40話 起死回生
続き
視界が真っ白になる。
体に力が入らず身動きも取れない状況だった。
この白い空間には俺だけだ。
目を動かして辺りを見渡してみるがその通りだった。
(ゲームオーバー…………倒れたのか?)
と、ふと心の中で思った。
あの鞭女のスキルの乱発によって俺達は全滅させられてしまったのだ。
俺はあれから一度も刀を振ることなく、あの攻撃によって打ち沈められた。
追い詰めていたと思っていたが、まさか逆に追い詰められていた。
そして今の有様だ……。
あの後、咲と翔とルシアーネの3人と一緒に光の泡となったが……。
すると、一気に体が空中に引き寄せられた。
頭に釣り糸が垂らされているようで天に引き上げられ召していく。
まるで、劇場の操り人形のように為されるがままだ。
それから視界に閃光が走り、再び意識を手放した。
目を開ける。
咲と翔の2人が立っていた。
そして、目に映るのはさっきまで戦っていた王都の広場。
俺は困惑し2人に話しかけた。
「王都にいる……? なんでだ? 倒れたよな……?」
「どうやら……僕のスキル【起死回生】が発動したようだよ。ストーカー達から逃げている時に前もって発動していたのがね」
すると拍子抜けした翔が力の抜けた声を出す。
翔も俺と同じ体験をしたようで、腑に落ちない様子だ。
「サク……驚かせんなよ……。俺達に黙っておいて……分かってるなら先に言っておけよ」
「仕方がないだろ……僕だって初めてだったんだ。このスキルが発動するのも、死に直面するのも」
咲もまた、冷や汗をかいていたようだ。
てっきり、あの咲のことだから全て想定のうちかと思っていたが生憎違ったらしい。
俺も言いたいことがあったが、そうなら仕方がない。
「ならいいんだけど。まあ、いいや……サク。本当に助かったよ」
「本当に僕だって実際に体験したのはこれが初めてだからね? 一応、これだって皆んなの為に結構頑張ったんだからね」
咲が俺達の疑って止まなそうな態度に不服する。
それから翔と咲が何やら言い争っていたが、俺は別のことで集中していた。
俺の隣に光の粒子が集まってきていた。
単に言えば、倒された後の光の泡となっていく真逆の現象。
徐々に集まり形を形成していき、遂に1人の少女の姿となった。
「おっ! ルシアーネも戻ってきてるじゃないか!」
「主ーーー!」
俺達の復活と同時にルシアーネもまた再召喚されたのだ。
特に調子も悪くなさそうな様子。
俺に気付き、瞬く間に抱きつきダイブを決めた。
「主? 大丈夫?」
「サクのおかげでな……何とかなったよ。そっちも大丈夫だよな?」
「うん! 魔力も全回復したからコッチに来た!」
どうやらルシアーネは魔力さえ回復すれば、マイホームに一時戦線離脱しても今みたいに戻って来れるようだ。
例えば、モンスターとの戦闘中魔力が切れて彼女が居なくなったとする。
でも、レベルが上がり回復さえすれば必然的に合流できるという実用的なケースがある。
「あぁ……僕、皆んなを復活させる為に知力と魔力全部使っちゃったんだよな? 感謝して欲しいな? 誰かの肩貸して欲しいな?」
すると、咲から何か訴えかけるようなジト目を向けられた。
口を尖らせて何か言いたげな表情。
ルシアーネはそれに気付いたのかそれに反応した。
「今日だけ……特別に主の背中を貸してあげる」
ピョンと飛び降り、咲と交代した。
俺に拒否権はなく、すぐに後ろから体重がのたれかかった。
まあ、俺だって死なずに今ここにいられることは感謝している。
これくらいで恩を返せるなら、何の問題もない。
「あぁ……カイ君の背中大っきいぃ……」
咲が肩の上で惚けている。
顔をスリスリと俺の首に這わせているせいで、頬にケモ耳が擦れこそばゆい。
ーーーーが、そんなことよりもまず気にすることがある。
「それより! あのオーク化した女は何処に行ったんだ!? もう広場にはいないようだが……」
あの問題の元凶。
驚きのせいで、つい忘れてしまっていた。
が、今になって大変なことに気付いた。
すると、意識を先に取り戻していた咲が答える。
「全員、食い潰して満足したのか街の外に消えて行っちゃったよ。今は何処にいるか分からない」
何処かに行ってしまった……?
俺は辺りをよく観察してみる。
俺達の倒れた後の王都は更に酷い有様になっていた。
一緒に戦ってくれていたプレイヤーの姿はもうない。
戦闘の影響で建物がいくつも半壊させられていて見るも無残だ。
だが、物音もやけに静か。
何故か今は、呑気に会話できるほどあの重苦しい威圧感も感じない。
咲が言うには、あのお騒がせ鞭女はもう出ていったらしい。
確かに、王都郊外の森へ続く方向にデカい風穴の獣道のようなものができている。
建物すら気にすることなく壊しながら進んでいったのだろう。
「一緒に戦っていたプレイヤー達とは合流できたのか?」
「それは無理だぜ……。一度デスペナルティーを喰らうと一週間は戻って来れない。ログインしてもマイホームに強制隔離。残念だがあの人らとは当分の間、顔すら合わすことができねぇんだ」
翔の口から出てきたのはセカンドワールドの重々しいペナルティーだった。
擬似世界とはいえ一度死んでいる。
ステータスの減衰に一週間のインターバル。
ゲームの世界ながらも当然、死という言葉の意味に相応しいものを受けるようだ。
「俺達が巻き込んだ事件なのに…………本当にあの人達には顔を合わせられないな」
俺はその意味を理解し、しきりに呟いた。
「ちょっと調子乗ってたかもしれない。一緒に戦ってくれてた人に感謝しなきゃな……」
「そうだな……。アイツらには申し訳ないことしちまったな」
「倒れた……みんな。ごめんなさい」
異質な程、人の居ない荒れ果てた王都の街。
俺に続き3人も感謝と謝罪の意を唱えたのだった…………。
そろそろ一区切りつけようと思い章題を付けてみました。
明日も同じくらいの時間帯に投稿します。
是非よろしくお願いします!




