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船旅だね

宜しくお願いします。

船員2人だけの船としては大きいが、航海はとても快適だった。

帆の調整は俺の役目だが、風がない時は、チャコの風魔法で前に進め、食料は、海の中に幾らでもある。

船旅がここまで良いもんだとは思わなかった。

更に、チャコには天候を敏感に感じ取る事も出来るので嵐を避けつつ航海を続けることが出来る為、水平線の先に未だ陸地は見えて来ないが、気持ちは明るく楽しい船旅を続けた。


数日を海上で過ごしたのだが、又胸騒ぎがした。


意識を集中させると、今回は大きな船が4隻も航行しているようだった。


「チャコ!」

「何?」

「島にやって来た、魔族が乗船している船が近くにいるんだ。気をつけて行こう」

「うん」

チャコの身体が、ガタガタと震えていた。

(やはり、以前の体験が相当怖かったんだろう...)

俺達の船とは、まだかなり距離がある。

(多分気付いて無いのだろう、彼奴らの後をついて行けば、大陸に着けるかも知れないな)


自分の感覚を研ぎ澄まして、魔族の船団の後を追った。


「なぁなぁ....オラ怖〜よ!やめないか?」

「気付かれてもいないし、今の所陸地へ向かう最善の方法だと思う。それに、チャコは俺が必ず守るから」

「えへへ、分かったよ...任せたからな」

「ああ」


船団は全く俺達の事など気付きもせずに航行を続けた。


それから2日目の朝だった。遂に陸地がうっすらと見えて来た。

「おい、チャコ!陸地が見えたぞ!」

「ん?ふぁ〜〜〜〜」 大きな欠伸をして目を覚ました。

「え〜未だ何も見えないよ」

「え?そうなの?」

「そうだよ、ジンは規格外過ぎなんだよ!普通は見えないよ!」

「ああ、そうなのか....すまん....」

「謝るなよ!えへへへ」

「ハッハハハハハハハハハ」

「やったな!遂に陸地が見えたんだよな」

「ああ、そうだ!」


「ひぃやっほ〜〜〜〜〜〜〜〜」


俺達2人は抱き合いながら喜んだ。


「さてと、魔族船団に見つからないように離れて上陸しよう」

「おう!」


又嫌な感じがした。


空がキラッと光り、何かが高速で落ちて来た。

「チャコ、伏せろ!」

「へ?」

「良いから!」


[ キイーーーーーーーーーン ]

耳鳴りの様な甲高い音と共に、犬鷲型の魔族が突っ込んで来た。


(ヤバイ!チャコだけでも......)

「ウガアアアアアアアア」 俺は雄叫びを上げた。


身体から、感じたことの無い、いや忘れていただけなのかもしれない力が溢れ出して来た。


(身体中が熱い、熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い)

黄金色の光が身体を覆い尽くした。


[ バチッバチチチチチ ]


突っ込んで来ている魔族に意識を集中させると、時間の流れが遅くなったかの様に鳥型魔族が動きが見える。船を壊されては堪らないので、俺は魔族に向けて飛び上がった。


[ グシャッ! ]


魔族の喉元に光を纏った拳のカウンターを見舞った。


首が折れたのだろう、胴体と頭がまるで紐で繋がれているだけの様にプラプラと揺れながら海に落ちていった。


[ ドッパーーーーーーーーン! ]



俺も魔族の体当たりの反動で飛ばされて海に落ちた。

暫くして、海面にまで浮上した時、既に犬鷲型の魔族は浮遊していた。

ピクピク・ピクピクと痙攣しながら白眼を剥いていたが、まだ生きていた........


(頑丈な奴だな....) 全身を覆っていた光を腕に集中させる様にイメージすると、拳がプラズマに包まれた。

(何だコレ?)

プラズマを纏った拳で、未だ痙攣している魔族を掴み上げようと触った瞬間....


[ バチチチチチッ ]

黒い煙が上がり、死にかけていた魔族は消滅した。

(何なんだよ!いったいこの光は....身体を纏っていた光は霧散した)


「結構呆気なかったな.......さてとチャコは?」


チャコと船は光り輝く球体に覆われて、無傷だった。

(またか、結界みたいなものみたいだな)


「...................」


「チャコ、無事で良かった」


「...................」


「ん?チャコ、どうした?」

「ジン、ヤッパリ普通じゃ無いよ....」

「そうか?」

「神族なのか?」

「はぁ?・・・馬鹿言っちゃいけないぞ、俺が神様だったら色んな事を忘れたりしないだろ」

「そっそうだよな....」

「オラから離れて行かないよな....」

「ああ、俺はこの先もチャコの親友のジンだ!」

「何で身体が大きくなっているんだ?」

「おっ!本当だ、でも力が溢れて来るんだよ」

「不思議だ、でもさっきの光はとっても綺麗だった」

「そうなのか?」

「うん.........」


「さて陸地に向かおう」

「おー!」


厄介な鳥型魔族を特に警戒しつつ陸地を目指した。


魔族船団の方角より、血の匂いが漂って来た。

暫くすると、海の潮目に沿って真っ赤に色づいた帯が俺達の横を流れて行く。


「この匂いは、まさか....」

「ジン、コレって.......」

「ああ、血だ!そして半端では無い程の血だ!」

「オラ、怖えよ....逃げよう、ジン......」

「ダメだ!もう俺はあの魔族達を許しちゃおけない」

「何でだよ!」

「さっきの犬鷲型の魔族や鴉型の魔族とか、問答無用で殺しに来る奴らだぞ」

「放っておいたら、俺の思い出せない大事な人達にも危険が及ぶ事になるかも知れない」

「何だよそれ、意味が分かんねーよ!」

「まぁ、要は俺が!どうしても!許せないんだ!」

「このまま、見ない振りして逃げちまったら、俺が自分を許せないんだよ」

「..........」

「安心して待ってろ!死なないから」 (何だか分からないけど、死なない自信があるんだよな)

「はぁ〜〜〜〜もう!勝手にしろ!絶対に生きて帰って来いよな」

「ありがとなチャコ、ちょっと行って来る」


チャコと船を守りたいと願うと、また光の球体で包む事が出来た。 (本当に、こりゃ結界だな)

そして、魔族船団に向き直り、少しだけ海面から見える磯を足場にして跳びながら魔族の船団に向かった。


近づいて行く度に、死体が浮かんでいる数が増えていく....

「マジかよ!こりゃあ..........まさに地獄だな......」

戦っている者達が見えて来た。

魔族と戦っているのは、どうやら人族でチッポケな木造のカヌーと竹槍の様なか細い武器を持った軍団だった。

一方魔族は斧・弓・大剣等様々な武器で武装して、装備の違いも大きいが、まるで魔族は掃除をしているかの様な一方的な蹂躙劇だった。


「グハハハハハハハ、この土地は魔人様の土地となるのだ、お前達の様な、か弱き人族がこの土地に住んで良いわけが無いだろう!」

「グヘッグヘッグヘッグヘッグヘッグヘッ、新しい武器の試し切りに丁度良い・・・」

「ふん、弱い、弱過ぎる!」

「グヘへへへ、人族は本当に繁殖力がありやがる、ウジャウジャいるぜ......」


「皆んな!諦めるな!必ず、必ず、必ず、生き残る方法がある筈だ!」


[ ザシュ! ]


大声で奮起させていた男は敢無く魔族の大鉈で切り裂かれた。


(何だ!コレが戦争なのか?.....魔族のやり方なのか?この光景は.....コイツらは魔族?そして魔人だと?.....謝れば許すのか?...否!....和解をさせる為に、話し合うのか?.....否!)

(俺は、俺は!鬼だからな!取り敢えずイラつく奴をぶっ倒す!)


人族を守りたいと願った時、また光の球体が彼等達を包んだ。


そして俺は......


「やってヤローじゃ、ないか!」 (不思議と恐怖心が湧き上がってこない....俺って...バケモノなのか?)


魔族の群れの先頭に割って入った。


「誰だ?お前!」


「俺は、鬼人のジンだ!」


「お前は、馬鹿か?ハ〜〜〜〜〜〜ハッハッハッ!」


「おい、頭のイカレタ鬼人の男が来たぞ!」

「楽しませてくれそうな奴なのか?」

「よく分からんが、人族よりはマシじゃね!」


「俺から行く!まぁ、死ねや!」

鉈で斬りかかって来たが、その斬撃を身体に雷を纏った俺は肩で受け止めた。


「何ダァ〜〜お前ぇは」


「だから、ジンだっての!.....因みにお前の得物は斬れ味、悪りーな!」


「んだと、コラァ!」


身体に纏った雷を更に増大させ圧縮するとプラズマとなり、目の前の魔族に放った。

落雷の音と共に、目の前にいた魔族の40人程が、蒸発した。そして船団の一隻にその放った光が当たり船首が無くなった。

同時に俺を包んでいた雷も霧散した。


船首を無くした魔族達や他の船の魔族達も明らかに動揺しているのが見て取れた。

(ヤバイ!楽しくなって来た。死ぬかも知れないのに、何故か心が躍る!何でだろう....)


「.....とにかく、魔族は殲滅だ!」


先ずは、船首を無くした船へ飛び移った。

虚を突かれた感じで、右往左往していた。

取り敢えず、俺に向かって来る奴らから、手当り次第にぶん殴って殺していく!

船団全体を探知して何か人族が囚われて居ないか等を一応調べたが、特に居ない様だった。


[ ドバンッ! ]

大きな木製の扉が勢い良く開け放たれた。


「ダレダ〜、俺の眠りを妨げたのは?」

(あれは、キュクロープスか!)

「オヤァ〜、お客さんか?」

漆黒の鎧を着ている、一つ目の巨人は見る限り動きは遅く、そこまで強そうには見えなかった。

(デカイ、ダブルヘッドアックスが得物か!)


「オラ〜ッ!」雄叫びと共に、アックスを振り上げた。

巨体に似合わず、寸瞬で距離を詰めて来た。


[ ガシュッ! ]


俺は避けたつもりだったが、右の目尻がザックリ切れた。

「チイイイッ!」

血で右目が見えなくなって来た。

奴の得物を良く見ると、七色に輝いている武器で、魔法が付与されている様だった。


(クソォ〜〜ッ! 油断した!)

(最近無双していたから、無敵と勘違いしてたな!)


「アラアラ?鬼人、お前弱いぞ!」

「クッ!」


[ ウォリャーーーーーー ]

拳を振るったが、アッサリ止められた!


「マジかよ!」

「オマ〜エ!良いパンチ持ってるな、だが未だ未だだぞ」

「このヤロー!」


俺は跳び上がり、キュクロープスへ向けて飛び蹴りを叩き込んだ!

「オマ〜エ!全然ダメ!面白くない!」

「蹴り〜はこうだ!」


[ ドガン! ]


「ぐおっ!」 俺の鳩尾に蹴りが入った!


[ ピューーーーーー ・・・・・ゴツッ! ]

飛ばされて、自分で作った人族側の結界にぶち当たり、海に落ちた.....

(ヤベエ、全然相手にならない)


[ モット チカラ ガ ホシィ ]


「ん?」 (何かが聴こえた気がしたな....)

(何だ?俺の全身を静電気の様な、痺れが走った)

(何なんだよコレは?)


身体から、電気が迸り以前の光とまた違った。


「何ん〜だぁ?お前面白いじゃんかよ!」

キュクロープスが又、高速移動して俺の胸に飛び込んで来た。しかし、今度は全ての動きが目で追える、避ける事も容易いが......


[ バキンッ! ]


カウンターでキュクロープスの顎を砕いた。


「ゴボアアアアアアアア」

キュクロープスの口から滝の様な血が流れ出た。

「ガボボ〜ガボガボ」

「何言ってるか、分かんねーよ!」

俺は手当たり次第に殴り続けた。

[ バキキキキキキキキキ・・ボキッグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャグチャ ]

殴りまくっていたら、皮膚を貫き、筋組織が見え、更に骨を砕きまくっていた。 (げっやり過ぎたか、ちょっとグロい.....)

キュクロープスは完全に赤い肉塊になっていた。

右手の拳にプラズマを纏い肉塊に触れると一瞬で蒸発した。


残すと面倒なので、船上の死体の処分も兼ねて炎を拳に纏い火を付けた。


「さぁ、次だ!」

別の船に飛び移ると、待ってましたとばかりに襲いかかって来た。


ただしこの船にはキュクロープスクラスの魔族は居なかった為、殲滅は楽勝だった。火を放ち次の船に飛び移ろうとした時......


[ ドッカーーーーーーーーン ]

火薬を満載していたのだろう、大爆発が起こった。

一隻の船を巻き込んで、炎上し残るは一隻となった。


「一番デカイ船が最後に残ったな!」


「ほ〜う、鬼人如きがこの船に乗り込んで来るとは、命が惜しく無いようだな」

「魔族が、何を言ってやがる」

「ふん、我らは魔族では無い。この世界を統べる大いなる存在なのだよ」

「大いなる存在だと?」

「我らは、魔族と獣人族を超えた存在になったのだ!」

「魔族と違うのか?」

「下級魔族共はこの船の船員として働かせている」

「別の船に居た斧を振り回していたデカ物は同類か?」

「ああ確かにな」

「キュクロープスは馬鹿だった故にお前の術中に嵌ったのであろう。通常戦闘ではまず敵うまい。聞きたいのだが、何をした」

「拳でボコっただけだ」

「嘘が下手だな、鬼人の男よ」

「まぁ良い、お前は此処で死ぬのだからな」

「俺はまだ死にたくは無いから、抵抗させてもらうぞ」

「ふん、苦痛にもがき苦しみ、殺してくれと願い出るまで甚振ってやる」

「..........来い!」


「シャラララララララララララ」 奇声を上げた魔族は、海中からトライデントを握りしめた魚人の群れが襲いかかって来た。

不意を突かれたので、何度かダメージを受けたが、動きに慣れてしまえば、単に船上を飛び越えて来るだけの単調な動きなので、動きが読めてくる。魚人が海に戻る前に此方側もダメージを与えるチャンスなのだ、しかし腕の長さだけでは効率が悪い、1体2体ならば何とかなるのだが、こう数が多くては.........

苦し紛れに船のマストをへし折りマストを振り回す事で、腕の長さを補った。

(何だか、棒術を俺は使えていたみたいだな、振り回していると、何だかしっくりくる)

魚人を5体程倒した時マストは粉々に砕けてしまった。

(不味いな.....)

「鬼人よ、中々頑張るじゃないか!」

魔族は更に何か詠唱を唱えた。

「魚人の親玉の足が鯨の様になり、巨大な金色のトライデントを出現させて海に飛び込んだ」

「おい、この魔族が、逃げるのか?」

「シャララララララ、鬼人の男よ我らフォリナーは魔族では無い、魔族、獣人族を統べる者だ!」

「フォリナー?....」

相変わらず魚人の攻撃は続く。

(クッソ、俺にも何か武器が.....有れば.....)

考えた瞬間に、右手の掌から金色の龍の装飾が美しい、真紅の棒が生えてきた。

(なっなななな何だ?.........俺の武器なのか?)


出て来た武器を手にすると、手にしっくりと馴染み振り回してみると身体が勝手に型を取る。

(棒術のスキルだろうな)

魚人の群れは更に高速になり仕掛けてきた。


棒を振り回すと、突風が起き斬撃を飛ばす。更に高速で回転させていくと、竜巻の如く捲き上る風の暴風は魚人達を根こそぎ巻き上げた。


後は重力に任せて落下して来るだけなので、紅き棒を使い全てを粉砕し、殲滅していった。 (楽勝だな!)


[ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ]


巨大な渦巻きを起こし、足場にしていた船ごと渦に飲まれて行く。


「我の眷属達をよくも!」


「おいどうした!俺は全く甚振られていないが?これで終わりなのか?」


「黙れ!黙れ、黙れ、黙れ!」

フォリナー族の、足が鯨の様な尾になり巨大な魚人に姿を変えていた。


「鬼人よ、我のグラウコスの力知るが良い」


海面から飛び上がったグラウコスは、尾羽で船を破壊して来た。

「はい、此奴も馬鹿決定〜!だな!」

(海に引き摺り込んで闘えば良いものを、飛び上がったら、ただの的だって〜の!)


紅き棒を振り回して、グラウコスの尾羽を切断した。

(身体は、キュクロープス程、頑丈では無いな)


「グギャアアアアアアア〜〜〜〜」


海が、グラウコスの血で染まる。


先程の攻撃で、船は破壊され瓦礫が浮いている程度になっていたが、まだ何とか足場を確保できた。


上空から、犬鷲型の魔族が又攻撃を仕掛けて来た。


「何だ?」

探知を広げると、まだ3隻の魔族船団が向かって来ていたのだ。

索敵を使っても、グラウコスやキュクロープスとか言われていたフォリナー族はいない様だ。


(おっし、奴らの船まで跳んで行くか)

[ ガクガクガクガクガク ] 俺の膝が笑う...

「チィッ! 乳酸が溜まり過ぎたみたいだな」


「シャラララララララララララ」


「お前突然、動きにキレが無くなったな」


「チィイイ」


尾羽を無くしたグラウコスだが、トライデントを持ち直し、襲いかかって来た。


[ ドカッ ] [ ザシュッ ] グラウコスの連続攻撃は止まらない。しかも、足場も悪い、避けようにも足に力が入らない。


(これはかなり、ヤバイ!)


[ モット チカラ ガ ホシィ、モット、モットだ! ]


「くそ!この声は鬱陶しいぜ!」


[ バキッ! ] 犬鷲型の魔族の体当たりをまともに食らった。


「全く何なんだよ!力があるなら俺によこせーー!」


[ ドッパーーーーーーーーン ] 俺は海に落ちた!


[ ドックン! ドクンドクンドクン ]

心臓の鼓動が早鐘を打ち、俺の身体が熱く熱く熱くなってきた。

全身に炎を纏い出した。

(海の中なのに、炎って........)


俺の記憶は此処で途絶えてしまった。

読んで下さり、ありがとうございました。

次回も宜しくお願いします。

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