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35話 ストーカー①

続き


 俺とルシアーネは2人の元に戻ってきた。

 だが何か様子がおかしい。

 

 咲と翔を取り巻く有象無象。

 荒々しい装備をした見知らぬ大人達に囲まれていた。

 特に異様なほど咲に粘着しているようだった。


 俺達は一瞬立ち止まり様子をうかがって見る。


 

「なあなあ……そこの女? ワイら【地ー雷】ちゅうパーティーやってんねん。それなりに有名でなあ。今回の帝国のレイド戦にもお呼ばれしったちゅう訳やけどパーティー入れや! 今なら穏便に済ませられるで?」


「確かにこの女性【開拓者】デスっ! 吾輩の【鑑定士】の目に狂いはありまセンっ!」


「結構いい女じゃねえか? ハハっ!」


「この()を入れたら、もっと私の力が輝いちゃうわぁ!」



 どうやらしつこく勧誘を受けているようだ。

 男3人に女が1人。

 外国人らのパーティーのようで柄のいい人らとは言い難い。


 咲は気にも止めない様子。

 翔もまた周囲を睨んで警戒していた。



「さっきから何度も言っているよね? 入らないって」


「ワイらこれからレイド戦で経験値ガポガポ稼ぎ時なんや! こんな野良成長速成持ちおったら、そらタダで見逃すわけないやろ?」


「お前ら調子乗ってるんじゃねぇぞ! 咲は俺達のパーティーメンバーだ!」


「僕ちゃん? 君はもっと自分とあったパーティーを選ぶべきよ。例えば……ほらそこの子らとお爺ちゃんとかね?」



 女がちょうど立っていた俺らを指差す。

 お爺ちゃん?

 その言葉に戸惑ったが次の瞬間には分かった。


「いやはや、近頃の若い衆は皆ヤンチャですなぁ……。これで私の方は失礼……」

「えっ……いつの間に。あっ……はい」


 どうやら俺達以外にも野次馬がいたようだ。

 渋い抹茶色の和服を着て腰には木刀を携えている。

 歳はいっているが、俺達と同じプレイヤーのようだ。

 

 俺に軽く会釈した後。すぐに立ち去って行く。

 上下初期装備の俺ならまだしも、あの人は意外に強そうだった。

 あの人もまたとんだ被害を受けたな……。



 すると遂に取り巻きの1人が咲の肩に触れた。


 

「だから離れろって言っているだろうがよ!!」


「雑魚は黙っていなサイっ! 1000レベルも満たない騎士カス如きが話しかけルナっ!」


「仲間がコレだとたかが知れるぜ! むしろこの女が可哀想だ!」


「僕の仲間に何を言っているんだ! 失礼だろ! 謝れ!」



 随分と言いたい放題なようだ。

 いつもは温厚な咲までもがキレ出した。

 

 どこの世界にもマナーのなっていない奴はいるもんだな。

 俺だって親友がバカにされるのも甚だしい。


「主、アイツら倒す?」

「手は出すなよ。……早く戻ってここを出て行こう」


 俺達はその取り巻きの間を縫って合流する。

 2人共、馬鹿相手に大分疲弊しているようでため息を吐いていた。



「待たせてすまんな、厄介な奴らに絡まれているようだな……」


「!? カイ君やっと来た! もう相手にしてられないよ」


「コイツら無視して少し離れようぜ! たまに覗き屋にああやって絡まれるんだ。ジョブとレベルしか分からないが、今みたいに脅迫紛いのスカウトをしてくるんだ。カイセイ、お前も稀なもん持っているからな。これからは気をつけろよ」




 俺達が出て行こうとする。


 するとなんと、後ろからストーキングしてきた。

 全く、本当に気色の悪い奴らだ……。

 路地を抜け、人気のない細道を通っていても付いてきている。



「はぁぁ……本当に面倒くさいな。こういう時、ユキちゃんがいたら一瞬で転移して撒けるんだけどな……」


「強気な態度……。カイセイ達絶対に先に手を出すなよ? 悔しいが格上だ。厳罰ペナルティーを恐れてアイツらはまだ行動して来ないが、敵対行為をとっちまったら容赦なく来るからな……」



 2人がコソッと耳打ちして教えてくれた。

 俺はルシアーネに目をやり手を出さないようにさせる。


「このまま飽きてもらうまで街中を逃げ回ろう。ログアウトしてもいいけど、王都内だったら再ログインした時に同じところからリスタートするんだ。こういう輩は己が力になるんだったら粘着力が凄くてずっと見張っている。3人にはすまないけど、ちょっと付き合って貰うよ」



 俺たちは曲がり角を曲がったところで走り出した。

 俺はルシアーネを担いで2人の背中を追う。

 

 セカンドワールドにはスタミナという概念がない。

 つまり、いつまで走っていても疲れない。

 と、言うわけだが生憎ストーカー共もそうだ。


「アイツらはな、相手が諦める地の底まで追いかけてくるんだ。相手が折れて自らパーティーに入るように言ってくるまで。あんな姑息な奴らの為に割けるパーティー枠なんてないのになっ! おらっ!」


 すると、翔がルシアーネを取り上げて担いでくれた。

 背中に背負った斧を腰に差し替え固定している。


「ん?」


 ルシアーネが声を漏らし困惑する。

 俺もいきなり背中が楽になり、アイツらに誘拐でもされたのかと思った。


「カイセイ、お嬢。いきなりすまないな! 本気で逃げなきゃいけないようだ。俺は騎士の加護で味方の守護から荷持ちまで思うがままだ。レベルも俺の方が高いし専門性もあって効率的だ。こっちの方が逃げる算段がつきやすい」


「そうなのか。それだったら頼んだぞ! ルシアーネをよろしくな」

「金髪頼んだ」

「おう、おませておけ!」


 そう言うと一行は更にスピードを上げた。

 だが、流石に格上。

 それにも食らいついてくる。


「本当に本当に厄介だね……」

「アイツらをなんとか取り締まれる方法ないのか?」


 咲の溜息に思わず質問する。



「あくまでもアチラ側の言い分は『歩いている方向が偶然同じだけ』だからね。無慈悲な暴力行為に出たら【断罪人(コンビクター)】が直々に天から召されてやってくるんだけどね。あとはアイツらよりも更に強い凄腕のプレイヤーの威を借りるかだね……。でも強者なんて僕達には見分けは付かないし、依頼料として膨大な報酬を求めてくるのもいる。結局、地道に撒くしかないんだよ……」



 強者が弱者を喰らう。

 どこの世界でも同じなんだな。

 自分の無力さを痛感して歯軋りする。


「王都の外に逃げ込むのはどうなんだ……?」


「それはもっといけないぜ。アイツらは今も正に俺達が外に出て行くように仕向けている。外に出てしまったら戦闘区域。プレイヤーキルもなんでもありの巣窟だ。断罪人は街のような非戦闘区域の管理しかしていないから思う壺になっちまう」


 そうか……八方塞がりだ。

 だから2人はあんなに雪がいないことを悔やんでいたのか。

 

 つまり俺達は王都で逃げ切る道しか残されていないのだ。

 断罪人という最低限の保護下にあるだけまだマシという訳だ。


「普段ならもっと穏やかなんだがな……。隣国の帝国のせいで強いプレイヤーが集まってきているんだ。中には俺達を追ってくるようなタチの悪いプレイヤーも。身の程を弁えて☆×1の地域を選んだつもりだったが……思わぬ誤算だったな」


 翔が悔しそうに顔を歪める。




 俺達の逃亡劇はまだ始まったばかりだった……。

今週の日曜日、更新できそうにないです。

土曜日におそらくその1話分も更新する予定です。


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