棟梁だね
宜しくお願いします。
ギルドを後にした、だんだん傾きかけてきた太陽が川に映り込み、赤くキラキラと光る川沿いを歩いていた。そこにラムが加わるともう芸術としか思えなかった。
「あと、もう少しだよ」
「ああ、分かった」
そう、ドワーフの工房を目指していたのだ。
「棟梁ってどんな人?」
「ん〜〜頑固な人かな?」
「でもね、お爺ちゃんとは物凄く気が合って本当に仲が良かったんだよ」
「お爺ちゃんが行方不明になった時も、私が念話で会話が出来るまで、本当に、本当に心配して探し続けていたんだよ」
「きっとジョー君も、仲良くなれるよ」
「そうかなぁ〜...」
更に歩き続けている内に、街並みも完全に消え深い森の中に入って行った。
「何だ?此処は」
御伽の国に来てしまった様だ。
とても静かな所で何故か物寂しい感じがどんどん大きくなってくる。一人で迷い込んでしまったかの様な不安な気持ちになり、思わずラムが隣にいるのか探してしまった。
そして俺は手を握った。
「どうしたの?」
「何でも無い............けど、手を繋いでいてもいい?」
ラムは、こくりと頷いた。
何故か頭を優しく撫でられた。
(何だか、凄く懐かしい感じがした)
森の中に少し開けた場所にでててきた、其処には可愛らしいけれど絶対食べてはダメな感じのキノコや大岩に纏った苔が大きな大樹に囲まれてとても、人が立ち入ってはいけない場所の様だった。
「此処は、凄いな!」
「妖精達も、遊びに良く来る場所だから、無闇矢鱈に木や動物を傷付けてはダメなんだ」
「ああ、注意するよ」
更に進むと、夕暮れ時は過ぎ忽ち森の中は暗くなり、夜の景色となった。
辺りが暗くなると、光の粒子が飛び回っているのが見えてきて、全体をぼんやり照らしている。
ぼんやり照らされた、ラムは幻想的な空間と相俟って、妖精にしか見えなかった。
森の最奥部まで来たのか、俺とラムの目の前には、何とも美味しそう?なブッシュドノエルの形をした物が幾つも見えてきた。
「おや、ここは?」
「そうだよ、ジョー君、此処がドワーフさん達の村だよ」
「素晴らしいな」
「うふふ、ジョー君も好き?」
「ああ、何だかとても心が落ち着いてきて身体の中から綺麗になる感じがするよ」
「うん、そうだね」
俺とラムは、一際大きなブッシュドノエルの前に立ち、ドアをノックした。
[ コンコン ]
「棟梁さーん」
[ ゴトゴトゴト ]
「誰ダァ」
「ラムです」
「ラムダァ?」
[ ガチャリ ]
「ンッラァ.......オオ!キビ ノ所ノ ラムジャネエカ」
「えへへ、お久しぶりです」
「久シ振リ、ジャネエダロ」
「棟梁さんは元気だった?」
「アア、マアナ ダケドヨ........ッテ!ソチラノツレハ?」
「ジョー君です。お爺ちゃんの意志を継ぎし者って言われていたよ」
「本当カ、信ジラレナイナ」
「それは、信じて貰うしか........所で、ダケドヨの続きは?」
「アア、ソウダッタナ実ハ、俺ノ嫁サンノ調子ガ悪クテナ...」
「どんな感じか、聞かせてくれるの?」
「アア、別ニ構ワナイサ」
「何カノ呪イ ヲ 掛ケラレチマッタノカ 何ニモ興味ガ無クナッチマッテ、笑イモシネエ 動コウトモ 飯ヲ食オウトモ ドウシタライイノカ 分カラネーンダ」
「そんな事が......大変だったね」
「オウ....」
「私も呪いについて調べて見るけど、ギルドに行けば呪いを解除出来る方法が見つかるかも知れないよ」
「駄目ダ、コイツヲ 動カセネェンダ」
どうやら、身体を無理に動かしたりすると、暴れ回る様だ。
「スマネーナ」
「笑わなくなった........か.......呪いかぁ......」
(俺の様な未熟者にスキル改変を使って呪いの解除など未だ無理だろう.......う〜〜む困った)
何かが気になり、俺はその部屋を見回した。
「棟梁さん、僕にもお嫁さんを診せてもらって良いかな」
「アア、構ワナイ」
俺は、お嫁さんに近づき、脈を測る様な仕草で手首に手を添えた。
(ん?何だかとても、可愛らしい声が聴こえてきた...........ふむ.........そうか?.....え?......そうなの?...............)
「ふ〜〜む、やるだけやってみるか」
何かの声に導かれて、半信半疑ながらも魔法を使わなくても、解呪ができる方法を知った。
それには何か楽しめる物が必要であり、俺は考えた。
スキル生成を使って楽しめる物を作ってみる事にした。
(キビ爺が、あんなに凄いものが作れるならば、俺だって簡単な物なら作れる筈だ)
「ジョー君、どうしたの?」
「いや、ちょっと思いついた事があって.少し待っていてくれ」
森に行き、落ちている木や、獣の長い毛をいくつか、拾って来た。
「何ダ、何ダ、ソンナ モン 拾ッテキテ.....」
「本当は、棟梁にやって貰いたいが、その物の説明が、伝え方が分からない........だから、僕のスキル生成でやってみるよ」
俺は集中して........
「いくぞ、生成!」と呟いた
拾って来た物を包み込む様に青くかがやき出した、段々と大きくなる光は、直径2メートル程となり暫くして、徐々に光は収束していった。
すると、何やら大きなカブト虫みたいな物が出来上がっていた。
「ジョー君、なぁにそれ?」
「ナッ何ジャ?ソリャ!」
「これは、ウクレレだよ」
「「は?」」
「何カノ 冗談カ?」
「此れは、ウクレレという弦楽器なんだ」
「弦楽器?ナニカノ魔道具カ?」
「いや、魔力は一切使わない」
「とにかく、その楽器を持って弦を弾いてみて」
[ ポロロロ〜〜ン ]
おや?ラムさんもドワーフのおっさんも目がまん丸ですが?
「オオ!コレハ.......」
「お嫁さんの呪いの解呪には、棟梁の気持ちと、この世界には未だ未だ知らない楽しい事があると、心に伝える事が必要なんだ...........そうだ...」
「歌が好きな、お嫁さんにウクレレの演奏と共に気持ちを伝えて欲しい」
「何故、嫁サンガ歌好キト分カッタンダ?」
「お嫁さんの手に触れた時、声が聞こえて来たんだよ」
「何!」
「オ前ハ、妖精ノ、イヤ、エルフトノ 混血カ?」
「さあ僕には、分からない」
「ジョー君は、ジョー君です!」
(あらら、ラムさん、ほっぺが、ぷうっと膨らんでいるよ....可愛いなぁ......)
「ガッハッハッ」
[ ポロポロポロロロ〜〜ン ]
「オオオオオ、コイツハ、本当ニ楽シイナ」
「ジョー君、この弦楽器はいったいどうやって使うの?だけど、この音を聞いてるだけで、楽しくなってくるね」
「此のウクレレは、思うがままに音を鳴らせて歌を唄ったりして楽しむ物なんだよ」
「そっか、手拍子や、太鼓だけじゃ無くて、こんな形の物も有るんだね」
「ああ、そうなんだ、このウクレレは直ぐに覚えられるのも特徴なんだ」
「ジョー君、本当に凄いね」
[ ポロポロポロロロポロンポロン ]
棟梁はかなりハマっています
「その楽器を使って音を奏でながら、お嫁さんに語りかける様に唄ったり、話してみて下さい」
「ラム、どうかな?」
「素敵♡ジョー君も私に........」(ラムさん、お顔が真っ赤ですよ)
「不思議ナ奴ダ、ヤハリ オ前ハ キビノ .........本物ラシイナ」
「棟梁さんジョー君を信じてくれて、ありがとう」
「ところで、棟梁さん、私達が来た理由なんだけどね、お城の修練場が大変な事になったの」
「オオ、他ノ者カラ噂ハ聞イタゾ、修練場ニ雷ヲ落トシタトナ.....本当カ?」
「本当です......」
「申し訳....」
「ガッハッハッハッハッ・・・・・・」
「分カッタ明日城マデ行コウ」
「ありがとう、棟梁さん、明日待ってます」
「アア、約束ダ」
棟梁がソワソワ、ソワソワしていて、早くお嫁さんに語り掛けたそうだったので、早々に切り上げた。
ドワーフの村を後にした。
帰りは、何故か変な感じも無く、スタスタ歩けた。なので手を繋がなくても良いのだが、ラムは賺さず手を握ってきた。
森を抜けて、ギルド迄帰って来た。
既に辺りは暗く、帰路を急いだ。
町から、城への一本道に、何やら嫌な予感がした。
「おい、ラム気づいたかい?」
「え?何」
「そうか?分からないか」
気配を消して、生成で木刀を作った。
小声で「ラム、僕は少し様子を見てくるから、待っていてくれ」
「うん、分かった」
更に、ラムの居る場所に先程聴こえてきた可愛らしい声の情報を参考にして結界の様な物を作った。
(俺って意外に器用なのかな?少しずつだが何かをしたいと思うと、俺の中の何かが導いてくれる様になってきたぞ)
ラムと別れて500メートル程 進んだ辺りで、何かが揺らいだ。
何だ?此れは、だんだん揺らぎが広がり空間自体が揺らいでいたのだ、そして漆黒の闇から何かがはみ出して来た。
光沢の有る赤黒い大きな剣先の様だ、ジワリジワリと出て来る物に次いで、呻き声が響いた。
「おいおい、こりゃ何だ?」
取り敢えず、危険な物であると俺は判断して、ジワジワ出て来る物の前に、気配を消したまま向かった。
其処には、黒いフードを被った、木の影に潜む様にした人影が三人程見えた。
明らかに、プエルト城の家臣には見えなかった。
気付かれ無い様 慎重に更に近づいた。
「とにかく......今回.........への.....警告だ」
「おい、さっさとこの、トロール・ウォリアーを放って帰還するぞ」
(ん?帰還?ウォリアー?......おいおい、此奴あかん奴らや)
内心ドキドキだが、自然な感じで声を掛けてみる事にした。
「やあ、今晩わ♡」
「○..X..△..□..ばっばかな!」
「おいおい、何を慌ててんだ?」
「感知出来なかった、だと?」
「やむ終えない、騒がれる前に撤退だ」
「「御意」」
慌てて逃げようとしたのだが、俺は慌てて詰め寄り袈裟斬りの要領で木刀を振った。
「うりゃ!」
ザシユッ!.....ゴトッ 「うげっ....やり過ぎたか?」
「もう一丁」
ガゴン!.....ゴッ
木刀で斬りつけた一人目は肩から腕がもげた。血を流しながら、転移用の闇にそのまま突っ込んで逃げられてしまった。
二人目は、俺の木刀をモロに頭に食らって顔から地面に倒れ込んだ。完全に気を失た様だ。(何か頭が窪んでる.......いっ生てるよね?......)
三人目は、逃げ足が早く既に居なかった。
「まったく、何だったんだ」
「グガガガガガガガガガガガアア・・・・・・」
「あらま、出て来ちゃったよ!」
(デカイし鎧なんて着込んでいるのか、体長は5メートルってところかな?)
先程と同じ様に木刀をたたき付けた!
バッキーーーーーン
まあ、当然だけど、木刀が折れました......
トロールは、少しは効いたのか、頭を振りつつ俺に目掛けて突進して来た。
「あっあぶ......」
ドッカーーーーーーーーン
あっ俺飛んだわ!
軽い俺は、80メートル位飛んだ。
「グガァアアアアアアアア」
飛んだ俺に向かって咆哮を上げた。
かなり、イラッときた。(砲丸投げじゃ無いだろ!)
ドンッ
俺は地上に降り立った。
「ふう、ダメージは無さそうだな」
「いっちょ、仕返ししなきゃだな」
鎧を着込んだトロールへ向けてダッシュした。
トロールが見えて来た、奴は禍々しい色の大剣を振りかぶり俺に狙いを定めていた。拳に意識を集中させて、奴の懐に飛び込んだと思わせ左に回り込み右足の脛辺りを殴り付けた。
「おりゃっ」 ズドン!
トロールの脹脛に、俺の拳の四倍程の穴があいた。(げっ返り血を浴びた、服が....気を付けよっと)
「ゴギャャャャャャャャャ・・・・・・」
手に持っていた大剣を取り落とした。
(かなり痛そうだな)
(だが、まだまだだ!)
トロールを見上げたとき、トロールの拳が落ちてきた。
ドッゴーーーーーン
「あちちちち」頭に鈍痛が走った、だがタンコブが出来る程じゃ無い。
「こっんの、野郎」
更に拳を叩き込んだ。
「うりゃっ!」ドスッ!ドスッ!
叩き込むたびに、トロールの体が俺の拳大の凹みが出来ていく。(まっ少し加減してるからな、返り血はもう勘弁してほしかった....)
しかし、トロールも動く限り抵抗しながら拳をぶつけて来る。
ドスッ!
「グゴッ」
ドスドスッ!
「グギャゴッ」
まるで、喧嘩だ!殴られたら、殴り返しの繰り返しだ。
トロールの身体の凹みが裂け段々と血だらけになっていく
お互い段々とエスカレートしていった。
ドスッ!ドボッ!ドスドスドスッ!ゴッ!ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドドドドドドドドドドドド・・・・・・・・・
(俺は、何か違和感を感じた......んん?何かもう止まんねーーー!楽しい?)
お互い、血塗れになりながら、鎧を着たトロールは、身体の原形をとどめない程ボロボロになっていった。
そんな殴り合いも、長くは続かなかった。
ドッゴーーン!
振りかぶった拳はトロールの胸の中心部に炸裂して大穴が開いた。もはや何の脈動も感じられなくなり、沈黙した。
「ふぅ....終わったか.......ってやり過ぎか....」
黒マントの不審者を引き摺りながら、ラムを迎えに行った。
「ラム、遅くなった」
「きゃあ...」
「どうした!」
「え?ジョー君?少し背が大きく見えたから...」
「そうか?」
「あと、服が真っ黒だよって......これ血?血なの?」
「ジョー君、怪我をしているの?」
パッパチチ・・・ (ラムさん雷が漏れ出てますです)
「だっ大丈夫だから、この血は僕のじゃ無いから、安心して」
「本当?」
「ああ、本当だ」
ラムに纏っていた雷が霧散した。
「ところでその人は?」
「分からないが、何かトラブっていたのか?」
「この国で?何も無いよ」
「そうか」
「取り敢えず、城へ帰ろう、話はその後だ」
「うっうん......」
俺達は、城へ向かった。
途中、トロールの残骸に、野犬が少し群がっていて、ラムが驚いていたが何事もなく城へ着いた。
城に入ると、モーラが笑顔で迎えてくれた。
ドワーフの森で俺は無駄な殺生はしないと、思っていたのに............あの感情は.........
読んで下さり、ありがとうございました。
次回も宜しくお願いします。




