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Vtuber殺人事件  作者: 狼狽 騒
6/11

5日目

◆探偵――立花レン



 昨日は寝られそうにないと思ったが、身体はどうやら睡眠を欲していたようで、仮眠するつもりがすっかりと朝どころか昼まで寝てしまった。まだ気怠さが残る身体を必死に起こしてパソコンの前まで辿り着き、SNSをチェックする。

 寝ている間に世界の情報は色々と変化していた。

 一番騒がせていたのは、やはりリアルで殺されていた綾胸エリのことだ。

 ニュースで大将の人物が殺害されていたと報じられていたのは、綾胸エリがデスBANに殺害される前――生放送をする前だった。にも関わらず、綾胸エリは実際に行っており、実際にその様子もYoutube上で残っている。


 Vtuberが本当にバーチャルな存在として転生した――


 冗談半分本気半分で人々はそう呟いていた。

 肉体は死すとも精神は綾胸エリとして仮想空間を彷徨っている――というのはファンタジー要素があることは個人的には好きだが、しかしながらそう呑気なことを言っている場合ではない。

 僕は実際に見たのだ。

 デスBANに殺された人物がリアルで襲撃されるのを。

 雨下ふらし。

 彼がリアルで襲撃されたこともニュースになっていた。だが綾胸エリの存在が大きすぎたので、実際にデスBANに襲撃されるとリアルでも殺される、ということの補強情報なのに扱いは小さかった。

 だが、自分の中では大きい。

 あの血だまりの海で沈んでいた姿は目に焼き付いている。床に落ちていたシーツが真っ赤に染まっていたことも印象的だった。

 そんな苦い顔をしていた時、スマホに着信が入る。

 出ると警察からだった。

 事情聴取をしたいから最寄りの警察署まで来てくれとのことだ。

 捜査協力の為には致し方ないので準備をして向かう。

 が、行った先ではあまり協力的ではなかった。

 どうやら僕を疑っているようだ。

 警察官から問われたことを簡潔にまとめるとこういうことだった。


 犯行時刻である15時過ぎに、あのマンションに出入りした者はいない。

 マンションの住人に話を聞くが、特に雨下ふらしとのトラブルは無かった。

 そんな状況の中、第一発見者である自分が殴ったのではないか。


 確かに、生放送をしていてそれまで生きていることが証明されている中、彼を殴ることが出来るのは自分しかいない。返り血が付くじゃないか、と反論してみようと思ったが、床に落ちていたシーツを被りながら殴ればそれも防げるだろうと気が付き、根拠がないが「やっていません」とひたすら繰り返していた。

 そういえば凶器は何かということを見落としていたようだが、どうやら影に金属バットが落ちていたようだ。その購入先とかで犯人が分かるのではないか、と聞いてみたが量産品でどうやらその線から犯人を辿るのは難しいようだった。

 僕が犯人という線を解消出来ることは出来ずに、解放されたのはすっかりと夜遅くなってしまった。

 しかしながら、帰り道では昨日より思考に余裕が出来ていた。

 警察の態度から、ある程度の情報が推察することが出来たのだ。

 なかなか複雑な事件だ。

 Vtuberが連続して襲撃されたこの事件。

 この県と沖縄県という離れた場所で起きた。

 まるで仮想空間を行き来しているかのような広がりを見せている。

 何より――デスBAN。

 あのピエロは何故襲撃するのか?

 そしてどのような理屈で襲撃した相手がリアルで傷つくのか。


「……」


 実は僕自身、ある種の考えを持っていた。

 この事件について――特に二つ目の事件について犯行を可能にする方法があるということが。

 だが、それを確証に繋げるには証拠が無い。

 何より二つの事件の関係が明白にならないと確証が得られない。

 あくまで推論に基づく仮説なのだから。


「……はあ……いてっ」


 深い溜め息を付きながら帰宅し、ベッドに突っ伏す。その時にどうやらテレビのリモコンを身体で押し潰してしまったようだ。変に当たって、テレビが起動する。


「何でここにリモコンを置いたんだっけ。………………………………っ!?」


 僕はテレビ画面を凝視した。



『次のニュースです。沖縄県で男性が鈍器で殺害された事件で、男性を殺害した容疑で、近くに住む男が逮捕されました。逮捕されたのは住所不定無職の――』



 ――このニュースで全て繋がった。

 唯一、推測でしかなかった部分が確証になった。



 すなわち――この事件の全貌が分かった。

 後は詰めの段階だ。



 僕はある特定の二人に、ブラフも含んだ次のようなダイレクトメッセージを送付した。




【突然の不躾なダイレクトメール失礼します。

 昨今のVtuberが襲撃されている事件の関係者になります。

 そして貴方が重要な事実を隠していることを存じています。

 貴方が隠している事実について、現段階で正直にお話すれば罪に問われないでしょう。

 ですが下手をすれば隠匿罪に問われる可能性があります。

 なので、私にご相談ください。

 警察側に口添えできる立場にいますので。

 なお、このメッセージに24時間以内に反応いただけない場合、警察には客観的推測として貴方についてお話しします。

 以上です。

 よろしくお願いいたします】

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