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37話 オークの女①

続き


 物語に出てくるような化け物。

 その場にいた誰もが恐怖で戦慄していた。


 咲を捕らえていた男の力が抜けた。

 咲は変貌する鞭女を横目に俺達の元へと戻ってくる。


「「「「…………」」」」


 俺達4人はおもむろにその醜悪な体を見上げた。

 

 鬼の形相。

 軽く5メートルを超える巨体。

 怒りの末にブチブチに引き裂かれた海竜の鞭。

 足元ののめり込んだ地面。


 全てが俺たちの恐怖心を駆り立てていた。

 するとストーカーのうちの1人が口を開く。


「姉さん!? それはヤバイって言うてるやろ! 【狂気化】に種族解放……。完全に【オーガ】になってもうてるやん!」

「指図するなぁぁぁ!」

「ふごォォォォっ!?」


 口を聞いた男が鞭女の一振りでダウンした。

 壁面にぶつかり嗚咽した後、立ち上がることなく光の泡となって消えていく。


「おい、この馬鹿!! 自我失ってんじゃねぇぇかよ! 死んじまーーーー」

「ウルセェぇぇぇぇ!」

「ふがぁぁぁぁぁぁ!?」


 今度は踏みつけられてダウンした。

 四肢がもげて痛々しい様子。

 瞬く間にこっちも光の泡と化した。


 すると、残された最後の1人が前に出た。

 確か【鑑定士】とかって言われていた男。

 この事件の根源を辿れば、コイツが咲のジョブを解き明かしたのが原因だ。


「2人共……レディーに対しての態度がなっていませンネ。彼女はオーガではなくオグレス。自我を失っているんじゃなくて、これが本心ダッ! 貴方の心の闇、この我輩が止めてみせヨウっ!」


 すると、男が腰からステッキのようなものを取り出した。

 襟を正し、俺達の正面へと躍り出た。

 魔法を発動させようとしているのか、巨大な魔法盤が女の足元に出現した。


「強引な勧誘となったことをお許しくだサイっ! 我輩達には新しいメンバーを誘う前にまだするべきことがアッタっ!」


 俺達に向かって急に頭を下げ謝罪してきた。

 

 周囲から風が湧き立ち、鞭女を囲い込む。

 風圧に押されて、俺達はその場に留まることだけで精一杯だ。

 

「貴方達はお逃げなサイっ! 我輩が彼女を止めておきマスっ!」

「おい、アンタ…………」

「僕たちにはどうしようもできない。あの人の言う通り、この場から離れよう!」

「そうだな……。行こう!」

「うん!」




 俺達はその場から一斉に逃げ去るように走り出す。

 目の前には混雑した王都の街道。

 空中には緊急依頼に備え武器を構えるプレイヤー達もいた。


 俺たちの背後では正に今から戦闘の狼煙が上がろうとしていた。

 肌がビリビリとひりつく様な振動。


 俺は思わず後ろを向いた。


「貴方の全力……我輩がそれを更にゆく全力で受け止めてみせヨウっ! 【封ーーーー」

「小賢しいぃぃぃわ!」

「……………………ヒャン」

 

 ゴミのように投げ捨てられた。

 血反吐を吐き、空中を舞いながら光となって消えていく。

 十分過ぎるほどの噛ませ犬だった……。


「おい……オッサンが……」

「あの鞭女、こっちに向かって走ってきているぞ!!」




 それから瞬く間に3人を殺した女が現れた。

 関係のないプレイヤーの数十人を踏みつけにし、街中に降臨した。

 

 大多数のプレイヤー達が恐怖に(いろど)られ叫び声をあげる。



「キャァァァ!! 化け物よぉぉ!」


「ヒィイィ!! こっちを見るなぁ! どっか行けよ!!」


「やだぁよ……ペナルティーでもなんでもいいからログアウトしよう……もう!」


「俺達だって無理だよ……ステータス減衰? 知ったこっちゃねえ!」


「さっきも見ただろ? プレイヤーが何人も……どうせ死ぬなら見えないところで……」


「何が……☆×1の王国だ! 詐欺運営、詐欺国家め!」



 恐れを成したプレイヤー達が一気に王都から消えていく。

 どうやら皆んなログアウトし始めたらしい。

 聞いた話だと戦闘中、緊急依頼中にログアウトするとペナルティーを喰らう。

 もの凄く鬼畜な仕様だ。

 だが、背に腹は変えられなかったらしい。

 

 ①戦闘を開始したのは自己責任。

 ②緊急依頼は発令されるレベルの難易度の高い国にいる自己責任。


 セカンドワールドでは一定の放任が為されている。

 それ故にこの自由度の高い疑似世界が全世界の人々に好まれている。


 だが、今回は前者はもちろん後者すら成り立たない。

 緊急依頼は☆の数の多い地域ほど発令されやすい。

 が、少ないというから絶対ないという訳ではないのだ。

 限りなく確率が低いというだけで起こり得る。

 

 そして、今正にその悪運くじを引いてしまったというわけだ。




 空中にいた戦闘に備えていたプレイヤーも鞭女に気づいたようだ。

 武器を構え直し、何か会話をしている。

 俺達は何もすることが出来ず、呆然と助けの目を向けた。



「あのオークが緊急依頼の内容か?」


「違うだろ……多分。モンスターが出現するのは依頼内容が出てからだ」


「だったらアレはプレイヤーか? 間違いなくモンスターにしか見えないが……」


「アレは【巨人】だな……。限りなくオークに近い巨人だ」


「知り合いの巨人の女の子はスタイル良い奴だったぜ」


「他のスキルも使っているからじゃないか? キモいのは副作用の影響だ」


「さっさと肉削ぎ落とそうぜ? な?」


「呑気なことを言っているな! 目の前でプレイヤーが殺されたんだぞ!」


「どっちにせよ無力化だな……依頼中に邪魔されたらたまったものじゃない」



 さすが緊急依頼に立ち向かうプレイヤーだ。

 他の者達と面持ちが違う。

 が、腹を立てた鞭女のひと睨みで萎縮してしまう。


「全員……ブッコロス……ブッコロス……ブッコロス…………」


 


 この場の全員を巻き込んだ大乱闘が今、始まろうとしていた……。

今日は夜にもう1話更新予定。

久しぶりの3話/日、是非よろしくお願いします!

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