表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/91

10話 幼馴染②

続き


 学校終わり。

 俺はバイト先に向かってある一人の少女と一緒に歩いていた。


「カイ君、僕を差し置いて先にショウの奴にセカワのことを話すなんてズルいじゃないか?」

「だから何回も言っただろ。アイツがユキに聞いたんだって。それを聞きつけたアイツが今日の昼やってきただけであって、それに今伝えたんだからもう良いだろサク?」


 隣を歩く一見したら美青年に見える彼女は【桜葉咲(さくらばさく)】。

 俺のもう一人の幼馴染だ。

 

 容姿淡麗でもあり学年中、特に女子人気の高いボーイッシュな奴だ。

 レディースの制服ズボンを履いていて端正な美青年顔。

 ショートカットの茶髪の混じった黒髪で女子にしては少し背が高い。

 俺、翔、咲と並んだ際にも大、中、小とはなるが、さして背丈は変わらない。

 

 周囲からは一般的な男子高校生らと思われているのだろう。


 ちなみにスカートを履かないのは本人曰く。

 『あんな防御力のないもの、こっちから中身を見てくれと言っているようなものだ』らしい。


「まぁ、カイ君から誘ってくれたし今日のところは見逃してあげる」

「はいはい。ありがとうございます」


 俺は適当に返事をして答える。


 本題のなぜ俺が咲と一緒に歩いているか?

 というと俺のバイト先が彼女の家だからだ。

 いや、正しく言うと彼女の家の道場だ。


 咲の家柄は代々、家流の武道を継承している名家だ。

 門下生も多くいて俺は週に5日働いている。

 つまり岩尾さんの『遊戯処』で働いていない日は基本的にここにいる。

 中学生の頃から親友贔屓で非正規で雇ってもらっていた。


「そう言えば最近、サクの親父さんは物凄く大変そうだったな」

「そうそう。僕の愚痴を聞いてくれよカイ君!」


 俺は無理矢理、話を変える。

 この僕っ子は昔からなぜか俺にだけは嫉妬深いというか、ねちっこい。

 周りにはサバサバした性格で知られている。

 だが、俺と話す時だけなんでそんな面倒くさくなるんだろうか?

 

 こういう時は、潔く脈絡もない話に切り替えるのが無難だ。


「最近は大分、落ち着いてきたけどさ。まだ家に詰め寄ってくる輩がいるんだよ。『是非とも桜葉流武術をこの私に伝授してくれ!』ってね。それも昼夜問わず。この前は有名な財団の人が門前までやってきて、お父さん頭を悩ませてたんだよ。既存の門下生だけでも手を焼いているって言うのに……」


「ご愁傷様。他の(エセ)武道が出てきても、サクのところは格が違うからな」


 さすがに格式の高い武術を継承する家というだけで、こんなに騒がしくはならない。

 

 だが、こうも桜葉家が急に忙しくなったのは十年前くらいの頃からだ。

 十年前といえばセカンドワールドが世に出てきた年代。

 皆がセカンドワールド内で夢中で冒険に勤しみだした頃、ある噂が立ったのだ。


『現実の身体能力が反映される世界ならば、現実の武闘技術もまたセカンドワールド内で有用なのではないか?』


 実際のところその事実は見事立証された。

 武術を生かす戦闘は当然、素人の身振りよりも一線を隔てる。

 

 それからは連日大騒動になった。

 あらゆる人の群衆が剣道、空手、柔道、弓道、フェンシング、ボクシング、テコンドー、アーチェリー諸々の利点のありそうな分野に押し寄せた。


 教室や道場などには一般客が殺到する。

 これは、もちろん国内だけのことでなく世界中で多発し社会問題までになった。


 そして、日本でも有数な伝統武道を持つ桜葉家もその波に大きく晒された。

 桜葉家は代々、実践形式の武術を継承している。

 槍術、剣術、弓術といったセカンドワールドのユーザーの欲する技術全てが集約されていた。

 

 今でこそ落ち着きつつはある。

 だが、あの頃は警察沙汰になることなんてざらにあった。

 全ては彼女の家は魔の手から守る為。

 伝統的な平屋から超高層ビルへと変化を遂げ、専属警備員を常駐させる始末。


 幼馴染として傍で見てきた俺からしても、咲や彼女の家族のその気苦労は計り知れない。


 


 

 しばらく歩いていると目的の彼女の家に着いた。

 桜葉家が保有する山の頂上付近に建てられた建造物。

 いつものように長く高い石段を駆け上り、門番にて認証を受けて中に入る。


「じゃあ、頑張って教えてくるんだな師範代。俺は今日は、このだだっ広い竹林の森の手入れを任せれているんだ。帰りがけに一度声かけていくからまた夜でな!」


「そうだね。来る途中で2人でセカワについて語り明かそうと思ってけど、すっかり忘れていた。まあ、これからはカイ君とは家にいても2人きりで会えるからね」


 俺と咲は建物のエントランスで語らう。


「いや、ショウもいるしユキも多分来るぞ」

「はぁ……乙女の心を分かってないね。こういう時はそうであっても素直に言葉を受け取っておくべきだぞ」

「いや、実際来ると思うし……それにサクに限って乙女ってことはないだろう?」

「もう、僕だって怒るんだからね! ちゃんと帰る時は顔を出してね!」


 咲がコテっと俺にパンチする。

 それからプンプンと可愛らしげに怒って歩いて行ってしまった。




「サクもまた、いつにも増してどうしたんだ?」


 俺は立ち去る咲の背中を見てそう呟いた。

日常回でした。

次話はおそらく1時過ぎ投稿。

是非よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ