表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/91

2話 ログイン

続き


 時計の針が八時を回った。

 バイトが終わった俺はウキウキとした気分で家に帰る。

 いつもは気力もなく帰路につくが今夜は手に持つ“コレ”がある。

 こんなワクワクとした気分になるのはいつぶりだろうか?


 アパートの201号室。

 ハンドルの穴に鍵を差し込んで部屋に入る。


「ただいまー」

「お兄ちゃん! お帰りーー!」


 玄関を開けると同時に雪が抱きついてきた。

 モコモコのパジャマを着た黒髪ポニーテールの美少女。

 俺の自慢の妹だ。


「いや、重い重い……」

「ユキちゃんの愛が重いって言うのー? もう、ウブなお兄ちゃんめ!」


 これでも雪はもう小学六年生となる。

 両親のいない環境で育って家族愛に飢えているせいか異様に人懐っこい。

 歳の離れた兄妹ということもあり、甘やかしていたらこうなってしまった。

 

 でも、今や唯一無二の家族。

 こうしていられるのは俺としても微笑ましい。


「お兄ちゃん、手に持ってるそれって……遂に買ったのーー!?」

「バイト先の店長からのご厚意でな」


 右手にあったソレを早速発見したのか驚いた表情をみせる。

 それから何かを察したのか満面の笑みを浮かべ、また抱きついてきた。


「ユキだけセカワで遊んでいて申し訳ない思いさせてたけど、これからはお兄ちゃんとも遊べるね!」

「ああ、そうだな!」


 ちなみに雪には数年前の誕生日プレゼントで買ってあげた。

 今やセカンドワールドをしていなければ学校の中で孤立してしまうような時代。

 彼女にはそんな思いをさせたくないと思い必死にバイトして、プレゼントしたんだった。

 さすがに自分の分まで買うとなると過労死してしまってただろう。


「それより夕飯は何かな? ユキの作るものは全部美味しいからなぁ」

「今日はね……ユキちゃん特製甘々カレー! お兄ちゃんのことを思って一生懸命作ったんだからね!」


 雪が『早く早く!』と袖を引っ張って席に着かせた。

 キッチンで手際良くライスの上にルーが注がれる。

 それから小さな机の上に山盛りのカレーライスが召喚された。

 

 (ちな)みに家計の事情を考慮してルーの具材がモヤシというのは万道家流だ。


「うんっ、美味いな! めっちゃ美味しいぞ!」

「良かったぁ。お兄ちゃん、今日も遅くまでお疲れ様ー。これお水ね」


 ちなみにウチの飲料水といえば水道水だ。

 下手な甘味水を啜るよりよっぽど健康的だ。

 小さい頃からそうしてきたせいか兄妹揃って肌艶がいい。

 日本の水道は飲める。

 我が家の生命線だ。

 なんてことを雪が幼い頃から教え込んできた。

 一応、兄としてももう少しマシなものを食べて欲しい。

 だが、財布事情がそれを許さない……。


 俺はライスを掻きこんで水で流し込んだ。


「お粗末様でした」

「ふぅ……美味しかったよ。明日の朝は俺が作るから夜またユキに頼むよ」







 食事を終えシャワーを済ませ寝巻きに着替えた。

 それから布団の上に移動し早速パッケージを開いてみる。


「うおぉ……スゲェな俺専用のゴーグルだ……」

「まずはそこの上の突起のボタン。そこが電源だよ」


 隣には雪が俺の布団に転がり込んできた。

 説明書もあるがここは経験者である雪に色々と教えてもらう。


「サイズはこんなもんで、ノイズキャンセルの機能もあるのか」

「ユキみたいに横になった方がやりやすいよ」


 目から耳を隠すような機械を顔に取り付ける。

 地味に雪が俺の横に潜り込んで密着してくるがまあいいだろう。


「そのまま(まぶた)を閉じて。機械が脳にコネクトしてくれるから、後はアナウンスに沿って進むだけだよ。ユキも先にセカンドワールドに行っているね。国選択は一番上にあるアワタスト王国にしてね」

「アワタスト? まあ、分かった。今はこのままでいいんだな?」


 体を倒し仰向けになって待つ。

 隣で転がる雪はそのままピクリとも動かなくなった。

 もうセカンドワールドにログインしてしまったのだろう。

 俺は初めて入るから初期設定やらなんやらで多少時間がかかるようだ。



ーーDefault Setting..........ーー



 耳元で音声が流れる。

 ゾワっとした感覚に襲われてアドレナリンが溢れ出す。

 遂にきたのだ。



ーー国籍ヲ日本。第一言語デアル日本語デノ設定ヲ行イマスーー



 おっと、いきなり日本語に切り替わったな。

 中性的なアンドロイドのような声だな。



ーー新たにユーザー名:バンドウカイセイを登録ーー

ーーキャラクターデザインを現実世界からセカンドワールドへ伝達しますーー


 流暢な日本語へと変わった。

 声帯音声もどことなく俺の声に似せられて聞き取りやすい。

 脳の情報を読み取ってセカンドワールドの中に現実と変わらない姿を再現してくれるようだ。

 脳科学、機械科学らの発展した現代だからこそなせる業だ。



ーーデータ準備完了ーー


ーーセカンドワールドへの接続を確認ーー

ーーセカンドワールドでのキャラ構築を開始しますーー


 

 数分が経った頃だろう目の前にぼんやりとした光が見えてくる。

 耳元ではリラックスさせるような爽やかなBGMが微かに流れ出した。



ーー構築完了ーー


ーーセカンドワールドへの意識の移行を開始ーー



 すると急に眠気が襲ってくるように瞼が重くなってきた。

 自分の体が体であると感じない変な感覚に襲われて、力を入れるも動かない。

 そして、いつの間にか意識を手放していた。






 ーーーNow Loading..........ーーー

今日中にまた後、数話更新します。

稚拙な文章となっていますが読んでいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] なんで貧乏なのに妹はVR MMO経験者なんですか???
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ