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13話 王都の異常

続き

 

 俺とルシアーネは王都の門へと向かう。

 だが、王都の様子が昨日と少し違って見える。

 明らかに人の数が異様に増えているのだ。

 特に武器を持たない非戦闘的なプレイヤーの数に目立ちがある。

 それが門前に行くにしたがって多くなっていっているのだ。


「ルシアーネ、何か王都の様子おかしくないか?」

「確かに。昨日と違う。朝もこんなに騒がしくなかった」


 俺は通りがかった年配の男性に聞いて見ることにした。

 咲達に会ってから聞いてみても良かった。

 だが、なかなかに混み合っていて進みそうにもない。


「あの、すいません。お尋ねしてもよろしいですか?」

「……? ええ、なんでしょう?」


 快く答えてくれる男性だ。

 顎髭を蓄え落ち着いた装いの四十過ぎのおじさんだ。


「王都の様子が少し騒がしいように見えるんですけど、何か起きたんですか?」

「君知らないのかい? 今ここらで一番のニュースだよ」

「すいません、情報に疎くて」


 少し興奮した様子で答えるおじさんは耳を貸せと手招きする。

 俺たちは人混みの中おじさんの方に寄って行った。


「ついさっき近くのハーレイ帝国で王権限が切れたんだ。まもなく『戦争レイド』が起きる。それも大規模のね」

「王権限?」


 いきなり物騒な言葉が聞こえてきた。

 ログイン2日目の頭には到底追いつきそうのない案件だ。


「もしかして初めてかい。それなら混乱するのも仕方がないね。一から教えてやろうか? そっちの女の子も一緒かい?」

「ええ、是非とも。2人でよろしくお願いします」

「オッサン、よろしく」


 俺たちは人の混んでいない場所に移動して話を伺うことにした。

 約束の予定には少し遅れるが、こんな様子じゃ仕方なしだろう。


「セカンドワールドには様々な国があることを知っているね?」

「ええ、王国に帝国があると」


 王国がありその上位互換に帝国がある。

 ここまでは知っている範囲内だ。


「だったら、プレイヤーが国の領主もとい国王になれるというのは?」

「知りませんね。初めて聞きました」


 そんなことがあるのか……。

 冒険以外にも領地改革みたいなプレイングがあるのか。


「まあ、つまりさっき言ったハーレイ帝国の王権が切れて次代の国王になる為にプレイヤー間で戦争が起きると言うわけさ。セカンドワールド内に100しかない帝国の一つだ。帝国5年、王国2年で権限期間が切れるからな。有名どころがこぞって我先にと名乗りを上げている」


 なるほど。

 要するに近くの帝国の国王になる為にプレイヤーが集い始めている。

 それが5年に一度のとても大きなイベント。

 それで今までにない賑わいを魅せていると。


「でも、ここは無関係な王国ですよね? 何故こんなにも人が?」

「ああ、門前から流れ込んでくる人らはその帝国の人達さ。さっきも言った戦争レイドは帝国内の帝都で行われるわけさ。君達みたいな若者はまだしも、私たちみたいな中年は戦争なんざに巻き込まれたくないからね。今は一時的に帝国に居住を置いている人らが避難してきてるんだ」


 つまり一時的な移民と言うわけか。

『ログインして、マイホームから出てみたら戦争の渦中でした!』。

 みたいなこと起きたら笑えないからな……。

 

「でも、なんでそんなに躍起になって国王なんかになろうとするんですか?」

「そうだよな。普通の奴らはそう考える。でも国王になることはメリットがあるんだ。まず、ランキングに補正が入るんだ。レベルがなくても上にのし上がれる。帝国なら尚更な。国内ランキング上位はおろか、世界ランキングまでに名を連ねられる可能性が出てくるんだ」


 さっき見ていたランキングというのはレベルだけでは決まらないのか。

 このセカンドワールド内での地位や実績を含めた諸々で相対評価されるらしい。

 ランキングに入れば、TVにも載り名声、金も十分に得ることができる。


 スポンサー、広告、運営からも気の狂うような対価を得られ、大成したというランキング入り者の話は聞いたことがある。



 つまり、今回の戦争はただのゲームの中だけの話ではないということだ。

 


「だからこんな騒ぎになっているんですね……凄いな……」

「ああ、全くその通りだよ。今回の帝国の件に世界ランカーが数人参戦すると言われている。それに今回は『市街での魔法なしの銃撃戦』と過去に類を見ないものだ。有名クランの噂もいくつか聞くし、巷では賭博なんかも開催されるようだ。世界が注目する一戦となるだろうよ」


 大体状況は把握した。

 つまり、想像もできない周りを巻き込んだエゲツない戦争が始まる前段階。

 セカンドワールド内でも一大イベントが開催予定というわけだ。


「引き留めてすいません。お話しありがとうございました。俺には手の届きそうな話じゃなさそうですね」

「そうだよな。まあ、青年達もこれから頑張ってくれ! まだ駆け出しのようだし私達は外野からそれを眺めていようではないか」


 俺たちはおじさん会釈した後、その場を去る。


「アイツら待たせてるかな? 一気にこの群衆抜けるぞ」

「主、戦争レイド面白そう。やりたい!」

「何を馬鹿なこと言ってるんだ……俺達じゃ到底釣り合わないだろ……」



 俺は我儘(わがまま)を言うルシアーネの手を引き、目的の場所へと急いだ。






ーーこの時の俺はまだその大戦に巻き込まれることなどつゆ知らず……

いつもありがとうございます。

皆様のブックマークやポイントのお陰で、一日二話投稿を頑張ろうと思えます。

是非、これからもどうぞよろしくお願いします!

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