50話 ジャイアントメテオタートル戦⑨
続き
「うおぉぉぉぉぉ!?」
俺は真っ逆さまに落ちていっている。
銀姫が甲羅を突き破ってできた風穴。
そう、俺は今まさに甲羅と中身の肉の中間地点の空間を落ち続けていたのだ。
軽く数えても数十秒経ったが、まだ底は見えてこない。
銀姫の姿ももう随分と先に行って見えないし、いきなり不安になってきた。
…………不安?
あれ?
もしかしてこのまま落ち続けていれば、いずれ死ぬんじゃないか?
ふとそんな疑問が頭の中をよぎった。
おそらく俺は数分後には内部に辿りつき着地できる筈だ。
…………着地?
俺は果たして無事に着地できるのだろうか?
こんな高さからの落下衝撃、普通助かる筈ないよな?
銀姫は超人だから軽いノリで言ったのかも知れないが……。
素人の俺がその枠組みに入るかというと……。
流石に銀姫が助けて貰えるか?
…………いや、無理そうだな。
俺は自分が今いかに危機に瀕しているのかを悟った。
なら、早速動かなければならない。
減速しよう。
俺は屍刀を鞘から抜き、刃先を崖側に当てる。
この崖もおそらくジャイアントメテオタートルの甲羅。
刃の切れ味が良すぎて、一向に抵抗がかかる気配がないがやらないよりはマシだ。
体を張って無理矢理でも落下速度を緩めるのだ。
腕に負荷がかかり過ぎて体力の数値が地味に減り続けている。
俺は【獅子奮迅】までも発動し、二重で体力が減り続ける中、必死に生にしがみついた。
着地した。
減速しているとはいえ、衝撃と共にダメージを受ける。
今までの分を含めても体力の半分を持っていかれた。
俺は辺りを確認すると隣で立って待っている銀姫を見つけた。
日の光が入ってこず真っ暗だったが、彼女の銀鎧が発光しよく見える。
「体力物凄く減ったんですけど……先に言っておいてくださいよ」
「これくらいの高さからの衝撃なら、体力の1割も持っていかれない筈だが……」
「それは銀姫さんだからでしょう! 何なんですかその天然な嫌味は……」
俺は彼女の性格を再認識させられた。
こんな思いするくらいだったら、黙って他の人と組んでおけばよかった……。
まあ、ここで文句を垂れても仕方がない。
俺は切り替えて彼女に尋ねる。
「それでどちらに向かうんですか? この暗さじゃ、どっちに何があるかなんて分かりませんけど……」
「ひとまず、右腕からだ。クラマスが左脚を落としたからな。対照的なバランスを取る為にもそこからがいいだろう」
すると銀姫が歩き出した。
どうやら右腕がどこにあるかは分かっている様子。
バランスというのは他のプレイヤーのことを考えてのことだろう。
彼らは今、甲羅の上で戦っている。
そして俺たちが考えもなしに次の部位を破壊して重心をズラし、回転軌道にでもなったら大変だからだ。
それを言うと、千眼が左脚を破壊した時点で既にあった懸念なのだが、なんとか保っていたな。
一般的に安全策を考えてみても、次破壊するのは右腕で妥当なんだろう。
俺としては巨大モンスターにもなると、こうして倒す順番が必要になってくる事実に驚きだ。
銀騎と俺は右脚に向かって一緒に歩いている。
すると、ふと彼女は止まって指を口に当てて俺を静止させた。
俺も物音を立てず、片手に刀を持った状態で指示に従う。
「囲まれている……」
彼女がポツリと声を漏らした。
俺にはそんな気配を感じなかったが、暗闇の中を目を凝らして確認した。
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メテオタートル オス Lv.500【体力】55555/55555
メテオタートル メス Lv.500【体力】55555/55555
メテオタートル オス Lv.500【体力】55555/55555
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「メテオタートルの番の群れだな……」
「こ、これ……何百体いるんですか…………?」
俺と銀姫は一歩下がり間をとる。
いつの間にか四方八方を取り囲まれていて退路を塞がれていた。
まさか、親体の中に子体を潜ませているとはな……。
「銀姫さんはコレを分かっていたんですか?」
「いや、私には分からなかった。だが、緊急依頼の中にはこうしたハプニングもたまにある。倒したモンスターがアンデッドとして復活したりなんかもな。今回の場合は、ジャイアントメテオタートルを倒した後にコイツらが放出される予定だったんだろう」
銀姫が剣と盾の両方を構えながら説明してくれた。
「クラマスが大々的な攻撃をやめたのもコレが原因だろう。こんな数のモンスターが空中から王都に降り注ぐのは危険すぎるからな」
まさか、そこまで千眼がよんでいたとは……。
流石にそこまで持ち上げるかと思ったが、話している本人は至って真面目。
また、ダダンとの会話の中にもそれを思わせるものがいくつかあった。
やはり、その名の千眼は伊達じゃないようだ。
「右腕までの進行路を防がれましたけど……このまま強行突破しますか?」
「駄目だ。ここで殲滅するぞ。上の有象無象共がくるまでにここを片付ける。少数での討伐の方が効率がいい」
すると銀姫が突然俺の右手を握ってきた。
「……え?」
「【銀河の栄典】、力不足なお前に力を分け与えてやった。いちいち声に出させるな」
「あ、ありがとうございます……」
俺がお礼を言うとそっぽを向いて背中合わせになる。
それから武器先をメテオタートルに合わせて構える。
「私を失望させてくれるなよ……」
「はい、遅れをとる気はないので後ろは任せて下さい!」
「ふん…………なら行くぞっ!」
「はい!」
俺と銀姫はメテオタートルの集団へと突っ込んでいく。
こうして異例のレベル差コンビによる無双劇が始まったのだった……。
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