要塞だね
宜しくお願いします。
スピッ○バンク・フォートの様な建造物へは、
結界も無く、特に監視がいるわけでも無く無防備だった。しかし要塞内に入った瞬間に空気は一変してキャソックを纏った連中が慌ただしく歩き回っていた。
その後をつけて行き、会議室の様な場所に入って行った。俺とデメララは気配を消して物陰に隠れて話の内容に聞き耳を立てた。
「先日こちらへ向かって航行して来た不審な大型船ですが、我らの領域へは入らず消息を絶った様です」
「ふむ、命拾いをした様だな、我らの海域を侵さなければ放っておけ!」
「はい、畏まりました」
「たっ大変です!」
「今度は何だ?」
「アルマニャックの信徒より連絡が入りました。コニャック島へ向けて捜索隊が向かって来るそうです」
「我等は、この神の加護である濃霧に守られておる、下手に手を出して更に大規模な捜索になると厄介だ、放っておくのが良い」
「はい」
「それでその捜索隊はいつ出たのだ」
「はい、本日だそうです」
「では急がなくても良いだろう」
「いえ....それが...」
「何だ?」
「はいっ!....飛んで来るそうです」
「何だと!それを早く言わんか」
「濃霧に遮られ、上空より発見出来るとは思えぬが、念には念をする。即刻この支部を海底に沈めるぞ」
「更に申し上げますと、先程商船がコニャック島へ迷い込み、我等の捜索隊15隻が向かいました」
「まぁ、いつもの事だあの向岸流で沈むだけであろう、捜索隊にコンパスさえ持たせておけば問題無い!先ずはこの支部を早急に沈めるのだ」
教国の者達は、今まで誰一人助からなかった海域に絶対の自信があったため、確認を怠っていた。その商船が引き返すなど考えもせずに....
更に通路では、慌ただしく教国の者達は走り回り、各々の持ち場へ向かって行った。
(沈めるだと?そんな事が出来るのか...だから今まで見つからなかったのか)
要塞は大きく揺れだし、ゆっくりと海の中へ沈んでいった。
施設内をデメララと探索して行くと、一際目立つ扉が有り、その部屋の扉周辺から微かだがブルボンの街に漂う匂いと同じ匂いがした。まぁ何処を探して良いのか分からんしとりあえず目の前の部屋から捜索する事になった。中の部屋は扉以上に豪華な作りでありこの施設の重要人物の部屋という事が見てとれた。索敵と探知を使うが、この部屋には人の気配は無かった壁面には2つの扉があり個室になっている様だった。大きなテーブルの上には、いくつかコンパスが投げ出されて慌ただしく出て行った様だ.....
「ジョウ、この指輪って...」
「ん?指輪がどうした?」
「エリがしていたのと同じ指輪じゃ」
「間違い無いのか?」
「うむ、間違い無いのじゃ」
(おおお、流石は女子だ!俺では絶対に気が付かなかった....確か互いが近づくと暖かくなるって言っていた指輪だよな、デメララ含め女性陣は熱心に観察していたっけ.....)
俺は、デメララを素直に褒めると、嬉しそうに目を細めて唇を向けて来たが....まぁ気が付かないフリを....ピリリリリッ(ん?何だ?背筋に電気が走った)
何となく、誤魔化せたみたいだったからまぁ良いよね
。
暫くしてこの部屋に向かって来る人の気配を感知したので、部屋の四隅にある柱の影に立ち気配を消しデメララと共に身を潜めた。バレてもQちゃんの精神支配で乗り切ろうと、かなり気楽にして待っていると....
[ ガチャリ ]
いかにもな、感じの初老の男が入ってきた。純白の法衣を纏い、黄金色のストールを掛けていて教国内でも高位の者のように見えた。
「不味い、不味いぞ......」
「鴉供め、何たる失態を....」
(おや?何だかコイツが黒幕なのか?)
(Qちゃん、あの初老の男に精神支配頼めるかい?)
[ うん、やってみる ]
俺の胸元から九尾弧は飛び出し、初老の男の前に現れ、男は一瞬目を見開いたが、直ぐに目の中のハイライトは消え、九尾弧の支配下に落ちた。
[ パパ、完了だよ ]
(ありがとう)
「さて、話して貰おうか?」
デメララには、扉が開かない様に簡易魔法をかけて貰い、俺とデメララそして初老の男を更に奥の個室に入ってから結界と音声遮断を施し話を聞いた。
初老の男はやはり高位の者であり主教であった。布教活動と称してかなり自由に動き回れた様だ。教団本部から送られてくる謝儀を使い込み、隣国のブルボンで自分の性欲を満たす為だけに娼館通い。ブルボンで出逢ったフーリンと言う女性に入れ込み、家財を売り貢ぎまくった。
「何?フーリンじゃと?」
「何だ、知り合いか?」
「娼館におるのか.....まぁ奴の天職じゃな」
「魔族なのか?」
「妾の元におった奴じゃろうと思う」
「そうか、どんな魔族だ?」
「リリンじゃよ」
「淫魔か!」
「まぁ、そうじゃな」
(ご愁傷様.......)
そして初老の男は遂に全ての財を失ったが、まだ懲りずに鴉と名乗る闇金業者から金を借りだした。返済できる筈もなく結局命を狙われる。そこで下した奴の決断は教国の秘匿事項を漏らし商船が何故失踪するのかの謎を打ち明け、商船が迷い込んだら襲撃し、積荷を強奪する。空になった船はそのまま潮流に任せておけば、向岸流により証拠は出ない。彼らが戻らなくても町民は天災にやられたと勝手に思ってくれる。しかし、一度加担してしまったら最後、骨までしゃぶる連中だ。最近ではより正確なコンパスが巷で流通しだして、迷い込んでくる船が少なくなって来た。そろそろ潮時と考えた鴉は、ブルボンで領主になる計画をうち立てた。ちょうど同じタイミングで領主の息子をコニャック島に行くとの情報を入手した鴉は領主の息子を遭難させ鴉の中でも顔立ちの整った者を選抜して息子を無事に返還し英雄になるのだ。そしてゆっくりと、シャラン教国に伝わる宣教を..............俺は聞けば聞くほど、言い知れぬ怒りが沸き起こった。
暖炉の上に飾ってあるA5サイズ程の肖像画が飾ってあったのだが、その肖像画に言葉を失った。
(ラムに似てるな.....)
さりげなく肖像画の事を聞くと、信仰している神使らしい。そして男は我らの信仰している神の話になり始めると、めちゃくちゃ長くなりそうだったので、首に手刀で軽く叩き、意識を刈り取った。
(このおっさん、話ながいわ〜〜〜)
だが、これでトリトンという男の生存する確率は高くなった。しかし、早く助けださなければ、宣教と言う名の洗脳されあのしまう。ただこの主教の裏の顔を知っている者はごく少数で、洗脳に時間が掛かっている様でもある。
とにかく急げば洗脳前に何とかなるかも知れない。早めに かたをつけますかね。
主教には更にQちゃんの精神支配を強化させ、デメララが魔獣の使役にもよく使う服従の呪いをかけこの服従の呪いは太腿の内側に呪刻印が残り印がある限り呪いは解けないというものだった。
後は鴉とのコンタクトの方法だ、この辺りの国は、コンパス造りが盛んなのか、更に鴉専用のコンパスを出して来た。
「どうじゃジョウ、Qちゃんと一緒ならば、殆ど血が流れんかったじゃろ」
「そうですね」 俺は遠い目をして話を聞き流した。
「妾の旦那様は直ぐに実力行使するからの...」
「あ〜〜はい、はい.....おっしゃる通りです」
何だか、居心地が悪くなり俺とデメララは、黒い法衣とフードマントに着替えてから、主教と別れた。今後はデメララの下僕となった主教とは念話で報告を受け取れるとの事だった。シャラン教国の情報も手に入れられるとデメララは胸を張った。教国の情報網は半端がなく凄い、そして全国津々浦々に教会は存在している。主教には、真っ当な宣教師のフリをして、シャラン教国での地位を更に高めてもらう。完全に主教は俺達の駒になってた。もう娼館通いもさせない。(まぁたまには良いか....)代わりに鴉達の間で起きた借金は帳消しだな。まぁ聞いていると鴉供が行なっていた闇金は暴利を貪っているので、心も痛まない。
早速 従者となった主教であるラノーデから快く貸し出された中型船に乗船してコンパスを、頼りに鴉を探しに海に出た。
コニャック島から少し離れた濃霧の中をコンパスの針はブレずに指し示していた。
寸刻すると、白い霧がだんだんと、黒く染まって行き何か大きなものの形が現れてきた。それはとても大きな帆船だった。
「デカイな!」
思わず声が漏れる。
何人の船員が居るかは不明だが、奴等は船の上で多くの時を過ごすのだ、小舟では話にならないか......
俺達はすぐさま飛び移り、船内へと侵入を果たした。
船内は、俺達と同じ格好の者が多く、悪目立ちもせずに、くまなく船内を捜索する事が出来た。
船尾の捜索をしていると、我々のフードマントより明らかに違う豪華な金糸を使った刺繍が施されてフードマントを着込んだ人達が何度も少し大きめの扉に出たり入ったりを繰り返していた。
「デメララ、あそこに重要人物が居るかも知れないな」
「ふむ、間違いなさそうじゃの」
扉の中に意識を集中させてはみるものの、結界なのか中の様子が霞みがかっていてよく分からない....
気配を消して、潜入する事にした。
デメララと俺は部屋の中に入ると、青緑色の髪をしたスレンダーな身体つきの女性が背を向けて立っていた。
そんな中でも、法衣を着た者達が部屋に入って来る。
その女性と話す時はフードを外すので、首筋や手首に鳥のタトゥーがチラリと見えたが、タトゥーの無い者も多数散見された。
忙しなく出入りしていた、者達も徐々に数も減り落ち着いてきた。青緑色の髪の女性は振り返りまるで俺が見えているかの如く話し出した。
「貴方達は?」
(あらら〜〜、バレちゃったか....)
「よう!」
「女の執務室に忍び込むなんて趣味がよろしく無いわね」
「あんたの、返答次第さ」
「あら?何かしら?」
「ブルボンの領主の息子を攫ったろ?」
「ああ、シャランの小物と何やらつまんない事をしているようね」
(見れば見る程、ラムに似ているな...)
「返してくれるのか?」
「どうぞ、ご自由に」
「ただし........」
「ん?」
部屋の空気が重々しくなり、女の纏う雰囲気が冷たく変わる。
「お前は、この世界の鬼神か?」
「さぁね?」
「おい!ジョウ、彼奴からは只ならぬ気配を感じるのじゃ」
「まぁ、私のこの姿を見て何の反応もないしね 。人違いかしら」
「反応?」
「何でもないわ?」
(Qちゃん、頼む)
[ 分かった ]
Qちゃんが精神支配を開始しようとしたその瞬間.....
「あらあら、この子は何かしら?」
Qちゃんの首を掴まれていた。
(ヤバイな!)
鬼神モードになり、縮地を使い女の手を払った。
「痛っ」
「ほぉ〜〜う・・・・その神気やはり鬼神か?」
女は禍々しいオーラを纏い出した。
「デメララ、すまないがQちゃんを連れてトリトンを頼む、そしてそのまま船に乗りアルマニャック島まで先に行け!」
「じゃが....」
「すまないが、頼む」
女は更に、醜悪なオーラを放ち俺と向き合いその瞳から目を背けられなくなっていた。
その瞳、その顔、その髪の色、ラムなのだ、違うと分かっていてもラムなのだ、血を分けた姉妹とかのレベルでは無く双子だ、正に双子の様なのだ。
見惚れていると、女が動いた。
いつの間にか片手には真っ赤な鮮紅色に染まったモーニングスターを握っていた。
「ヒャハハハ、コイツは神族の血を吸えば吸う程強化されるのさ!お前の血を吸ったコイツがどうなるか、ゾクゾクするねぇ〜〜」
(あっこの人、ラムとは似ても似つかない奴だった.....)
少しでもこんな奴が親族のなのかなどと考えた自分を恥じた。
「さて、やるか!」
読んで下さり、ありがとうございました。
次回も宜しくお願いします。




