【閑話】ダダンとルシアーネ①
本編ではないです。
まだ昼下がりの頃。
アワタスト王国の街道の一端で俺は武具を路上に並べていた。
それらは全て俺の手製のアイテム。
布地の上に無造作に置かれてはいるが、分かる人には分かる一級品だ。
「……ったく。何が銀貨一枚で剣を売り渡せだ……物の価値も分かっていない奴らめ。頭沸いているのか?」
俺はもう幾度目か、数えるのも飽きる冷やかしに辟易としていた。
なんで全くあのクラマスは、ここで露店でも開いてみろなんて言ったのか……。
アイツを疑う訳じゃないが、全くただの無駄な時間を潰すばかりだ。
そんな小言をぐちぐちと呟き、店仕舞いをしようとしていた頃。
店の前で座り込んで、こちらの武器をじっと眺める幼女がいた。
俺は最初、困惑した。
確かにセカンドワールドはこれくらいの歳の子はザラにいる。
それはこのゲームは、国籍問わず老若男女の交流を謳った、かつてないものだと理解しているからだ。
だが、目の前にいる白髪の翡翠色をした少女はどこか違う。
その様子は、アルビノに近しくどこか神秘的な容姿。
二度見してしまうほど純白で清廉な姿は、どこか儚げで空気に溶け込んでしまいそうだった。
よく見てみると、右腕と右脚が剥き出しのサイボーグのようになっている。
随分と金のかかったキャラクターデザインのプレイヤーだなとも思った。
だが、どちらかといえば、この醸し出される雰囲気は【鍛冶師】として感じるものの方に近かったのだ。
適当に脅して追い払うこともできたが、俄然興味が湧いた。
別にここにいても大した客足は見込めないものだから、暇つぶしにでも付き合って貰おうと思ったのだ。
「おい、嬢ちゃん…………なんか気になるものでもあるか?」
「…………?」
問いかけてみるが無垢な表情を崩さない。
ちょっと口調が強張り過ぎたかとも思った。
何せ俺は周りからも口々に言われるほどの強面のオッサンだからだ。
だが少女はそれにも介さず、俺が作った武器の1つを指差す。
「これと同じ種類の武器。もっとある?」
少女は銃剣をじっと眺めて呟いた。
その武器は帝国のレイド戦の為に作った試作品の一つ。
銃口の下に刃が付いたもので、即座に近距離戦にも対応することができる代物。
諸事情によって登用することができなくなってしまい、余らせ販売していた物だった。
「あるにはあるが、嬢ちゃんのその体格には似合わないんじゃないか?」
俺は気遣ってそう言った。
その少女の身長は1メートルちょっとしかなく、あまりにも不釣り合いだったからだ。
この世界では、現実よりも身体能力は強化されているが、それでも適正はある。
体格に合わせた軽機関銃でなく、自ら長物を選ぶとは疑問に思う。
この少女のジョブが例え【銃士】であったとしても、俺は【鍛冶師】の性として口を挟まずには居られなかった。
「私は使わない。どんな銃があるか勉強しにきた」
「…………勉強しにきた?」
思わず疑問が声に出た。
現実の銃でなく、ゲームの中の創作銃の勉強するとは一体どういう風の吹き回しだ?
勉強のために俺の武器を参考にしてくれるのは、この上ない誉れだが。
いささか奇妙なものだ。
すると、少女はあの珍妙な右腕を見せてきた。
それからガチャガチャと音を立てると共に、腕が変形していくではないか!?
「…………一体、嬢ちゃんの腕どうしちまったんだよ!?」
俺は拍子抜けした。
腕がガチャガチャと変わっていき、最終的に銃の形を成したのだ。
俺が過去に作った武器にも、これに近しい作用をするものもあるが……。
悔しいが、ここまでの高精度のものを作れる気がしない。
鍛治師としての探究心と稚拙な嫉妬が心の中で織り混ざる。
「私は双対のルシアーネ。主の相棒。今日は新しい武器の模索にきたの!」
俺の反応に満足したのか、少女は胸を張って自己紹介をする。
この少女の名前がルシアーネということは分かった。
だが、双対? 主? 相棒? 新武器の模索?
「えっと……嬢ちゃんは一体なんなんだ? 種族はアンドロイド? いや……でもそんなのは居ないよな……」
困惑し反応に困ってしまう。
すると、そのルシアーネという嬢ちゃんは首を傾げる。
「私は主の戦闘用NPC。種族……? 特性は【機巧少女】だよ?」
戦闘用NPC…………。
ああ、プレイヤーにくっついているあの従魔のことか?
それにしても、随分と高知能で人間に似たもんだな。
それにしても特性……?
特性は武器につく種類区分の一つだが……戦闘用のNPCの武器と言ったところか?
自分で言ってみたが、訳が分からなすぎる。
ひとまず、その主というプレイヤーに話を聞いてみたいところだな。
「それで、嬢ちゃんの主は今どこにいるんだ?」
「主は今ログインしてない」
…………は?
ログインしていないだと……?
だったらこの嬢ちゃんが知らぬ間に勝手に動いているということだが?
「嬢ちゃん、本当にNPCなんだよなぁ……?」
「うん。それより銃の話したい」
痺れを切らしたのか嬢ちゃんが話を切った。
まあ、俺も本人のいない間でリテラシーに欠けることを口走っちまった……。
俺は、武具の商人もとい鍛治師としてここに立っているんだ。
余計な詮索はいらねえ。
銃器の紹介をして欲しいだけらしいし、ここはいっちょ罪滅ぼしとして付き合ってやるか!
※主人公が入手していた筈の『混沌の加護』『封・¿?¿? ¿?¿? ¿?¿?』のステータス表記がすっかり抜けていました。大変申し訳ないです……。




