47話 ジャイアントメテオタートル戦⑥
続き
“ピカッーーーーヴァアアアアアアアアアアンっっつ!!!!”
体を揺らす風圧が襲いかかってきた。
空気を振動させるその衝撃は、目の前の光景を一変させたのだ。
ジャイアントメテオタートルを窺い見ると確かにそう。
上空で今まさに起きた大爆発によって奴の左脚が破壊されたのだ。
その損傷は外見からだけですらもよく分かる。
丁度、左脚を隠していると思わしき部分から光の泡が出てきている。
また、少なからず甲羅の方もダメージを負ったよう。
崩れ落ちてくるその小隕石は爆発によって熱せられマグマと化していた。
『……………………』
皆の中で長い沈黙が続く。
まさか1人のプレイヤーだけの手でコレが行われたのだ。
俺達は勿論、クランメンバーのダダンですら拍子抜けしていた。
状況を整理するのに手間取った俺はふと声を漏らす。
「た、たかがスキル1つで倒している……。す、凄過ぎる……」
俺達が今まで苦戦していた敵の一角をこうもあっさりと。
すると、思わぬ指摘がはいった。
「お前はまだ敬愛なる私達のクランマスターの真価は理解できていない」
振り向くと上空から黒竜に乗って降りてくる人影をみた。
クールな銀鎧を見に纏い、背中には盾と剣を背負う。
赤髪のロングヘアに青色の瞳をした女。
どこかの物語に出てきそうな際立った容姿には目を見張るものがあった。
少しぶっきらぼうな物言いだが一体誰なんだ?
すると、ダダンがそれに口を開いた。
「【銀姫】、お前の無意識に人を見下す癖はどうにかなんないのか?」
「……はて? なんのことだダダン? ならばお前がそこの青年に教えてやるといい」
少し呆れた様子のダダン。
それをナチュラルに否定する銀姫と呼ばれる女は俺への説明を促した。
「悪いな……コイツはウチのクランの2人いるサブマスターの1人なんだ」
「はぁ……そんな凄い方だったんですか」
俺は再度その銀姫をみて脱帽した。
サブマスターということは恐らく世界ランキング7位クランのトップ3というわけだ。
俺の知る世界とはまた別格なんだろう。
「物分かりのいい奴だな。ダダン、私の世界ランクも教えてやれ」
「おい、なんで俺がお前の下っ端のようになっているんだ? 俺は伝書鳩か何かか?」
「…………教えてやれ」
「黙れこの糞コミュ障! ……ったくなんで、こんなに俺のクランは手のかかるような奴らなんだよ!」
なんかこの人、何故ダダン経由で何かと物申してくるのかと思っていた。
それがまさかの極度の人見知りだったのか。
見た目からしたらかなりのアグレッシブさを感じるが……。
今もなお一回も俺達とは目を合わしてくれない。
するとダダンは銀姫に苦言するのをやめ、先の出来事について教えてくれた。
「今しがたした攻撃はスキルじゃなくて、ただの魔力消費による魔法攻撃なんだ。いわば剣士で言うただ剣を振り落とすその一動作。クラマスは魔術師派生のジョブの、たかが通常攻撃で単体撃破したって訳さ」
……千眼は一度もスキルを口にしていなかったのか。
ただ皆に合図するかのように『爆ぜろ』の一言。
てっきり何かの強力な攻撃魔法のスキルの一つかと思っていたが。
まさか俺達がここで今、銃弾を放つことと同意義の行為で戦局を転換させてしまうとは……。
このサブクランマスター銀姫の言う通りだ。
俺はこの状況を何一つ理解できていなかったのかもしれない。
「カイセイ、お前はまだ知らないかもしれないが、火、水、風、土、雷の五属性魔法は魔術師派生のジョブであれば誰でも使えるんだ」
「つまり、千眼さんはその中でも火魔法を使ったということか?」
「そういうことになるぜ……まあ、あれは規格外すぎるがな……」
「嘘だろ…………強すぎだろ……」
困惑している俺に翔が噛み砕いて説明してくれた。
俺だけが分かっていなかったようで少し恥ずかしいがためになった。
俺達がその光景に感心していると千眼が寄ってきた。
「ほらほらぁ! 攻撃の手を休めないでぇ。まだ半分も削り切れていないんだからねぇ!」
「千眼、次はどうする? さすがに今ので魔力は切れただろう?」
「そうだねぇ……回復してもいいけどぉ甲羅はぁちょっと厄介なんだよなぁ……」
気の抜けたような口調でダダンと会話する。
あれを連発すれば勝てるのではないか?
と思っていたが、あまり気乗りしない様子。
「じゃあどうするんだ? 千眼の二つ名を持つお前には、こんな事態軽く見通せるんだろうが、俺達にはしっかり説明して貰えないと分からないぞ」
のらりくらりとした態度にまたダダンの堪忍袋がもたなさそうだ。
周囲にいると異様に緊張感が失せてしまう。
それがいいのか悪いのかは分からないが、この性格にはかなり難がありそうだ。
「千眼、私から進言させてもらーーーー」
「……ぁあ! そうだよぉ! ひとまずここにいる皆んなに上から攻撃して貰おうよぉ!」
銀姫の進言を遮り、千眼は思い立ったように声をあげる。
一方の彼女はというと、引っ込みどころがつかなくなりまさか赤面してしまっていた。
「ならば、私が先導をしーーーー」
「よぉし! このクラマスの僕、直々に君達を上に連れて行こうぅ!」
間が悪いのか、千眼がわざとやっているのか……?
ダダンと喋る時の口調とは違っている。
彼女の声が小さくなっていき羞恥心に悶えていたのだ。
いわゆる『なに1人で呟いちゃってるの現象』が起きていた。
ダダンの言うコミュ障。
銀姫の言う敬愛なるクランマスターからの天然無視。
この2つがあいまざり、今にも泣き出しそうだ。
俺の中でのさっきまでの誰も寄り付かせないような無粋なイメージが崩れていく……。
ものすごくキリが悪いです。
すいません……。




