海域のお伽話だね
宜しくお願いします。
うっくっ苦しい......
「ぷはぁ〜〜」
どうやら、鼻を摘まれていた様だ。
目を開けると、そこにはエメラルドグリーン色の髪をした天使様が居た。
「ラム?」
「昨日、アレスちゃんとどこまでいったの?」
「うううん?.......え?」 寝ぼけた頭だったが、直ぐに覚醒した。
「なななななな、何にもないよ」
「本当?」
「ああ、本当だ」
「よし、ならば許す!」
「脅かさないでくれよ」
「一番は私じゃなきゃ嫌だよ」
「ん?一番?」
「なななななな、何でもないでしゅよ」
「どうしたんだ?ラム」
「それでは、寝ちゃいます♡」
「ああ、おやすみ」
(彼女達とは謎解きしなくちゃいけない事が多過ぎだよ......)
チュン、チュン、チチチチチチ、チュン、チュン
潮の香りが漂い目が覚めると、昨夜の事は夢かと思っていたが、隣にはエメラルドグリーン色の美しい髪をした美女がスヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立てていた。
(ずうっと眺めていたい光景だな....)
[ コンコン ]
「おはよう、ジョウ君」
「おはよう」
「あっやっぱりここに居た」
「ラムの事?」
「うん、昨夜は僕と同室だったんだけど、居なくなったから少し心配で....」
「トゥルス、ありがとう」
「うううん、良いんだよ一応僕達はラム様の護衛も兼ねているんだから」
「そうだったのか」
「え?知らなかったの」
「ああ、教えてくれてありがとう」
「エヘヘ、じゃあ僕は朝食を見てくるよ」
(そうか、護衛も兼ねていたんだ..........ん?..........あっだからか、だからトゥルスは何時も宿屋にはコックも居るのに朝食をチェックしていたのか....)
何だか、思い返すと合点が行く事が多かった。
闘いの場では絶対にラムを前線に出さないもんな....
皆んなは、朝食を食べた後、再度航海に必要な物の調達をしに街へと繰り出していった。
俺は気になっていた東の海域の話を聞く為『オババ』に会いに街から少し離れた樹々に囲まれた少し年季の入った家に向かった。
[ コンコン ]
「はいよ」
「ジョー・タカオカと申します」
「ふむ、入りなさい」
「失礼します」
「あんたが、タカオカかい?」
「そうです」
軽く挨拶をした後、本題である東の海域が何故聖域となったのか、伺った。
お伽話さ!等と少し茶化していたが、伝承をゆっくりと話し始めた。
「儂らは、海の民何て呼ばれていた種族で人族とも少し違っていたのだ。現在では退化してしまい人族と見分けが難しくなったが、エラをもっていたのだ。そして当時、東の海は漁場としても魅力的で海藻から貝類、甲殻類、そして魚種が豊富で村はとても潤っていたのだ。そんな村の繁栄を下支えしていた、神がいたんだよ」
「神の存在かぁ」
「そうだ、その名は『エノシ』と言って我らの大地と海の支配者として君臨されていたのだ。そして『エノシ』には、それはそれは美しい妻『アンフィ』がいた」
「アンフィ.....名前からして美しいな」
「ふむ、その通り絶世の美女と言われている。しかし子には恵まれなかったようだった」
「そんな美しい嫁がいたのだが、あろう事か『エノシ』は『メドゥ』と言うこれまた美しい者と自身の城で浮気をし更に子まで授かったのだ。その話を聞いた『アンフィ』は怒り狂い腹の中の子共々『エノシ』のもつ神器トリティアナで葬り去り、自身もそのトリティアナで自害したのだ」
「何だか、本当にお伽話なの?」(怖いんですが...)
「むふふふ、まだ続くぞ『エノシ』は愛する者達が自分の犯した過ちで失った事を知り、自らを石像に変えて東の海域深くに沈み、『メドゥ』はお腹の中の子までも殺された恨みから悪神になりその憎悪が海に広がり魔の海域を作ったのだと言う話さ」
「そうなんですね、お伽話にしてはリアルで何だか寒気がしました」
「そうか、お主も気を付けよ」
「はい、ご忠告ありがとうございます」
まだまだ、気になる事もあったのだが、時間も迫っていたのでお礼を述べて『オババ』の家を後にした。
俺が港に到着すると [ 緋き絆 ] は揃っていて、皆んなと楽しい食事を終えて船着場へ向かった。
船着場にはダイモスが以前の冒険者スタイルでは無く、まるで海賊?いやいや船乗りの格好をして大きな船の前で待っていた。
「ダイモス殿」
「ああ、ルクリウス様、おはようございます」
「ふむ、とても立派な船だな」
「はい、ホセイド様が外海に出る時に使う特別な船なんです」
「嵐もへっちゃらですよ」
「それは、心強いな」
「へへへ、褒めていただきまして、ありがとうございます」
「乗組員は?」
「はい、総勢31人集まりました。皆んなベテランですですが一人若いのが混ざっていますが、こいつはイオって言いまして、メチャクチャ目が良く、天候の変化の先読みができるんです」
「すごいな、魔法かな?」
「さぁ〜それは教えてくれないのでなんとも言えません」
「そうか、まぁ人に話したくない事もあるか...」
31人の内8人が女性でどうやら、身の回りのことやら、食事を世話してくれるらしい。
「さて、これから少しの間お力を貸していただきます。そして双子島までの間よろしく頼む」
「「「「あいよ!任せな!」」」」 (やはりルクリウス様はカッコいいな...)
「流石はルクリウスだな、気性の荒い船乗り達を統率してる」
「あの〜〜・・・」 船員の一人が話し掛けて来た。
「ん?」
「昨日は、酔っていたとはいえ大変申し訳ございませんでしたぁ〜〜〜〜」
何だかゴツい体の船員が4人程土下座をして来た。
「ん?何だっけ?」
「あっあ〜〜! ジョー君!昨日私が絡まれた人達だよ」
「あっあ〜〜、そうなのか?」
「はい、あんまりにも美しい女だったんで、正気を無くしちまいました」
「何だと?ジョウに喧嘩を売ったのか?」
「へい」
「お前達、命があって良かったな。怪我はしていないのか?」
「ははは、実は俺達の大将が腕を潰されました」
「はぁ〜〜・・・まぁその位で済んで良かった」 (ルクリウスさん?ちょっと言い過ぎでは?)
「その大将はどうしてるんだ?」
「へい、タイタさんは家で寝込んでます」
「ここに連れて来い」
「え?ルクリウス様、本気ですか?」
「タイタは操船に必要な人であろう、ホセイド殿やダイモス殿からも性格に難があるが優秀な人材だと聞いていた」
「ディア、すまないがタイタの治療を頼めるか?」
「ええ、良いわよ」
「すまねえ、直ぐに連れて来る」
ヨロヨロとしながらタイタは仲間に連れられてやって来た。
「全く、貴方は誰に喧嘩を仕掛けたと思っているのですか?」
「申し訳ございませんでした」 (あららら、デッカい熊の様な男が縮こまってプルプルしているよ)
「ディア、頼む」
「はいはい、ルクリウスの仰せのままに」
先ずは、潰れた腕の痛みを和らげた。後の処置は時間が少しかかる様なので出航してから行う事になったのだ。
早速船に乗り込んだ我ら [ 緋き絆 ] は双子島へ向かった。
今から向かう、双子島には、それぞれアルマニャック島とコニャック島と呼ばれていて見る角度によってそっくりな島なのだそうだ、そしてその周辺では何故か晴れない濃霧が発生しており魔術や魔法等も通用せず感覚は狂わされるのだそうだ。アルマニャック島に上陸しなければならないのだが、誤ってコニャック島に上陸しようとしてしまうと二度と帰ってこれなくなるらしい。別の人からもコニャック島は無法地帯で危険な魔獣が住み着いているとのもっぱらの噂で誰も近寄ろうとしないらしい。
天候にも恵まれ、航海は順調だった。航海2日目にはタイタの腕の骨も修復され見事な幌さばきで船は一段と加速して進んだ。
航海から3日目、遂に濃霧地帯に入っていった。
船員のイオの出番だ。彼は今まで双子島の上陸ポイントを間違えた事は無く大変優秀な船乗りでる。濃霧をものともせずに、突き進み数刻ののち島が朧げに見えて来た。
「ふぅ〜〜、イオお疲れさん」
「エヘヘへ、まかして下さいよ」
「よし、上陸するぞ」
アルマニャック島の港に船をつけ、俺達は無事上陸を果たしたのだ。
「ジョウ、何だか呆気なく上陸出来たな」
「ああ、この船員の達の実力が凄いんだろうな」
「無事に到着して何よりだな」
「よし、そろそろ日も暮れる宿屋に泊まるか」
「「「「「おー!」」」」」
「この度は、色々と助かりました」
「まぁ、コッチも迷惑かけてすまなかったな」
数日寝食を共にして分かった事は、皆んな悪い奴らでは無かったって事だった。
早速宿屋の風呂に入り寛いでいると......
「大変だぁ〜〜」
「ん?何だか声が聞こえるな」
「何だろうか? 」
「風呂を出たら見に行ってみるか」
「オラもジンと行く」
「ああ、行こう」
風呂を出た俺とチャコは港へ向かった。
「おい、おい、こりゃあ〜幽霊船かよ」
「ジン、何だか血生臭い匂いが.....」
「ああ、とんでもねーな」
その幽霊船を囲むように村人達が集まっていた。
「これは、どうしたんだ?」
「ああ、タカオカさんかい、この船は先月から帰って来なくなってた、トリトン号でブルボン領主の倅の船だ」
「アイツら、黙って出てっ行ったって噂されていたけど、コニャック島に上陸しちまったんだろうな....」
「もう、あかんやろな....」
「おい、彼処に誰かいるぞ?」
「ん?ほんまか?」
「ああ、心音が聞こえる」
「どこ?」「船尾の所だ」
「よし、調査だ!人を集めろ!」
「いや、今にも止まりそうだ、俺が行って来てやる」
「タカオカさん.....」
俺は心音のする方角を目指して跳躍した。
船尾に穴を開けて船内に侵入した。索敵には何も反応はなくその船室に入ると、鼻をつんざく強烈な刺激臭がした。
「うっ!何だ此処は」
「オラ知ってるぞ」
「あら?チャコついて来たのか」
「ああ、一応オラも元船乗りだからな」
「この匂いは?」
「多分食料の貯蔵庫で主に発酵させた物を保管している場所だと思う」
「そういう事か」
天井からはニンニクやら大根が吊るされていた。
漬物の樽の中から心音は聴こえて来ていたので樽の蓋をそっと開けると、中から、金髪の少女が出て来た。
「なぁジンまだ、助かるかな?」
「よし、樽ごと皆んなの所へ運ぼう」
俺は、樽を担いで皆んなの所へ持って行った。
「おい、この子が生存者だ」
「コイツァ〜〜」
「知り合いか?」
「あああ、あの跳ねっ返りやんか!」
「え?」
「ダイモスの娘ですわ」
「マジ?」
「ディアを呼んでくれ!」
「なぁに、ジョウ?」
「ディア、来ていたのか」
「うん、皆んなね♡ビックリしたわよ突然チャコと出て行っちゃうんだから」
「ああ、すまなかった。 今は急を要するんだ、あの樽の中の少女に治療を施して欲しい」
「うん、いいわよ」
人垣を掻き分けて、樽まで来ると、ダイモスが膝をついて泣いていた。
「ダイモス、そこをどいてくれ」
樽に少女を入れたまま、先ずはディアが状態をチェックする。すると....
「へぇ〜樽から出さなくて正解ね」
「どうした?」
「ジョウ君程では無いけど、結界が張ってあるの、無理に出すと樽ごと破裂するわ」
「そうか、ならばどうすれば良い?」
「こんなの神気を流せば一発よ」
ディアから暖かな淡いピンク色の光が放たれ樽を包むと、金髪の少女の顔色も少し良くなった様に見えた。
「これ以上神気を流すと、人族の身体は持たないわ」
「後は、ラムさんの回復魔法の方が良いと思うの」
「ラム」
「はーい」
「頼めるか?」
「モチロン♡」
ラムから放たれる淡い緑の光も身体の奥からポカポカとして来る。近くに居るだけで、俺まで元気になってくるから不思議だ。
ダイモスはまだグスグスと鼻を啜っているが、もう数時間ラムは回復魔法を行使していた。額から薄っすらと汗が滲みそんな姿も美しい....
(あっ俺ヘンタイじゃないよ) 誰に言い訳を言っているのか分からないがラムを見守った。
「うっうっ・・・・・」
「おおお!」 まわりがどよめいた。
「お嬢?」
「うっ・・・・・・」
「おい! エリ なのか?」
「・・・・・ん?・・・お・と・う・さ・ん・?」
「ああ、ああ、ああ、そうだよ」
「何とか、一命は取り留めたみたいだな」
「ありがとう、ラム」
「エヘヘへ、私は大丈夫だよ」
「よしよしして?」
「ああ」
俺がヨシヨシしていると、ディアが不服そうな顔をして来たので、ディアにもヨシヨシ、するとチャコも抗議の目を向けて来たのでヨシヨシをした。
その光景を見ていた、デメララ、アレス、トゥルス、ルクリウスまでもが..........ヨシヨシをしました。
読んで下さり、ありがとうございました。
次回も宜しくお願いします。




