5話 王都探索
ジャンル別の日刊ランキング79位。
朝起きたら、ポイントを結構頂いていてワンチャン載っているかなと思ったらありました。
俺と雪、そして俺専用の戦闘NPCであるルシアーネは王都を歩いている。
ルシアーネに関してはさすがに外套一枚とはいかない。
雪にもう使わないという古着を貰いそれを着させている。
「へぇー。田舎の王国といえど、ちゃんと人はいるんだな」
「そうだよ。って言っても基本的に初心者か戦闘を楽しまない層ばかりだけどね。中級者になると大体、帝国って呼ばれる1つ格の高い地域に行くし、上級者にもなると一応、地域に所属しているだけでワールド中のダンジョンを転々としてる感じだね」
確かこのセカンドワールドはなんでもありの世界だったな。
一応、戦闘を主軸においたゲームだ。
だが他にも様々なエンターテイメントやイベントが開かれていると聞く。
老若男女楽しむことができてその種類は、現実世界物、ファンタジー物、融合物と多岐にわたる。
悪い言い方にはなるが、ニューエッジがライバル会社からエンターテイメント業界を、このカリスマ性と巨大な資本金によって殴り殺し隷属化させてきた結果だ。
「主、私は早く戦闘をしたい」
ファンタジー感のある王都に没頭しているとルシアーネがそう進言してきた。
「戦いたいって言ってもな……ルシアーネは武器なんかもってないだろう?」
「私にはこの右腕と右脚がある」
俺が適当に宥めようとすると、ルシアーネが俺の前に腕を突き出してきた。
すると、機械化されていた右腕がグニョグニョと変形し威圧感のある銃となった。
「重機関銃に酷似させてみた。もちろん実弾発射可能」
「……ひぃっ!? 分かったからやめろ。今すぐ戻せ。怖いわ」
「ルシアーネちゃん……カッコいい!!」
人通りの多い王都の面前で世界屈指の殺戮兵器が晒される。
俺は一瞬たじろぐが、周囲の目に入る前に急いで下げさせた。
隣で雪が目を輝かせているが無視だ。
「ああ、分かったよ。近くに初心者でも狩れるダンジョンってユキは知っていたりするか?」
「レベル1だったらまだダンジョンに行かなくてもいいと思う。王都を少し出た郊外に弱いモンスターが出る森があるの。初めは皆そこでレベルを上げていくんだよ」
なるほどな。
セカンドワールドはてっきりダンジョンでモンスターを狩るもの。
なんて思っていたが、案外そうでもないらしい。
ログイン初日だ。
ここはゆっくりと知識を得ながら進めて行こう。
「周りのプレイヤーを見ていると、いろんな武器や防具を持っているんだな。剣や槍に盾、銃なんかも持ったりして。ユキに関しても杖を持っていて魔法を使ったりするんだろ? 皆、どこでそんなもの調達するんだ?」
戦闘に行くと分かったが、周りと比べて俺は圧倒的に装備の質が足りていない。
今の状態としては、薄着の上下に腰にナイフを差しているだけだ。
「普通の人はログイン時にそれぞれのジョブに合わせた装備が、初期段階のマイルームで運営からプレゼントされるんだけどね。あとは頑張ってダンジョンに潜って宝箱から武器を当てる。お金を貯めて武器屋で買うって言う正当法もあるけど。その場合は結構手間も時間もかかる。お金持ちの人達は重課金をして無理矢理購入したりもするけど」
「マジか……まず後者はないな。前者に関してみれば俺、もしかして支給品もらい損ねたのか? なんか無駄に加護2つついてるのがいけなかったのかな?」
どうやら俺には地道な武器屋しかないようだ。
生憎、持ち合わせている金は一銭もない。
ゲームでも現実でも貧しいとはな……。
俺が若干の鬱に打ちひしがれていると何かが横腹をツンツンと突いている。
「主、私がいる。安心して」
そういえばルシアーネがいたな。
あまりにも現実の人間である俺たちと溶け込んでいたから忘れていた。
もしかして、彼女自身が運営から俺への支給品であったりするのか?
「ルシアーネ、期待しているぞ。お前が主力戦力となりそうだ。俺がマシな武器を手に入れるまでは、このナイフでモンスターを小突くくらいのことしかできない。世話をかけるな」
「私が主を守る」
ルシアーネが右腕を見てニヒルな笑みを浮かべる。
幼女ということもありその所作はいささか可愛らしいものだが。
隣を歩く雪も小動物を見るかのような目でルシアーネを見て満面の笑みだ。
「じゃあ、ユキはここまでかな。初級者の狩場を私が狩り尽くしても旨味もないし、ただの迷惑行為になっちゃうからね」
「そうか。残念だがここまでなんだな」
少し名残惜しいがそういうことなら仕方がない。
俺が頑張ってレベルを上げて雪に追いつけばいい話だ。
「この王都の門を抜けた先が目的地だよ。お兄ちゃんもルシアーネちゃんも頑張ってきてね! ログアウトするのもステータスを開いた時みたいにすればできるからねー。あと、忘れていたけどくれぐれも死なないように。後々面倒なことになるからー」
「分かった。じゃあ行ってくる!」
雪は門の前で俺達を見送る。
「よし、早速レベル上げだ! まだ夜の10時だ。あと2時間弱はできると思うからよろしく頼むぞ!」
「任せて。モンスターは蹂躙&経験値ガポガポ。最高!」
俺はどこか人間味のあるNPCのルシアーネと共に、モンスターの潜む森へと向かった。
よろしくお願いします!