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39話 オークの女❸

続き


『おおおおおおおおおお!』


 プレイヤーらが雄叫びをあげる。

 空気を揺らすような声量。

 今までの負け戦のようなムードが一瞬にして吹き飛んだ。


 クラン内で陣形が組み直され、加護による相互バフがなされていく。

 大剣を振りかざすプレイヤーの様子を見ていた者達は、新しい武器に取り替えていった。

 

 すると、クランの紋章の入った旗が掲げられた。

 辺り一体の空気がが淡い金色の光に包まれていっている。


「なんだあの旗は……?」

「あれはウチのクランの魔道具さ。専用アイテムだから所属していない君達には効果がないが、私達にとっては強力なものだ。緊急依頼用に控えていたんだけど仕方がない。一定時間、ステータスの伸びを倍にしてくれる秘密兵器なのさ」


 周囲にいたプレイヤーが教えてくれた。

 国王のクランに入っているメンバーは皆、神々しいオーラを纏っている。

 全てあの掲げられた魔道具の旗の恩恵のようだ。



 すると、発破をかけたリーダー格のプレイヤーが動いた。

 大声を張り上げ数十人の大部隊に円滑に指示を出していく。


「各パーティーは10秒ごとに攻撃をローテーション! 私達の瞬間最高火力の連撃でヤツを押し切るんだ!!」

『了解!』




 すると、再び総力戦が始まった。

 俺達は裏方に徹して、彼らの必死な戦闘を見守る。

 

「【フレイムバースト】!!」

「【ストームカッター】!!」

「【オフェンスバフ】!!」

「【アーマーブレイク】!!」

「【メンタルブレイク】!!」



「【アクアランス】!!」

「【ステルスロック】!!」

「【スピードバフ】!!」

「【エリアハイヒール】!!」

「【オフェンスデバフ】!!」



「【カオスポイズン】!!」

「【アイスフリード】!!」

「【ディフェンスバフ】!!」

「【ライトアーチ】!!」

「【サイレンスアタック】!!」


     ・

     ・

     ・



 50人ほどによるスキルの連発が繰り広げられていく。

 さすがの鞭女でも無傷とはいかず節々に傷を負っていく。

 途中からは双方の息遣いも荒くなるも、見事な具合に作戦は進んでいた。








 が、ーーーー









「小賢しいわぁぁぁぁ! 【オールデバフ】【相打ち】【広域化】!!!」


 終始やられぱなしだった鞭女が遂に動く。

 怒涛の速さでスキルを3連発発動した。


 【オールデバフ】によって体の重心感覚が狂い膝から崩れ落ちる。

 【相打ち】によって鞭女が受けていた今までの攻撃が身に注いできた。

 挙句、【広域化】のスキルによって相対していた俺達全員が対象者だ。



『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁぁ!』



 そこら中から呻き声が上がる。

 俺たちの体にはドンドンと傷跡ができていった。

 体力、魔力、知力の数値が削れていき光の泡となっていくプレイヤーが増えてくる。


「化け物めがぁぁぁぁ!」

「クッソ! 治癒術師、回復早く!」

「ダメです! 支援ジョブ全員ダウンしています……」

「最悪だ……ここまで死なずに来たのに……」

「チートすぎだろ……あの能力……」


 この状況にあの逞しかったプレイヤーの均衡も崩れ去った。

 仲間達が光の泡となり退場していく。

 まるでこの世の終わりかというほどの光の泡に溢れていた。

 神秘的な地獄絵図ーーーソレがそこにはあった……。




 俺は困惑した目で3人の姿を探す。


「サク……ショウ……ルシアーネどこだ?」


 ステータス数値が減り続けているせいで動きが鈍くなってくる。

 すると、3人固まってへたり込んでいる姿を見つけた。


「カイ君! こっちに来て!」


 咲が俺に気付き声をかけてくる。

 俺は倒れ込むように駆け込んだ。


「一体どうなっているんだ……一緒に戦っていた人ら次々に消えていって……」

「全部あの女のスキルのせいだよ……ここにいる皆んな術中にハマって」

「今は俺の【騎士】の加護とスキルで侵食スピードを抑えられているが……いずれ俺達も……なるぞ」


 咲が状況を説明してくれた。

 今は翔のジョブの加護とスキルによって何とか耐えられているよう。

 だから、低レベルの俺でも耐えられていたのか……。


 同じく、パーティーに騎士がいる者達もどうにかなっているようだ。

 ただ、それ以外のパーティーに関してはほとんどが消えてしまっている。

 戦力も半数以下になってしまい、俺達含めパーティー数は3つほどしか残っていない。


「騎士ジョブ様様だな……。何とかなる方法は……?」

「ないことは無いかもしれないけど……解除条件が分からないからね。やれるだけやってみてるけど……どうなるのかは」


 咲が肩をすくめて答える。

 すると、ルシアーネが口を開いた。


「主、魔力が空になる。悔しいけど私、ここまーーーー」


 ルシアーネが言い切る前に光の泡となった。

 改めて見るとステータスの数値がもうほんの少しのところまできていた。

 魔力は0になり、体力、武力、知力共に尽き果てようとしている。


 それらが俺達の終わりを物語っていた。


「サク、ショウ……俺ももう限界みたいだ……」

「俺もだぜ……」

「僕も数十秒と変わらずかな……」


 俺達は大の字になって空を見上げた。

 もう武力が尽き果て体が動かなくなっている。

 あとは体力が尽き果てるのをただ待つだけだった……。


 周囲には一連の暴動によって荒れた王都の姿がある。

 石造りの補装は砕け、石垣となり魔法を使っていた影響で荒地となっている。

 そこらに火の手が回り、数時間前まで綺麗だった青空が黒煙に(まみ)れ変貌している。


 奥には今もなお破壊を続けるオーク化した鞭女の姿が。

 断末魔のようなものが耳に入ってくる。

 生き残ったパーティーの息の根を自らの手で潰していっているようだった。


「まさか……ここまでの化け物と遭遇するとはね」

「なんか俺、今日初めてカイセイの気持ち分かったぜ……初ログインからここまでこんなこと続きだったのか」

「いや、毎日が驚きの更新だぞ……。今日はあの加護も発動していないし」


 俺は感慨深い面持ちで言った。

 今までギリギリの綱渡りをしてきて何とか必死に生き延びてきた。

 だが、今回は本当の本当にダメそうだ。


「また……会おう」




 咲の最後の言葉を皮切りにーーーー

 俺達は光の泡となり空へと消えていった。

次話からは投稿時間を夜の7時から10時頃に変えてみます。

是非よろしくお願いします!

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