一人旅だね
宜しくお願いします。
チュン、チュン、チチチチチチ、チュン、チュン
まだ薄暗いが、目が覚めてしまった。
何故か、俺のベッドに[ 緋き絆 ]のメンバーが全員集合していた。
この楽園とは、しばしの別れだね。
ベッドから起き上がると、トゥルスも目を開けて起き上がってきた。
「起こしちゃったかい?」
「うううん、僕はあんまり寝られなかったから、気にしないで」
「そうか....」
何だか、無言が続いてしまった。
「ジョウ君、頑張り過ぎなきように、頑張ってね♡」
「そうだね、ありがとうって......」
抱きつかれ、キスをしてきた。
「僕達、婚約したんだよね、何にも問題ないでしよ」
「ああ、そうだよね」 ドキドキ
朝の鍛錬に行こうと服を着替えていると、何やら刺さるものが.....
「「「じぃ〜〜〜〜じぃ〜〜〜じぃ〜〜・・・」」」
この視線は.....
「「「「トゥルスだけずる〜〜い!」」」」
「そっそんな、いや待って、ちょっと待って欲しい」
「僕はそんなに、えっとみんなの前では出来ないよ」
「「「「分かった」」」」
(良かった、皆んなの物わかりが良くて助かった)
「じゃぁ順番で!」
「うん、ありがとう。そうだよねってって!ちがーーーーーーーーう」
結局我ら[ 緋き絆 ]は何事も、不公平は許され無いのだ。
遂に美味しい朝食も食べ終わり、俺は皆んなに挨拶をして門を開けた。
「行って来ます」
「うん、私達は私達のやるべき事をやるからね」
「帰って来たら、いっぱい、いっぱい甘えさせてね」
「ああ、分かった」
俺は、今までのルートでは無く、王都の西側を通過して、魔族領経由で、バルバドへ向かう事にしたのだ。
意外と、一人も楽でいいな。何て思っていたのも束の間で、何だか面白く無い!荒野を歩いていても索敵に引っ掛から無い。
「うむぅ〜〜もっと魔獣が襲って来て、僕の経験値が上がると思ったんだけどね」
[ お屋形様 ]
「ん?サラちゃん?」
[ はい、魔獣は近付いてなんか来ませんよ ]
「何故?」
[ それは、野生の本能です ]
「ふ〜ん、そうなんだ...」
「何だか、只々歩いているだけなので、つまらなかった」
「ん?」
「探知に何か引っ掛かった」
(よし!やっとイベントだ!)
走ってそのポイントに向かった。
あまり見かけ無い服を着た、人族の荷馬車が何かに襲われている様に見えた。
黒くボロボロのマントを着た人ならざる者、アンデットだった。
ボコボコと地面から湧いて出て来る様は気味が悪かったが、一応鬼神モードになって近付いていった。
「どうしたんだ?」
「くっそ、新手か?」
「我らは、お前らの様なバケモノや亜人に屈しはしない」
(亜人って俺の事なんだろうな...)
「何だか、嫌われている様だから、放って置くか....」
俺はその場を後にして、200メートル位離れた岩の上から彼らの動向を伺った。
「さて、どう出るのかな?」
襲われていた、人達とは別に、馬に乗った黒フードの集団が襲われている荷馬車に近付いて行く。
(おっ!救援かな?)
「おい、大人しく荷を此方に寄こせ!」
「我ら、[ 黒い牙 ]が頂戴しに来た」
「おい、早くアンデットを退かせろ!」
「はい、直ぐに...」
「どうしたのだ、荷を寄こさない気か?」
「あたり前だ、お前達の様な盗賊いやコソ泥風情に奪われる訳には行かないのだ」
「隊長、おやめ下さい、それは命と引きかえにする、召喚魔法では?」
「ああ、そうだ我ら人族の希望、女神を顕現させる」
白銀の美しい鎧を着た騎士は片手に縦30センチ程の金色に輝くダイヤモンドカットの水晶を持ち叫んだ。
「ホーリー・ダイナ!」
辺りは光で包まれた。次の瞬間に男は、糸の切れた人形のように崩れ落ちた。
光の中に立つ、何だか阿修羅にしか見えない4面の顔を持つ大きな仏像の様だった。
4面の顔は、笑い、悲しみ、怒り、能面、だった。
(普通は3面だよな?.....気味が悪いな)
倒れた騎士に能面部分が近づき、光を放射すると、 グネグネと倒れた騎士が立ち上がった。
「おおお!隊長、無事でございましたか?」
「ちぃ!」
「おい、あのダイナとか言う女神を消せ」
「アンデット・ナイト!行け!」
アンデット・ナイトは、ホーリー・ダイナに向けて大剣を片手に襲いかかった。ダイナは...
「タンクイア」
と唱えた。するとアンデット・ナイトの大群は瞬く間に、光の塵へと変わっていった。
「くっ浄化魔法か!」
だが、ホーリー・ダイナと呼ばれていた女神は、アンデットを浄化する度に、輝きを失っていき黒ずみ出した。
しかも、隊長と呼ばれた男は、変な動きをしながら、味方に斬りかかり出した。
ホーリー・ダイナも敵味方関係無く、殺戮が始まった。
(おいおい、不味いかな?やっぱり俺が行くか)
ホーリー・ダイナは、[ 黒い牙 ]のフード連中を4人と、呼び出した側の人間にも攻撃を仕掛け、2人の命を奪っていった。
[ 黒い牙 ]は更にアンデットを召喚して送り出し、ホーリー・ダイナが浄化する。するとホーリー・ダイナは完全に黒き姿に変容した。
「リブレ様早くお逃げ下さい」
「くっそう!仕方がない、出直すぞ」
「なに!リブレだと?」
俺はある黒フード同士の会話を聞き逃さなかった。
ラムの所から確か鬼神の核の入ったペンダントを盗もうとした、コソ泥か。
(やっぱり、あのリブレは許しちゃいけないな)
リブレ達に詰め寄った。
黒フードは、詠唱を唱えて火や電撃、短剣を飛ばしてきた。
リィパルシャン [ 障壁魔法 ]を張り全てを弾いた。
うっとおしいので、黒フードの連中をバウンダリゾーン [ 結界 ]の中に閉じ込めた。
次は、ホーリー・ダイナと向き合ったが、やっぱり味方?に攻撃を仕掛けていた。
「おい、そこの女神はどうするんだ?」
「クッソゥ!ダメだ消せないのか?」
「ダメです、召喚した術者が何かしらの支配を受けてしまっているのでどうする事も出来ないのか?」
「召喚した、隊長を葬れば....」
「ばっ馬鹿な事を....」
ホーリー・ダイナと呼ばれていた巨大な女神は完全に魔物になってしまった。
術者の男を手に取り上げ肩に乗せるのかと思って見ていると、口の中に押し込み喰ってしまった。
(マジかよ、グロいな...ラム達に見せなくて良かった)
「もう、ダメだとにかく逃げるぞ」
「おい、あのホーリー・ダイナとか呼んでいたモノは倒して良いのか?」
「何だお前は、どこの亜人だ」
「僕は、ジョー・タカオカあんた達を、助けたいと思っている者だ」
「なっ何だと?........どうにか出来るのか?」
「やってみなけりゃ分からない。だが、僕は非力では無い」
「我々では、どうしようもないのだ。出来るならばお願いしたい」
「やってみるよ」
「一応、あんた達にも、巻き込まれてけがでもしないように結界を張らせてもらうよ」
「なっ何を!」
グチグチ五月蝿そうだったので、とっとと結界を張った。
そして、めんどくさそうだったので、盗賊も含めて、視界を遮断した。
「さぁ〜〜て、天使は強いのか?」
(何だか、動きはノロそうだな?)
[ ジョー、油断は大敵だよ ]
(この天使は強いのか?)
[ 天使の中では、中堅かな?だけど何だか邪悪なモノを感じるから気を付けてね ]
(ああ、サンキュー)
俺は、闘気に炎を纏い戦闘態勢を整えた。
天使と向き合う事10秒足らず、何だろう手を出して来ないぞ?
だが、そんな睨み合いは、長く続かなかった。
ウネウネと腕が4本生えてきて6本になった姿は、もう女体の阿修羅像まんまだ。
そして腕には大剣、槍、弓等で武装していた。
硬い動きで腕を振り上げ出すと、堰を切って向かって来た。
「うおっ!」
(早いな、だが、アレス程では無い)
体長は8メートルはある体から繰り出される打撃は、半端では無かった。
6本の腕を活かした不規則な打撃は中々予測が難しく身体に傷が増えていく。
炎を纏っていたが、更に闘気を纏い、炎を紫炎に変化させた。そうすることによって、身体能力が一段上がるのだ。
(ほぅ、やはり実力が近い方が、自分の力が分かりやすいな)
紫炎を纏った俺は、ホーリー・ダイナの戦闘能力を超えたようだ。
死角より放たれる矢も予測出来てしまう、力比べでも互角以上で炎の闘気から紫炎の闘気の差を実感できた。
(貴重な経験だ)
ダイナの頭がクルクル回り能面一つになった。6本の腕もドロドロと溶けるように腕が重なり2本の腕に戻った。更に背が縮まりおれと同じくらいのサイズになった。腕には三叉槍が1本だけになった。
だが、ビシビシと感じる威圧は今までの物とは別格だった。
[ ドンッ! ]
地面を蹴ってダイナは消えた。
[ ガイン ]
三叉槍の打撃をモロに食らってしまった。
左の脇腹がえぐられた、血が吹き出す。
「ちぃっ」
飛んで少し距離をとった。
しかし、ダイナは更に距離を詰めてくる、明らかに神速だ。
だが、こちらも紫炎を纏った鬼神モードで回復も早く見た目よりもダメージは少ない。
金砕棒を目の前に出現させて手に取り...
「修練の成果を試させてもらうよ!」
金砕棒を少○寺拳法よろしく、ブンブンと振り回してみると、意外と様になって来たと自画自賛してみる..この武器と相性が良いのか、身体の一部のように馴染む。
(良い感じだ)
相手の攻撃は、目で追うと遅れてしまうので、感じる事に専念した。
三叉槍を振り回すと出来る空気の流れ、ダイナの思考にも意識を集中すると先読みが更に鮮明に分かるようになってきた。
[ ガン ]
[ ガガン ]
[ ガキン・・・ガン・・ガガガガガガン ]
打撃音しか聞こえなくなる程の高速バトルだ。
目で見た情報が脳に伝わり筋肉を動かすより早く!感じて!より早く!相手より先へ.......
三叉槍を俺の胸に突き刺すべく突進して来た時、金砕棒で受け止めて、紫炎を纏った拳をダイナの脇腹に打ち込んだ。
[ ドゴン! ] (ドンピシャだ!)
[ ザシュッ! ]
ダイナの2本目の三叉槍が、俺の脇腹に突き刺さった。3本目の腕を出していたのだ、しかも三叉槍と3本目の腕に不可視の魔法をかけながら....
俺の拳もまともにダイナに入った。悶絶するダイナは、脇腹から徐々に紫炎に焼かれ塵になって行く....
「ふぅ〜〜終わったか....脇腹のダメージがデカイな」
辺りを見渡すと、俺と、ダイナが闘った地面が黒く染まっていて、雑草すら枯れてまるで有毒ガスだまりに包まれている様だった。
(きっと此処に、普通の人が居たら死んでるだろうな)
辺りを結界で包み込み、鬼神モードの雷で毒素を中和した。
闘いが終わり、盗賊[ 黒い牙 ]と他国の兵士達を包んでいた結界の場所へ向かった。
しかし、バウンダリゾーン [ 結界 ]は解除されていて、[ 黒い牙 ]は逃走してしまっていた。
(くそっ!逃したか....きっと最後のあの攻撃を受けた時だな、身体の中の何かが流れ出る感覚が有ったし...)
荷馬車や馬車の連中は、放心状態で座り込んでいる者、立っている者達は剣を此方に向けて、ガタガタ震えていた。
「おい、大丈夫だったか?」
「なっ何者なのだ、お前は?」
「僕は、ジョー・タカオカ 冒険者だ」
「アイツらは、何者なんだ?」
「さあな、我々もしっ知らんぞ、知らんのだ」
(あっ知ってるパターンだ!)
「まあ良い、じゃあな」
「え?」
「そのまま、去るのか?法外な請求も無しに」
「いらね〜よ」
(多分此奴らに情報を求めても、大した情報は来れなさそうだし、聞きすぎても怪しまれるしな....)
俺は、そのまま去った。
トゥルスから渡されたリュックの中を見ると、色んな食料や水筒が入っている。
何やら、この水筒は魔法を付与してあって、大気中の水分を集めるので、冷たくはならないが、勝手に水が溜まっていく、水筒らしい。
[ ゴクゴク ]
「うまい!」 カラカラの喉と人助けの後の一杯は最高の気分だ。
(リブレだったな、転移で何処かへ消えてしまった。探し当てる事も出来るが、バルバドへ行くのが先だな)
俺は、荒野を突き進んだ。
辺りが暗くなり、早馬での移動の半分くらいしか進んで無いが、それなりのペースで移動出来たと思う。
(馬に乗れないしね..)
冬の夜空を見上げながら、小さなテントに入って今日の振り返りをした。
感心したのは、不可視の手と武具だった。俺の様な武術のシロートにとってはかなり有効な技だろうな、修練に取り入れる事にした。
(棒術にもっとレパートリーを.....)
[ お屋形様? ]
「何だい?」
[ 棒術ならば、斉天が居ますよ ]
(セイテン.................あっ!ゲッちゃんの友達かぁ!)
[ そうです、私も斉天に会った事が有りますが、棒術にかけては天下一品です。しかも、お屋形様が使っている金砕棒は斉天が使っている物と瓜二つでして、必ずやお屋形様の修練の役にたちます ]
(そうか、だが斉天とはどの様にして話せば良いのか....)
[ 簡単ですとも、私が連れて参ります ]
(え?良いの?)
[ 梵天様がお呼びになったら、我らは何があっても参上します ]
(そんなもんなのか?そもそも俺の事を覚えているのか?)
[ 当たり前です、しかも別れの際付き従いたかったと漏らしていたそうです。月兎が言っていたので間違いありません ]
(それは、嬉しいな。ならばお願いするよ、斉天を呼んできて欲しい)
[ 御意 ]
そして、俺は眠りに就いた。
読んで下さり、ありがとうございました。
次回も宜しくお願いします。




