗いざらい聞いた。
しばらくして雪が泣き止んだ。
それから兄妹水入らずの2人だけで、セカンドワールドをやるつもりだったのだがーーーー
「お兄ちゃんがレベル一番上なんだってね。サクお姉ちゃんもショウお兄ちゃんも一夜にしてレベル3000超えになって、ユキ1人だけまだ1000レベルないんだよ! だから、今日は3人でお兄ちゃんに追いつけるようにレベル上げをすることになったんだ。だからね、今日はぜったいにお兄ちゃんレベル上げちゃダメだからね! ユキちゃんだけ足手纏いになっちゃ嫌だからぜったいだよ!」
雪が涙を拭き取りニコリと笑って言った。
それからVRゴーグルをかけ横になる。
「今日は一日、お兄ちゃんはルーちゃんと一緒にお買い物ね! 金貨も手に入ったなら全身防具も買えるからね。ちゃんとお店で買うんだよ!!」
「大丈夫大丈夫。分かってるよ」
俺がそう言い残すと雪は一足先にログインしてしまった。
俺もそれに続いて敷布団の上に横たわり、ゴーグルをかける。
「こう思えば、これが初めてモンスターと戦わない日になるのか……」
そんなことを呟き、俺もまた意識を手放した。
祝【PV数】100000達成!!
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