第二話 「旅の方針」
俺たちは市場の近くまで戻った。
「ここまでくれば大丈夫かな...」
「ちょっと...まって...息が」
息を切らしていたのは俺の方だった。
ずっと家でじっと暮らしていたやつが急に走れるわけがない。
「そ...それでスカラ、君はいったい?」
「そうだまだ説明してないんだった、私は――――――」
スカラは奴隷だった。元は田舎の農村の子で、そこに視察にきた貴族に気に入られそのまま連れ去られたらしい。
こっちの世界では考えられないほど理不尽なことだが、この世界では割と普通のことだそうだ。
なんとも可哀そうな話だ。
そして攫われて数年、今回肉体関係を迫られることに耐えかねてお屋敷を抜け出したのだという。
行先は故郷、家族や友達に会いたいらしい。
つまり今の俺と真逆の状況だ。
俺のことはすごい遠くの地方からきた同じく田舎者だと説明した。実際間違ってはいない。
「わかった。俺もスカラの帰郷に付き合うよ」
「やった!でもすっごい遠いよ?」
「別に、他にやることもないしな」
「君は故郷に帰りたくないの?」
「俺は.........いいや」
帰れるかもわからないし、帰ったところでやることもないしな。
俺が異世界に飛ばされた理由も旅の途中でみつかるかもしれない。
「それでどうやってそこまで行くんだ」
「わかんない.....」
「え。」
「私攫われてここまできたから。私が知ってるのは村の名前だけ、でもすごい田舎だからこの町いる人達はほとんど名も知らないと思う」
こいつ実はかなりの天然か?旅の道行きが不安になってきた。
「帰り方もわからずに抜け出してきたのか...」
「えへへ」
「褒めてねぇよ」
まぁこんな可愛い子と過ごせるだけで役得か
「だからとりあえず冒険者になって、お金を稼ぎながら情報収集しようかなって!」
「冒険者ってなんだ?」
「シリウス知らないの!?」
「ああ」
「すっごい強かったからてっきり高ランクの冒険者かと思ってた!身軽だったし」
やっぱり冒険者っていう職業があるのか、ワクワクするな。
アニメの知識で多少は仕入れてあるが、やっぱりこの世界の正確な情報が欲しい。
「冒険者ってのは冒険者ギルドのクエストをこなしてお金を稼ぐ人たちのことだね、ランクがあって....
うーん、私もよく知らないや」
ほとんど俺の知っている知識と同じくらいじゃないか。
「まぁ行けばわかるよ、ちょっとまって」
立て看板でギルドの位置を確認するスカラ。
「こっちね。早く行きましょう」
市場からギルドまでに色々な人達とすれ違った。
甲冑で全身武装した男。
(暑そうだな...)
獣を操って移動するテイマーらしき人。
(なかなか楽しそう、動物きらいじゃないし)
ゲームのアバターかのごとく天使の羽を生やした魔術師らしき人
(たぶんくっそ強いんだろうなぁ...)
他にも様々な冒険者がいた。
自分もいつかこんな風になるのかと想像すると少しだけ胸が弾んだ。
「着いた。ここが冒険者ギルドね」
扉を開けるとそこには賑やかな世界が広がっていた。
今回は短め。文章量ってどれくらいがちょうどいいんでしょうか?