49話 ジャイアントメテオタートル戦⑧
一応グロ注意
俺は銀姫と所定の位置についた。
彼女は背中に背負っていた盾と剣を抜き構える。
俺もそれに続き屍刀を抜刀し準備を整えた。
「それで銀姫さん……作戦みたいなものってあるんですか?」
俺は目の前にある甲羅の一角を眺めて尋ねる。
「ない。強いて言うなら……レベルでのゴリ押しだ」
「いやでも俺、そんな高くないんで戦術的な何かを……」
俺が質問するが自力の一点張りだ。
まさか、あの難ある性格に脳筋ときたか。
周囲を見てみると本格的な戦略の助言などされている。
「師匠、どうやって戦う?」
「魔力の消費は痛いしせっかく上から直接攻撃できるからな。銃剣に変えて剣先で突いてくれれば大丈夫だ」
「これでいい?」
「ああ、俺が大槌で攻撃を通しやすいよう甲羅を砕いていく。それに続いて嬢ちゃんも頼むぜ」
「うん!」
「おらぁぁ! 俺の斧刃でも意外に壊せるもんだなっ!」
「皆で落ちていく巨大亀の上で採掘なんてシュールだよねぇ。あっ……そこ切り込みはもう20度右斜めからだよぉ。これでダメージ率がさっきの2.3%上昇する筈だからねぇ」
「マジか……武器の振り方によってもダメージ量が変わるのか!?」
「そうだねぇ。一手、一手を最善化することはとっても大事なことなんだよぉ」
「狼の獣人の利点は高い身体能力と機動力だ。攻撃は浅くてもいいからもっと手数を増やして」
「なるほど。こんな……感じですかっ!」
「いいね。でも、まだ攻撃が拳中心になりがちだ。隙を作らないように蹴りも組み合わせて」
「分かりました! ……まだまだっ!!」
他3人は適切な助言を受けメキメキと成長している。
俺はそれを横目にこの武器初となる攻撃を与える。
刀を右手で持ち、それを支えるかのように刀身に軽く左手を添える。
狙いは甲羅の一角。
左斜め上から右斜め下へと紙を割くかのように振り落とす。
「はああぁぁ!!」
“シュインッ…………ドカーン!”
岩山に一筋の綺麗な切れ込みが入る。
それが時間差とともに滑り落ちるかのように真っ二つになった。
「どうですか銀姫さん? 今の俺の攻撃は? 何か改善点とかあったりしますか?」
「改善点しかない。ただ、別にお前1人の頑張りでどうなることもない。黙って適当に振っていろ」
俺が助言を求めるが冷たくあしらわれてしまった。
確かにこの中で一番俺のレベルは低いだろうし、使えないかも知れないが……。
それでももう少し気にかけて欲しい。
また、あの他人行儀な態度に逆戻りしてしまったようだ。
俺は反骨精神で銀姫を軽く煽る。
「だったら、銀姫さんも何か見せーーーー」
「【破斬】!!」
“ビリビリっ…………バリバリガッシャァァァァンっ!!”
「…………は?」
俺が口を開いた瞬間に攻撃を放った銀姫。
俺が呆気に取られていると次第に砂埃が落ちてくる。
そして、目の前に映る光景はーーーー
「甲羅が破れている……? 中の肉にも損傷が入って……」
「ダメージ概算……100万ちょっと。まあ及第点といったところか」
その言葉通りジャイアントメテオタートルの甲羅は一部全壊していたのだ。
それは全て今、銀姫が繰り出した攻撃によるもの。
あの分厚い甲羅を貫通し中の肉の組織まで空洞化しているのが分かった。
「銀姫さん……あなた一体何者なんですか?」
「世界プレイヤーランキング103位、銀姫とは私のことだ」
クランマスターの千眼が14位でサブマスターの銀姫が……103位?
ということは、今まさに目の前で世界トップ100レベルの力を見たのだ。
それも目と鼻の先のすぐ間近で……。
……物凄く強い人じゃないか。
だったら、なんでまたあんなにメンバーに辛辣な態度を取られているんだ?
あの性格であっても1人や2人くらい理解者があってもいい。
クランのトップ3でしかも、超高位ランカー。
敬われることはあっても蔑ろにされることはないんじゃないか?
それとも、上位の世界には暗黙の了解的な妬みがあったりするのか?
俺は疑問に思いつい質問した。
「えっと……なんで他のクランメンバーさん達に嫌がられているんですか?」
「私は嫌われてなどいない……筈だ。い、いきなりどうしたんだ?」
すると、ビクッと反応しこちらを振り返る。
少し動揺し目が泳いでいる。
また、あの少し面倒くさい性格になりそうだ。
「どちらかと言えば、避けられている……?」
「さ、避けられてもいない! 今はどちらかといえばそうだが……昔は1人、1人いたんだ。まだ私が認めた仲のいい奴が!」
一応、自覚はあるようだ。
これ以上、人様の事情に踏み込むのも悪いが……この人全部話してくれそう。
世界ランカーの話はなかなか聞くことができない。
話してくれる限り聞いておきたい。
「……認めたって何を?」
「このクランを立ち上げる最初期の3人の頃から私はいたんだが、その入団テストでの私との対戦だ」
入団テスト……?
ああ、クランに入る為の選別というわけか。
俺の場合が特殊事例で、普通は篩にかけるためにこんなこともあるんだろう。
「私の戦績は全勝、厳密にいえば1引き分けなんだが、その時戦ったのが私が認めた唯一無二の奴だ」
全勝とはそれはまた凄いな……。
あんな攻撃を見た後だから言えるが、あれを引き分けにもっていくのもまた。
もしかしてだがーーーー
「私の認めた奴は随分前に抜けてしまったが……。今のクランはクラマス、サブマスのもう1人いるが……あとは糞軟弱な雑魚97人だけだ。全く……気苦労するがこれもまた私の仕事さ」
…………自業自得。
なんで嫌われているのか分かった気がする。
あの面倒な性格に……“コレ”。
皆の辛辣過ぎる態度の理由がよく分かった。
まあ、流石に他人事情に踏み込み過ぎた。
銀姫の掛け声によって現実に引き戻される。
「よし、中に乗り込むぞ!」
「中に……乗り込む?」
「当たり前だろ。生物は内側から攻め落としたほうが効率がいい。肉を裂いて残った右腕、左腕、右脚、心臓の攻略だ」
俺が覗き込むのは崖穴のような甲羅の傷跡。
中は暗くて底が見えないが、モンスターだからか動悸しているような気がする。
かなり怖いが、俺は勇気を振り絞り前に出た。
バンジージャンプのいわば安全装置のないバージョン。
つまりそれはただの投身自殺と言うが……。
ゲームの中だが、その光景はVRMMOクオリティー。
現実とそう大差はない……。
「私が今回の戦果の第一貢献者になろうではないか? 青年は私の付き人。あまりものをくれてやる。行くぞ!!」
すると、銀姫が崖穴に踏み込んで落ちていく。
怖いものなしの勇ましい行動力。
俺は一瞬呆気に取られるが……。
「…………ああ、やってやるよ! やってやろうじゃないか?」
自身を鼓舞し崖先へと立つ。
深呼吸を数回置いて、暗闇を底を覗いた。
屍刀をひとまず納刀し、右腕に大事に抱えて息を呑む。
そして、空中へと一歩踏み出した。
「いっけぇぇぇぇぇ! うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺は内部へと遂に足を進めた…………。
次話更新は明日の0時過ぎです。
どうぞよろしくお願いします!




