プロローグ
俺の名前は小田光、光とかいてシリウス。14歳で不登校引きこもりのヒョロガリだ。
引きこもってパソコンとスマホを永遠にやってる廃人だ。ネットで何かができるわけではなく、ただ動画サイトを転々としてソシャゲー、ネトゲ、掲示板三昧。
好きでやっているわけではない。
ただ有り余る時間を浪費するためにやっている。完全な暇つぶし。
「チッ...鯖落ちかよ...」
他のことをしていないと正直言って、正気を保っていられなかった。
体力の限界まで起きて、気絶するように眠り、朝か夜かもわからないような時間に起きる。
暇になるとよみがえってくるトラウマや後悔の場面の数々。
不安、悲しみ、劣等感、後悔、嫌悪。複雑に絡み合った負の感情が心の底から波のように押し寄せてくる。
「ッ...なんで俺だけがこんな目に...」
引きこもりは楽をしてるだけとか甘えだとかよく言われるが、少なくとも俺の場合はそうではなかった。
永遠と続く地獄。終わる予定なんてない。この地獄が終わる時が俺の人生が終わる時。
シリウス。
おおいぬ座で、地球から見える太陽の次に明るい恒星の名だ。
文字通りのキラキラネーム。光と書いてシリウスと読ませるなんて、親は俺によっぽど輝いてほしかったらしい。
ただ光っていたのは名前だけで俺の人生が輝くことはなかった。
外見はお世辞でもイケメンと呼べるものではないし、運動神経もなければ、勉強の才能もない。なんならすべてのことで人よりも劣っていたと思う。
その名を担うのに俺は完全に力不足だった。
俺の名前はどんなときでも悪目立ちしたが、中学2年のときがもっとも過激なイジメにエスカレートした。
「おーい、シリウスー放課後屋上こいよwwww」
「全裸写真ネットに晒されてもいいのかーw」
俺は部活にも所属していなかったので筋力もほとんどなく、頼れる友達もいない。学校では皆に避けられた存在だった。教師もイジメを見て見ぬふりをする無能。
ゆえにいじめっ子たちに抵抗するすべはなく、毎日のように地獄は続いた。毎日全身アザだらけ。お金だってとられたこともある。その時には心も体もボロボロだった。
家で家族にそのことを打ち明けると
「おまえが弱いのがいけない」
「抵抗できるでしょ」
と説教された。
唯一俺に気があると思っていた幼馴染の女にもいつのまにか彼氏ができていた。
中学に入るまでの俺の唯一の女友達でもあり親友だった。そこそこ可愛かった。しかし俺と彼女の関係は完全に断たれた。
「お前が〇〇ちゃんと話してんじゃねーよ死ね」
「てめー次学校来たら骨折るぞ」
そんな理不尽なことあるかよ。
俺は中学では話相手もほとんどできなかったため幼馴染といることだけが俺の人生の希望だった。最後の希望すら否定された俺はそこから家に引きこもった。
最近同級生のSNSを覗いて、幼馴染と付き合っている男が俺をイジメていたやつらの一人だと知った。二人の写真を見たとき、自分のいままでの人生ごと否定された気がした。
引きこもって半年。もう何週間も親と会話していない。最後の会話は俺が
「俺の人生終わったのは全部お前らのつけた名前せいだ」
と怒鳴りつけて終わった。
自分の力不足を名前のせいにしていることは自分でもわかっていた。
兄弟にも完全にいないものとされている。
食事は親がいない時間に冷蔵庫やキッチンから盗んでいたらいつのまにかドアの前に用意されるようになった。どういう意図があるのかは俺にはわからない。
この怠惰な生活を続ければ続けるほど後悔はより強くなっていくことは薄々気づいているが、将来のことなんて考えたくもなかった。
(もう俺、人生詰んでんだろうなぁ)
詰んでいても、詰んでいなくても、もう俺に前に進む勇気はなくなっていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
引きこもり生活を続けていたある日、体に異変が起こった。
起きて今日もパソコンでネットサーフィンをしようと立ち上がったその時。
「がっ...苦しい...」
ズキズキとなる痛みが急に体を襲った。体が散りじりになるような感覚。
この生活で何度か体調を崩したことはあったがその時とは比べ物にならない、今まで経験したことがないほどの全身の痛み。
立っていられずそのまま床に倒れこんだ。思考すらも制限される脳の痛み。
「誰か...っ」
声もかすれてしまってほとんど出ない。当然家族にも伝わっていないだろう。
(死ぬのか...俺...)
徐々に真っ黒に染まっていく視界。
途絶えてくる意識の中で何かが俺に語り掛けてきているのを感じた。
「貴様の闇の力を欲している世界がある」
意識はすぐに途絶えた。
書くのが遅いので更新ペースはそんなに早くないです。