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41話 国王

続き

 

 俺達は戦闘をしていた広場にいる。

 なんとか咲のスキルで生き延び、今に至る。


「…………一段落ついたはいいけど、これからまだ緊急依頼が残っているんだよな」

「そうだね……。早くログアウトしちゃいたいけど、ここまで来てペナルティーを喰らうのもなんかイヤだね」


 あの鞭女の件が一応片付いて、やって肩の荷が下ろせる。

 なんて思っていたが、あともう一仕事あったんだった……。

 この王都を戦闘区域に変貌させた大元(おおもと)

 この国中のプレイヤーと冒険者に発令された半強制的なゲームイベントだ。


 苦しいことに今の王都の戦力はごく僅か。

 元々控えていたプレイヤーらも先の騒動によって倒れ、復帰出来なくなってしまっていた。


 ほとんど人気のなくなってしまった街。

 必然的に残った俺達でなんとか対応しなくてはならなかった。


「一応、全員回復しているしなんーーーー」




“バゴォォォォンっ!!!!”




 俺が口を開こうとした瞬間、“ナニカ”が俺の横を通り過ぎていった。

 強大な風を巻き起こし“ソレ”が王城の城壁へとぶつかった。


 恐ろしい程馴染みのある重々しい雰囲気。

 過去のトラウマを掻き立てるように砂埃の中から“ソレ”は現れた。


「痛い痛い痛い痛い痛い! あの糞ジジィィィィィ! よくも私の、私の両腕をぉぉぉおおお!」


 鬼のような形相をした巨体。

 身の毛もよだつようなオーラを纏いしはあのオーク化した鞭女だった。


「……っ!? おい、さっき出て行ったって言ったよな」

「嘘だろ……また戻ってきたのかよ。もうやめてくれよな全く!」

「僕の魔力も空だし……もう2度目はないよ……」

「怖い……ヤダ」


 俺達は口々に文句を立てる。

 もう皆、一度痛い目を見たのか萎縮し泣き寝入りそうになっていた。

 また見つかったら倒されてしまう。

 それを考えただけで今にも逃げ出したくなる気分だった。



 が、幸いなことに鞭女は気付いていない様子だった。

 むしろ、俺達になんか眼中になく、鞭女の口から出てくるのは誰かへの苛立ちの言葉だった。


「あの老衰ジジィィィィィ!! 調子に乗りやーーーー」


 鞭女が暴言を吐いていると急に彼女の両膝がなくなった。

 さっきの両腕と合わせて、四肢が全部なくなっている。

 ゴロゴロと体を地面に這わせ、喚き声をあげている。


 俺達は思わぬ状況に仰天し、ただ見ていることしかできない。


「アアアアアアアアア!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ! 私倒されちゃう! ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!」


 途端に怯え始め、許しを乞うように泣きつき始めた。

 頭のイッタ大の大人の泣き顔。

 まるで生まれたての赤ん坊のようにぐずっている。


「もうコレで4回目なのぉぉおおおおお! 次、デスペナルティーを受けたらもうただの平民ステータスになっちゃうのおおおおお! お願い許して! なんでもするのぉぉ! 貴方のクランメンバー潰しちゃったのも反省してるし………ねぇぇええええええ!」


 すると、俺達の背後から気配を消すように誰かがやってきた。

 渋い抹茶色の和服を着た白髪のお爺さん。

 手には黒色の木刀を携え、俺達の前へと出ていき鞭女の元に向かっていく。


「おいたが過ぎるぞオークの方よ。混乱に乗じて、ワシの街も半壊させウチのメンツの(つら)も潰してくれて……どう責任取ってくれるのか?」


 漏れ出す怒りを必死に堪えるよう淡々と喋る。

 あの温厚な老人からみえる冷たい眼光。

 鞭女は必死に顎を動かして、その場から逃げ出そうとしていた。


「ヤダヤダヤダ! 止めて止めて止めて止めて止めて止めて!!」

「問答無用……!」


 すると、老人が木刀を構える。

 時間が止まっているようにゆっくりと歩を進めはじめた。

 まるで静の空間にいるよう。


「【一閃】」


 スキルを唱えるといつの間に鞭女は切られていた。

 俺達の目に残るのは光の泡となって溶け出していく有り様だけ。

 最後は喚くこともなく、どこか遠くを見るような目をして消えていった。



「「「「凄い……」」」」


 思わず4人とも声が出た。

 まるで芸術かと思うほどの一方的な戦い。

 俺達が苦労していた相手をものともせず倒し切ってしまった。


 あの立ち振る舞い。

 確か、あの人はーーーー


 夢中になり呆然とする俺達にその老人は声をかけてきた。

 先程までの冷徹さとは違い柔らかな表情。

 どうやら、俺達に何か聞きたいことがあるようだった。


「すいませんの。ワシの街で随分とお見苦しいものを……貴方達がクランメンバーと戦ってくれたという4人で?」

「はい、おそらくそうです。あの……あなたは確か今日、冒険者ギルドでお見受けした……」

「そういえばあのお方でしたか! いやはや、なんという巡り合わせか」


 その老人。

 まさか、冒険者ギルドで顔を合わせたあのお爺さんだった。

 あの鞭女に指差された縁仲。

 この老人の言うようになんとも奇妙な偶然の再会だった。


「失礼。自己紹介が遅れておりましたの。先程の輩に貴方方と共闘していたクラン。そのリーダーの【白老】と仮名付けしておる者です」

「さっきボスって呼ばれていたあの人が……ってことは?」

「そうだよ! この国、アワタスト王国の【国王】だよ! 凄い人だね……」

「おいおい……! 二つ名【白老】。国内ランキング入りしてるプレイヤーじゃねぇか! 初めて生で見たぜ……」


 この人がかの有名なこの国の国王、兼クランリーダー、兼国内ランカーらしい。

 咲と翔が興奮した様子で語る。


「メディア公開一切なしの名前しか知られていない謎のプレイヤー。感動モンだぜコレは!」

「おじいちゃん、めっちゃ強かった」


 ルシアーネもまたその肩書きを聞き、キラキラした目を向ける。

 あの鞭女を圧倒する戦闘から見ても、その名に間違いはなさそうだ。




 それから少し打ち解けていると、遂にアナウンスが入る。




ーー緊急依頼:大型モンスターの撃退ーー


ーー『巨山浮城:ジャイアントメテオタートル』ーー




 すると、視界が急に暗くなった。

 陽の光が消え王都全体が真っ黒の世界に見舞われる。


「…………!? いきなり暗くなった!?」

「なんだよ? なんだよ? 暗闇系のモンスターでも発生するのか?」

「ん!?」


 俺とルシアーネ、翔は困惑して街の中を警戒した。

 荒れ果てて街に、夜とは違った暗闇が訪れる。


「ジャイアントメテオタートル……一体どこから来るんだ……?」

「カイ君達、どうやら街中からではないようだよ……」

「だったらどこに…………?」


 俺の背中におんぶされていた咲が声をかけた。

 すると、俺の質問には白老が答えてくれた。



「どうやら…………()からですな……」

「空……?」


 あの最強な老人が困り果てた様子。

 俺は言われた通り空を見上げてみる。




 巨山浮城ジャイアントメテオタートル。

 この王都を覆い尽くすような巨大な隕石が火の羽を帯び、今まさに落下してきている最中だった。

読んで頂きありがとうございます!

これからも是非よろしくお願いします!

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