34話 冒険者ギルド
続き
しばらく歩いていると冒険者ギルドに着いた。
白を基調とした巨大な神殿のような佇まい。
数百人ものプレイヤーが行き交っていた。
「物凄い人の量だな……随分とここもまた賑やかだな……」
「いっぱいいる……」
俺とルシアーネは辺りを見回した。
冒険者ギルドの構造は半球状のドーム。
人は居るが外見以上に中は広々とした空間だ。
円周上に並ぶように受付カウンターが並んでいる。
そこには制服を着た数十人の受付嬢が控え、プレイヤーとの対応をしていた。
その容姿は全員同一の金髪の美女らで、明らかにNPCだと分かる。
「えっと、それでここに俺が来た理由はなんだったか?」
「冒険者ギルドに登録をすると依頼が受けられるようになるんだ。依頼はプレイヤーが頼むものから既存のNPCからものまで様々。達成するとセカンドワールドで使える通貨を手に入れられる。今日はカイ君の登録の為に来たんだよ!」
俺がそう尋ねると咲が答えてくれた。
「通貨はさっきダダンのおっさんが売っていた武器や防具も買うことができる。ダンジョンの攻略に役立つアイテムなんかもな。他にもセカンドワールド内の娯楽諸々にも利用できる。絶対に登録しておくべきだぜ」
翔もまた説明を付け加えてくれた。
つまり、この世界には主に2つの等価交換物があるということだ。
1つはルシアーネとさっき話していたクランポイント。
現実のお金と交換できる数少ないプレイヤー向きのもの。
2つ目はその通貨というものだ。
どうやら冒険者ギルドで登録して、依頼を受け解決すると手に入るらしい。
クランに比べ選別もなく万人向けのもののようだ。
おそらくだが、その口調からもこっちの方がセカンドワールド内での使い勝手が良いんだろう。
「じゃあ、早速登録してくるよ。ルシアーネ行くぞ」
「うん!」
2人に見送られ、俺たちは長蛇の列に並んだ。
「次の方どうぞ! 空いているカウンターへお越しください」
10分ほどルシアーネと話しながら待っていた。
すると遂に声がかかったので俺たちは1人の受付嬢の元に向かった。
「はじめまして! ようこそ【アワタスト王国冒険者ギルド】へお越し下さいました!」
屈託ない笑顔で俺に話しかけてきた。
彼女は明らかにNPCだ。
だが、あまりに自然すぎるその行動に思わず見惚れてしまった。
「……冒険者様? 今日はどのようなーーーー」
「ああ、すまない。えっと……初めてで登録の方をお願いしたいんだけど」
それを聞くと彼女はキビキビと書類を取り出した。
何か筆跡をすると、そのまま俺の前に出してきた。
「所属パーティーは叡智の星で一件。所属クランは炎帝騎士団。バンドウカイセイ様でお間違いないですか?」
「……よく分かったな」
俺の情報を一言一句間違わずに言い当てられた。
思わず驚いてしまう。
「もちろんです。私共は受付嬢もとい情報管理NPCです。プレイヤー一人一人の情報を漏れなく管理させて頂いています。もちろん現在の会話も外には一切出ないようにノイズ処理を行い、個人情報保護の観点から第三者に干渉されないよう厳重に保護されています」
なるほど……全部筒抜けというわけだ。
さすが、セカンドワールドだな。
ワールド内では過去一切それにまつわる事件は起きていない。
開発会社ニューエッジが最強人工知能を使い、ハッカーに対する絶対的優位を置いているからだ。
「分かっているから問題ないよ」
「ご理解頂きありがとうございます。ではこちらの書類にサインして頂き、軽く説明を受けて頂いた後、手続きは無事完了となります」
そう言われて書類を手渡される。
そこにはいわゆる利用規約のようなものが書かれていた。
俺は流し読みしてサインをした。
「サインしたよ。これでいいのか?」
「はい、確認が取れました。まず、お渡しするものがあります」
受付嬢はそれを受け取るとタグプレートを取り出した。
鎖に薄い灰色をした金属プレート。
ちょうど首からかけることのできる物だ。
「冒険者ギルドではランク制というものを取り入れております。ランクは下からE5、E4〜〜S2、S1までと階位分けされています。依頼解決数、難易度を考慮し昇格していくことが可能です。カイセイ様になりましては初登録となりますので、一番下のランクE5からとなります」
そう説明されるとタグプレートを渡された。
ランクはS、A、B、C、D、Eと続いている。
そして数字が1、2、3、4、5とあり若くなるほどランクが高いらしい。
「依頼につきましては中央上空に依頼表が電子掲示されています。また、ご自身でもステータス表示同様にお手元で確認が取れます。受理されるものはそこで承認頂き、達成後通貨が自動的に支給されるという仕組みになっております」
そう言われ依頼と念じて見ると画面が確かに出てきた。
上画面に『アワタスト王国依頼』と表示され様々な依頼が並んでいる。
採取からモンスター討伐まで。
〜〜村の村長からプレイヤーの個人名など多種多様な者達からだ。
「ありがとう。助かったよ」
「いえ、お困りの際には是非お声掛けください」
「ありがと」
「……あなたも困った時は来るのよ」
受付嬢がルシアーネの言葉に少し崩した口調で答える。
同じNPC同士何か親近感でも湧くのか?
そんなことを心の片隅で思いながら咲と翔の元に戻った。
最近、忙しく寝不足で執筆が滞ることがあります。
今はまだ大丈夫ですが、一応免罪符だけ打っておきます……。




