異形の魔物だね
宜しくお願いします。
何時間経ったのだろうか?いや何日経過したのだろうか?ここの空間は時間の感覚が無くどれ程意識を失っていたのか分からない..........頭痛と吐気更に身体中がバラバラになった様な....今まで経験した事がない程の痛みに襲われていた。
俺の目の前にはザグロスの城下の様子が映し出されており、城下に黒い霧が立ち込めていた。異形の魔物に変わった者が数人見てとれたが、数は少なく鎧を着た兵士にすぐさま倒されて行く。
(この世界では、あの霧の効果はそれ程無いのかも知れないな、それに魔物共......滅茶苦茶弱くないか?....)
暫くすると別の映像が浮かび上がり今度は城下町の上空に青く光る亀裂が生じ、今度は黒い影が這い出て来た。しかし飛べるわけでも無くバラバラと地面に落ちて行き、数千数万の異形の魔物が、地面に降り立つ。
しかしその殆どは直ぐに腐り果てるかの如く、死んで行く......ただ昆虫の様な見た目の魔物だけはノソノソと蠢き出し、王都の民を襲い出した。
(やはり、異界の魔物らはこの世界の環境に適していないんだろうな)
俺は環境に適合していない間は脅威では無いと確信したのだった。
(だが.....もし、環境に適合してしまったら....あのルキフェルの力並みの魔物が何体も出て来てしまったら...この世界は本当にお終いなのでは無いのだろうか.....早く伝えなければ......)
(そうだ!デメララ、デメララは?アレスは?タミア殿下は?)
意識を集中させて、デメララ達の事を考えると、また別の映像が浮かび上がり彼女達が見えてきた。
身体を何とか動かして浮かび上がったその映像に近づこうとしたが俺の身体はまるで思念体になったかのようだった.......しかしアレス、デメララ、タミア殿下はマグマ溜まりのあの場所から無事に脱出できたのだろう。既に城内の中庭にてアレス、デメララの2名は魔物の群れと戦っている。タミアはジョージ王と共に謁見の間にて、兵士達に何かを伝えている姿が見えたのだ。何とかして彼女達の元へ行かなければ....
ラム達は.....
更に別の映像が浮かび上がり、俺の屋敷の様子が見てとれた。チャコ、トゥルス、ディア、ルクリウスそしてラムも勇敢に戦っていた。
今現時点での相手は弱く余裕で殲滅出来ている様だ。
(早く伝えたい......今の世界の環境に適合してしまうと......かなりヤバイ敵だと教えなければ......)
(あああ、もどかしい.......)
(早く駆けつけたい..........)
(何故、俺は動けないんだよ....此処は何処なんだよ....)
動けず、何も出来ず、時間だけが過ぎて行く......
そうして意識が覚醒して既に10日は過ぎた........
映像の数は、思いを寄せた場所がドンドンと増えて行き既に100近い映像が浮かんでいた。
王都の治療院の映像とルクリウス、ディア、トゥルスが細身の男と仮面の女と話している姿が現れた、何やら緊迫した顔をしている様だが、どうやら入院中の男が失踪したようだった。
映像だけで声は聞こえて来ないが、俺も段々と皆の口の動きだけで何を話しているのか理解出来るようなってきたのを嬉しく思う反面、今も魔物の発生は続いており、異形の魔物共をこの国の冒険者や兵士達は軽く圧倒している。その事で段々と緊張感が無くなっていっているのが気掛かりで仕方がなかった.....今の俺に出来る事は何もなく只々只々見守る事しか出来なかった。
そして何故か、ルキフェル達そうアルゴ軍団の幹部と思われる奴達が姿を現さない事が不気味で仕方がなかった。
アルゴ軍団の映像はいくら考えても写し出される事はなかった......
更に時は過ぎ、一年程過ぎた辺りから魔物の数が徐々に減り出した.......
さらに半年程過ぎた頃には、各国で魔物ハンター何て呼ばれる者達まで出て来たのだ。魔物ハンター専用のギルドカウンターも作られ、ランク分けや討伐報酬も取り決められ、魔物ハンターを育成する機関や学校の選択授業まで作られる迄になっている。
いつの間にか、魔物達は洞窟や森や渓谷そして廃墟に潜み繁殖をして、独自の生態系を構築して徐々にではあるが、今の環境に適合し出していたのだった....
そして魔物達はEランクから始まりAランク更にSランクと6段階の討伐ランク分けがされる様になり、あの異形の魔物達は世界に溶け込み出したのだ......
各種族や人族等は笑顔が溢れて活気付いている。ギルドで討伐報酬を受け取ってその報酬で酒を飲み、食事をし、装備を揃えるなど、各種族がなりたい職業の人気ランキングにまで連なる様になっていったのだ。
婚約者達も、俺が意識を取り戻して約1年程は落ち込んではいたが、魔物達の討伐が上手くいっている為なのか、笑顔が見られる様になっていた。
どうやら、ラム、トゥルス、ディア、ルクリウスの四人はパーティを組んで屋敷を起点として魔物ハンターを始めたようだ。
アレスは竜人族の元で何やら巫女の様な事をしていた。きっとマグマ溜まりに落ちていった友人の死に責任を感じての行動だろう。
チャコは大陸にある世界樹付近で同族と共に異形の魔物達を討伐していた。何だか指揮をとっている様なので偉くなったのかな?
デメララはグヤナ国に戻っており、異形の魔物の討伐とフォリナー族の残党を自分の配下に収めつつ魔族間の内戦の対応をしていた。デメララ何だかメチャクチャ強くなってないか?映像を見る限りフォリナー族を圧倒していた。
そうして....彼女達の顔に笑顔が戻って来た時は嬉しく思った......だが1年半も魔物の討伐を繰り返し、自分達の力が通用する相手であり異形の魔物達の実力はこんなものと認識している彼女達に、警告をする者は誰一人としていなかったのだ。
(くそぉ....ヤバイのに....みんなノンビリし過ぎだ!)
(伝えなければ....)
(何か、何か方法が.......無いのかよ........)
(.......................................................)
(...........................................)
(..............................)
(...................)
なんともならない状況が続き、俺の中でも御都合主義の思考が芽生え....あのルキフェル達、化け物共の脅威が去ったのでは?と思うようになっていったのだ........
更に1年後、突如として俺の身体の中で異変が起こり出したのだ。
俺は25歳になったのだ。
爆発的に俺の体内魔力が増大し、成長したのが分かった。まだ身体中の痛みは続いていたが、動かせなかった身体はゆっくりとだが動かす事ができるようになり、頭を振り、腕を回し、足を上げると徐々に意識と身体の動きがシンクロしていった。数時間動かし続けると浮遊感の中で身体が思い通りに動くことを確認するとなんとも言えない高揚感があった。
(やっと身体が動くように....長かった.....)
自分の身体を見渡すとルキフェルにやられた傷跡も無くなっていた。
目の前の映像は相変わらず写し出されている。その数は400にもなっていた。
既に2年半もの間身動きが取れず、只々映像を眺める日々 俺の中で何かが壊れた気もしたが、今は身体を動かす事が出来る喜びに満たされていた。
そして、何かが俺の身体の中で蠢く感触が伝わった。
この異空間で、身体を動かす度にバキバキと関節が鳴る。
(まぁ2年半もの間身体を動かせなかったのだから筋肉が硬直していても仕方が無いか....)
身体をほぐしながらストレッチを入念にする。
んんん?俺は自分の腕を見ると何だか自分の腕では無いような錯覚に陥る。
「何だよ.....コレ....」
腕が...俺の腕が.....何だか二回りほど太くなっていた。
足もやはり太く長くなっている様な?
この空間には地面が無いので現在の身長が分からないが体躯も急成長を遂げている様だ。
顔を手で触りながら確認するが、頭の角を含めて変化は感じられなかった。
はてさて、俺はどうなってしまったんだろ?
闘気を込めると難なく発動し纏う事も出来る。
ただ今までと違う事は、身体を動かす度に身体中の骨や筋肉がビキビキッと不気味な音が鳴り続けるし、睡眠の度に悪夢に魘されるのだった.....
映像の中の一つにラム、ルクリウス、ディア、トゥルス、チャコが映っていたが、何やらフードを被った少年と親しく話している姿が映っていた。
暫く話した後、ラムはその少年を抱きしめていた。
(あの子は誰だ?)
口の動きで読み取るのも限界はあり詳しく知る事が出来ないが、きっと旧知の仲なのだろう。
その少年はプエルト国の王城へ招かれレオン陛下やランプ殿下と親しそうに話している。
(王族か?)
会話の内容は
「おお、ジョーよ記憶が戻ったのか!」
「ええ、ですが最近の記憶は曖昧で....」
「ジョーの記憶が戻って良かったわ」
「僕は、早速婚約者達を迎えたいと思います」
「デメララ?チャコ? ごめんなさい....覚えて無いのです....」
途切れ途切れではあるが、そんな内容だった。
(待てよ!俺の失った記憶をアイツが持っているのか?つぅ〜かアイツは誰だよ!)
何も出来ない俺....只々見守るだけの俺.....
そんな絶望的な状況の中、更に数ヶ月が過ぎラム、ルクリウス、ディア、トゥルスと少年の結婚式が盛大に開催されたのだった。
場所はプエルト国の王城で行われ城の周りには獣人や鬼人、ドワーフそして人族等が集まりお祭り騒ぎになっていた。
「くそっくそっくそぉおおおおおおおおお」
悔しい気持ちが膨れ上がりラム、ルクリウス、ディア、トゥルスの幸せそうな笑顔が映ると俺の頭の中で嫉妬や怒り孤独様々な感情が渦巻き気がおかしくなりそうだった。
(何だよ、何なんだよ!ちくしょう何で気が付かないんだよ!奴は俺じゃ無いんだぞ!)
心の中でいくら念じても念話も届かず俺はこの空間から何とか脱出出来ないか魔法をぶっ放しまくった.....
リミットステート化した俺はプラズマ爆発を全力で、放ちまくった。
108回爆発を起こして俺は魔力切れを起こし爆発による衝撃波と熱波により俺の身体はボロボロになって動けなくなった。
(無様だな.....)
チャコと一緒に大陸へたどり着いた時からの数ヶ月の思い出を振り返り俺は彼女達に何にもしていない、何も叶えてあげられていない、好意は感じているが何処か遠慮している所が彼女達にはあった。
彼女達は俺が失ってしまった記憶の思い出が何より大事であり、その思い出を共有しながら未来へ進みたかったのだろう。結婚式での彼女達は俺が見たことが無いほどの満面の笑みを見せていた。
そして気付いたのだ、今の俺自身が伴侶としては破綻している事に.......
もしもアイツが害意を持っているのならば、彼女達に恨まれても絶対に始末してやる.......
(チャコやデメララそしてアレスはどこだ)
アレスは俺が映像で探しても見つけ出す事は叶わなかった。(巫女を、やっていたけど大丈夫かよ....)
チャコはエルフの国アルメア国に帰っていて、ピニャ姫と共に食事をしている映像だった。
デメララはグヤナ国にいて、何やら魔鏡に向かってブツブツと独り言を言っていた。
「ジョウ....私を忘れおって.........フフフ.........この薬を飲めば思い出すのじゃ........」
(デメララさん....何だか嬉しいけれど......かなりコワイ.....)
皆んなが其々幸せそうな笑顔や普段通り生活している姿を見て少しホッとしたのだった。
読んで下さり、ありがとうございました。
次回も宜しくお願いします。




