教室
窓側の席の後ろから2番目、椅子を引いて座ってみれば、そこはいっだって華やかな喧騒に包まれる。
昨日あったテレビの話題、週末の遊びにゆく計画、部活や授業のあれこれ、どれをとってもくだらない話。
それでもいまは想う、あの時すべてが宝物。
何年も月日が流れても、色褪せない記憶のひとつ。
大人になったぼくだから、理解できることもあるけれど。あのときのぼくはどれほど、理解できていたのだろうか。
立ち上がると椅子の音が、やけに教室に響きわたる。ひとりぼっち教室は、なんだかちょっと物寂しい。遠くから聴こえるクラリネットに誘われて、廊下へと足を伸ばす。
夕日の差し込む教室をもう一度だけ振り返って、そっと扉を閉じる。